尚早な予想

 まだプレイオフも始まっていないのに気が早いと言われればその通りだが、来シーズンについて1つ予想をしよう。成績が落ちるリスクが高いチームと、上向く可能性が高いチームの紹介だ。
 使うのは「1ドライブ差以内での勝率」、つまり得失点差がマイナス8点からプラス8点の間での成績。この勝率が高いチームはいわば「ツキに恵まれた」可能性があり、来シーズンは平均への回帰によって成績が下がることが考えられる。勝率が低いチームの場合はその逆だ。表面的な勝率よりも得失点差から来季を予想する方法と似ている"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56357301.html"。実は今シーズン前にBill Barnwellが既にほぼ同じ方法を使った予想"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/24228491/"を出している。
 実際、2017シーズンのこの成績に基づいて今シーズンの動向を見ると、想定通りに「平均への回帰」に見舞われたチームが多い。Panthersは17シーズンに11勝5敗という成績を残したが、このうち1ドライブ差以内の成績は8勝1敗と圧倒的。逆に言うと大差のついた試合は3勝4敗と負け越していたわけで、見た目ほど強いチームではなかったことになる。そして実際、彼らの今シーズンは6勝9敗と既に負け越しが決定。昨シーズンとは異なり1ドライブ差以内のゲームで3勝7敗と大きく負け越したのが響いている。
 Steelersもしかり。17シーズンは1ドライブ差以内で8勝2敗だったのが今シーズンは5勝5敗1分と見事に平均へ回帰し、シード2位からプレイオフぎりぎりもしくはアウトまで成績が落ちている。他にもCardinals(1ドライブ差以内が6勝2敗から2勝3敗に)、Packers(6勝2敗から3勝6敗1分)が大きく成績を下げ、Bills(6勝2敗から3勝3敗)、Vikings(5勝2敗から3勝2敗1分)、Patriots(5勝2敗から3勝2敗)、Eagles(5勝2敗から6勝6敗)も勝率が低下している。ツキが拡大しているのはDolphins(5勝3敗から7勝1敗)くらいだ。
 逆に酷い成績だったBrowns(0勝7敗)は5勝3敗1分と大幅に回復。トータルの勝率でも全敗から5割まで上向いた。1勝5敗だったTexansは6勝5敗に回復してプレイオフに到達。2勝6敗だったBearsも6勝4敗まで盛り返して地区優勝を果たしている。ただしこちらのジャンルでは不運続きのチームもあり、例えばGiantsは2勝5敗から4勝7敗、Ravensは2勝5敗から2勝4敗、49ersは2勝5敗から3勝6敗と負け越しが続いている。

 平均への回帰は必ず起きるわけではないが、その確率が高いのは事実だ。それを前提にしたうえで今シーズンの成績から来シーズンに成績低下または上昇が期待できるチームを見ると、まず名前が出てくるのは上でも触れたDolphins。1ドライブ差以内のゲームにおける7勝1敗という成績は、それが長続きしない可能性をはらんでいる。今シーズン、僅差の試合における彼らの勝率が5割であったとしたら、現時点で彼らはJetsと同じレベルの勝率にとどまっていたはずだ。
 Dolphinsの場合、実はこの成績が単なる「ツキ」なのかどうか分からない部分はある。というのも最近3年間の「1ドライブ差以内ゲーム」で彼らは20勝6敗とリーグで最も高い勝率を残しているからだ。つまりこれは単なる幸運ではなく、この3年間チームの指揮を執っているGaseが「僅差のゲームで勝ちを拾う能力の持ち主」であるためとも考えられる。
 本当にそんなコーチが存在し得るのか。いる、と解釈することができる。例えばPatriotsのBelichickは2000年以降、1ドライブ差以内のゲームで86勝49敗の成績を残している。これだけ母数が大きいと「ツキの偏り」よりも「能力の存在」を想定した方がもっともらしいだろう。Gaseの3年間の勝率(0.769)はさすがに高すぎるとは思うし、また母数も小さいので単なる幸運である可能性も残っているが、能力かツキかについて答えを出すのは現時点では難しい。
 それでも7勝1敗の成績を続けるのはさすがに無理だろう。実際、2016シーズンに1ドライブ差以内で8勝2敗を記録してプレイオフにたどり着いたDolphinsは、翌シーズンも1ドライブ差以内では5勝2敗と勝ち越しながらトータルでは6勝しかできなかった。今年はもっと酷く、勝ち星の7つは全て1ドライブ差以内であるのに対し、8つの敗北のうち7つは大差での負けだ。幸運の女神もしくはGaseの能力をもってしてもチーム力のなさを埋め合わせられなかったわけだ。
 DolphinsではHC交代の噂が出ている"https://sports.yahoo.com/dolphins-gase-says-doesnt-lobby-keep-job-171825966--nfl.html"。Gaseのこれまでの成績(3年間にプレイオフ含め23勝25敗)は確かに誇れるような数字ではないが、この間の彼らの得失点差(-236でリーグワースト4)を踏まえるならむしろ驚嘆すべき素晴らしい成績である。それがGaseのおかげである可能性が残っている間は、彼を切るのが得策だとは思えない。Dolphinsが一掃すべきなのはここまでチーム力を落としたフロントオフィスだろう。
 Los Angelesの2チームも1ドライブ差以内の勝率が高い(どちらも6勝1敗)ため、来シーズンの成績低下が予想される。どちらもカンファレンストップクラスの勝率なのでそれが低下しても勝ち越しは確保できると思うが、今シーズンほど余裕でプレイオフにたどり着ける保証はない。足元のSteelersと似たような状況に陥る可能性がある。2年ぶりに地区優勝したCowboysだが、こちらも1ドライブ差以内で8勝3敗とツキの要素が大きい。来シーズンはまた落胆の1年になる懸念はある。リーグ全体でトップのSaintsも5勝2敗と1ドライブ差以内での勝率が足元の好成績を支えている面がある。
 逆に来シーズンの復活が期待できるのはまずJaguarsとJets(どちらも2勝6敗)。といってもどちらもリーグどん底クラスの成績が平均へ回帰すれば中の下になるというレベルなので、あまり期待しすぎるのはよくなさそうだ。49ers(3勝6敗)も似たような状況。Panthers(3勝7敗)の場合は勝ち越しに転じることができる計算なので、やり方次第でプレイオフまで行くことは可能だろう。奇数年になると活躍するという彼らのジンクス"http://www.thedrawplay.com/comic/the-panthers-vs-back-to-back-winning-seasons/"は来シーズンも続く可能性がある。
 もちろん最終週にも1ドライブ差以内の試合はあるだろうし、その結果次第で上に書いた結果が微妙に変わる可能性はある。だが、僅差のゲームで勝ち負けどちらであれ極端な数字が出ているチームは、表面的な勝率を額面通りに受け取ってはいけない。Chiefsのように1ドライブ差以内で5勝4敗、大差の試合で6戦全勝というチームと、1ドライブで追いつけない点差での勝利が多いSaints(8勝)、Patriots、Ravens(いずれも7勝)などはともかく、それ以外のところは勝率だけで将来を楽観しない方がいいだろう。
 それだけにRamsやChargersあたりはこのプレイオフで一気にSuper Bowl優勝を狙うくらいのつもりで臨む方がいい。昨シーズンのEaglesのように、確かに僅差試合でツキに恵まれていたが、一方大差試合でも8勝を稼いだチームが、今年はプレイオフぎりぎりまで追い詰められているのを見ても、チャンスがあるうちに優勝しておくべきなのは間違いない。といってもプレイオフはさらにツキの要素が大きく影響する。シーズン中にツキに恵まれたチームが平均への回帰に見舞われる可能性は常にあるわけで、そう思い通りにはいくまい。

 あと違う話題だが、Eaglesで長年社長を務めていた人物がこんなツイート"https://twitter.com/JoeBanner13/status/1077951090677686274"をしている。「Darnoldは将来の向上を保証している」とあっさり言いきっているのが特徴で、ドラフト前の評判も含め彼はリーグ関係者の目によほど魅力的に見えるらしい。
 でも今シーズンのDarnoldはここまでパス成功率60%未満、Comp%+は79にとどまっている。21世紀に入ってこの数字が彼と似ている1年目のQB(224試投以上)を見ると、Bruce GradkowskiやGeno Smith、Christian Ponder、Josh Freemanといった面々が並んでいる。パス成功率が将来の成績予想に役立つ"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56787058.html"ことを踏まえるなら、すまんが私にはとても魅力的には見えない。
 この数値が80以下だったQBは22人いるのだが、そのうち先発合格と言える成績を残しているのはAndrew Luck、Matthew Staffordくらい。単に先発試合数だけ見るならJoey HarringtonやVince Young、Kyle Boller、David Carr、Mark Sanchezといった連中も試合数は多かったが、彼らが成功したQBだと思う人はいないだろう。たった1年の成績で将来を完全に予測することはできないが、少なくともDarnoldの将来が「保証」されているとはとても思えない。
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コメント

No title

きんのじ
試合の駆け引き。を数値分析するのはとても難しいと思います。

アメフトで言えば、3Qまでの45分間、使いたいプレーを潰されて手持ちのカードが少ない状態と、取って置きを残しながら相手に合わせて捨ててもいいカードを切ってきた状態と、4Qでどちらが有利で僅差で勝てるかと言えば、後者と思います。

お互い1~10のカードが手持ちで、大きい数字を出した方がポイント得るゲームだとして、最後の一枚が片や7、片や8で、毎回逃げ切る駆け引きの上手い下手はありそうに思います。

No title

desaixjp
コーチによって駆け引きの上手い下手はあるでしょう。
問題はそれがチームの勝敗結果にどこまで影響力を持てるかだと思います。
チーム作りに失敗しているところでは、いかにコーチが工夫を重ねても限度があるのに対し、そこで成功しておけば多少コーチが差配をミスっても勝てるという可能性があるように思います。
例えばAndy Reidは試合運びは下手ですがチーム作りは上手いため、トータルで勝ち越しているように見えます。

No title

きんのじ
Reidの件は大変わかりやすい!と思いましたw
私はEaglesファンなので、Reidにはプレイオフ出場率に感謝するものの、想定が崩れると立て直せないプランBの無さに「毎回毎回...」と不満もありました。

僅差の勝ち・負けでも、逆転して3点差で勝つ場合と、17点差を追い付かれて逃げ切った場合と、ストーリーの違いはチームの強さやコーチの能力としての意味があるのでは?と考えてしまいますが、統計分析的にはどうなんでしょうね?興味あります。

No title

desaixjp
調べたことはないので何とも言えませんが、もし逆転と逃げ切りの間に違いがあるとしたら、Football ReferenceがまとめているQBのFourth Quarter Comebacksをチーム単位でまとめ直すことで何かわかるかもしれません。
https://www.pro-football-reference.com/leaders/comebacks_career.htm

またチーム作りがうまいところはレギュラーシーズンに強い一方、試合中の差配に優れたHCはチーム力が均衡しているプレイオフの勝率が高い、といった特徴があることも考えられます。
色々と分析の余地はありそうですね。
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