2018 week17

 NFLはレギュラーシーズン最終週が終わり、みんな大好きブラックマンデーが到来した"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006501/article/"。
 実際にはシーズン中に既に2人(BrownsのHue Jackson"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000980394/article/"とPackersのMike McCarthy"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000995203/article/")は解雇済みで、かつ日曜日のうちにJetsのTodd Bowles"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006237/article/"とBuccaneersのDirk Koetter"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006079/article/"もカットされていた。
 それでも月曜日にはDolphinsのAdam Gase"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006469/article/"、BroncosのVance Joseph"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006462/article/"、BengalsのMarvin Lewis"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006473/article/"、そしてCardinalsのSteve Wilks"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006460/article/"の4人がまとめて解雇されており、ブラックマンデーらしい1日となった。さらにFalconsではオフェンス、ディフェンス、STの3コーチがまとめてカットされている"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001006547/article/"。
 トータルとして8人、つまり全チームのうち4分の1がHCを代えることになった一方、噂に上っていたHCたちのうち、地区優勝を達成したRavensのJohn Harbaugh"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001002496/article/"、成績が急落したJaguarsのDoug Marrone"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001005573/article/"、同じくPanthersのRon Rivera"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000001005833/article/"は生き残りに成功している。

 以上の面々のうち、表面的な成績などから解雇にあまり説得力が感じられない者を挙げるなら、まずは1年で首を切られたWilksが挙げられる。確かにCardinalsはドラフト全体1位の冴えない成績に終わったが、そもそも今シーズンは新人QBを使った再建1年目に当たるわけで、勝敗だけが理由で解雇されるのは理不尽に思える。よほどコーチングの内容が酷かったか、もしくはフロントとの対立といった特殊事情があったのかもしれない。
 同じくHCとしての評価期間が短すぎるように見えるのがBroncosのJoseph。しかも彼は1年目はSiemianとLynchという微妙なQB2人組を前任者から引き継ぎ、2年目はKeenumという「一発屋」の可能性が限りなく存在するQBで戦わなければならないという縛りプレイをさせられていたわけで、せめてもう1年くらいは様子を見てもいいように感じられる。ただファンの間では彼に関する評判は最悪のようなので、コーチング自体に問題があった可能性も否定はできない。
 彼らに比べると既に解雇されているBrownsのJacksonは「むしろ遅すぎた」と言われても仕方ないレベルの成績だろう。確かに彼もQBが固定できない中でのコーチングになったのだが、それにしても2年で1勝31敗という数字は持ってなさすぎにも程がある。ボナパルトがイタリア遠征時に部下の将軍たちのツキについてメモっていたように、指揮を執る者のツキには重要な意味があると考えるなら、シーズン前に彼は解雇しておくべきだったと言われても頷けるところはある。
 DolphinsのGaseについてはこちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56848391.html"で指摘した通り。もちろん彼自身の力不足がトータル負け越しにつながった可能性もあるのだが、そうではなくフロントのダメなチーム作りのとばっちりを食らっただけという可能性も残されている。どちらを切るべきかと言えばGaseよりフロントだと思っているのだが、フロントのうちTannenbaumはその地位から外されたが、GMのGrierはむしろ昇進するらしい"https://www.thephinsider.com/2018/12/31/18162845/"。正直、微妙な判断のように見える。
 BuccaneersのKoetterについては、自分がOCとしてルーキー時代に面倒を見たWinstonを使った結果としての成績低迷なので、割と仕方ない面がある。以前にも書いたがWinstonはかなり変わった特徴を持つQBであり"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56803351.html"、彼を使いこなすのは確かに簡単ではなかっただろう。それでも彼に期待されていたのはまさにその役割なのであり、期待に応えられなかった時点でこの結末は避けられなかったのだろう。
 4年間、JetsのHCを続けたBowlesもまたカットは仕方ないところだろう。3年連続2桁敗北という数字を踏まえてなお来シーズンに期待が持てると思うのは難しい。ただしこちらのチームについても、問題はむしろフロントにあると指摘するファンはいる(Jason FitzgeraldとかChase Stuartあたり)。でも彼らはGMを含めたフロントを残し、HCのみをカットすることにした"https://www.ganggreennation.com/2018/12/31/18163352/"。彼らはDolphinsと同じようなことをしており、もしかしたらそれこそが「AFC東でPatriotsが勝ち続ける」理由なのかもしれない。
 残る2人は長年にわたってHCを続けてきた人物であり、その意味では1つの時代の終了を告げるものと言える。だがそれぞれの状況は割と対照的だ。まずPackersのMcCarthyについては以前にも触れている"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56830911.html"通り、それがチーム内の権力抗争を窺わせるものである点が懸念材料。トータル6割強の勝率と1つのリングを達成したMcCarthy自身の実績は否定できないだろう。
 そのMcCarthyよりも長いHCキャリアを積み上げたLewisに関しては、逆にオーナーの我慢強さが問題ではないかと思う。Redskinsのオーナーのようにころころと体制を変えるのがよくないという指摘は正しいと思うが、一方でBengalsのオーナーのように微妙なHCをいつまでも長々と引っ張るのもいかがなものだろうか。LewisはBengalsのHCとしてはまともな方だが、プレイオフを含めた成績は131勝129敗3分とほとんど5割。この成績のHCに16年も指揮を任せたのは、さすがに違和感がある。

 事実上のGMを兼務しているBelichickなどの例外を除き、HCは実際にはチームの結果全てに責任を負える立場にはない。どの選手を取ってどのようにチーム編成をするかの権限は通常はGMにあるし、HCの任免権すらGMが握っているケースもある。HCは与えられた駒を生かしてゲームに勝つことが仕事であり、飛車角落ちのチームを任されたHCに優勝を目指せと言われても、かなり無理がある注文なのは間違いない。
 人事評価はその人物が結果に影響を及ぼし得る部分のみについて見るべきであり、権限の範囲を超えた部分について責任を問うのは正しい評価とはいえない。正しい評価ができないチームは結果として間違った人材をチームに残し、それはチームの成績悪化をもたらすリスクを高める。だからオーナーはGMやHCがそれぞれどのような権限を持ち、結果にどの程度の責任を負っているかをきちんと判断して人事を行わなければならないのだろう。残念ながらそれができていないように見えるチームが存在する。
 ドラフトやサラリーキャップを通じ、NFLは常に勢力均衡を推し進めようとしてきた。にもかかわらずチームごとに成績の格差が生じているのは、もしかしたら人事評価者としてのオーナーあるいはオーナー的立場にある人物の能力差があるからではないだろうか。有能なオーナーはGMやHCにふさわしい人物を見つけ出し、彼らの貢献度を正しく評価し、よりチームの勝利や優勝につながり易い体制作りに力を注ぐ。逆に無能なオーナーは優秀な人物を見つけ出す能力に欠け、評価軸が定まらないかもしくは間違っており、より負けやすい体制作りを図らずも行っているのだろう。
 もちろんトップマネジメントの実務が極めて難しいのは承知している。自分で手を出すのではなく優秀な他人を見つけて彼らに任せるというのは、言うほど簡単に実行できる仕事ではない。選手の能力ならスタッツやスカウトの見解など様々な手法を駆使して評価することはできるが、彼らの上にいるHCやGMの能力を数値化するのは極めて困難だし、HCやGMを見つけ出すスカウトがいるわけでもない。マネジメントノウハウをマニュアル化するのも難しそうだし、おまけに彼らは金持ちでなければならない。リーグで最も不足しているタレントは、実は「優秀なオーナー」なのかもしれない。
 以前、どこかで「戦力均衡化に最も資するのはオーナーのドラフト」という指摘を見たことがある。全面的に同感である。
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