2018 week9

 トレード期限が過ぎた後で、CardinalsがBradfordを解雇した"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000983649/article/"。その後、現時点で彼を拾おうとするチームはまだ現れていない。あちこちのチームをクビになりながらもしぶとく生き残り、130ミリオン近くの収入を積み上げてきた彼だが、さすがにそろそろ賞味期限切れに追い込まれたようだ。
 彼のキャリアはとにかくドラフト全体1位という前評判の上だけに成り立っているものだった。実際にこの9年間に先発できたのは83試合で、シーズン全試合の先発は1年目と3年目しかない。特にRamsを出た後は4年で34試合しか先発することなく、怪我の影響を含めてそもそもプレイしないケースが多かった。休んでばかりの一流QBよりはきちんと試合に出る二流QBの方が偉いと考えれば、彼はまずその部分で問題を抱えていたことになる。
 もっと問題なのは、出場した時の成績も一流からは程遠かった点だろう。2017シーズンまでの累計RANY/AはDamon Huardとほぼ同じ水準であり、Value(リーグ平均のAdjusted Net Yardsとの差)は-1287とRodney PeeteやTony Banksといった面々と変わらない水準である。またBradfordの成績はFitzpatrickともよく似ている。前者は83試合先発で勝率0.416、ANY/A+は94であるのに対し、後者は124試合に先発し勝率は0.407、ANY/A+は95となっている。試合数が多いだけFitzpatrickの方がいいQBと言ってもいいのだが、Fitzが手に入れた累計サラリーが54.7ミリオンしかないのに、Bradfordは130ミリオン弱"https://t.co/GiIq8kjfxp"。世はかくも不条理である。
 そんな「もらいすぎ」QBをCardinalsが切った理由としては、既に新人Rosenが先発として定着していること、控えにはGlennonがおり、Bradfordがいなくても当面は困らないこと、そしてチーム成績が2勝6敗とほぼプレイオフの目が消え、今更ベテランを使わなければならないインセンティブが失われたことなどがあると思われる。加えてBradfordの契約も、彼の解雇につながった背景にあるのだろう。
 Cardinalsは先のオフにBradfordと2年40ミリオンの契約を結んだといわれている"http://www.espn.com/blog/arizona-cardinals/post/_/id/29677/"。ただし2年目はチームにオプションを選ぶ権利があり、その意味では実質1年20ミリオン強の契約だったと考えていいだろう。QBの契約としては先発級の水準と言える。
 しかし実際には3試合に先発しただけで早々にゲームから降ろされてしまったため、保証額15ミリオン以外のベースサラリーを得ることはほとんどできなかった。結局、彼が解雇までに手に入れることができたサラリーは16ミリオン弱で、Cardinalsはこの金額を2018及び19シーズンに分けてデッドマネーとして負担していくことになる"https://overthecap.com/player/sam-bradford/1349"。ちなみにBradfordのCardinalsでのプレイは135スナップのみ。昨シーズンのBennettは1スナップあたり2万ドルを手に入れていた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56533364.html"が、Bradfordは11.8万ドルになる。

 ここで注意すべきなのは、Cardinalsの判断として、今解雇することと、解雇せずにチームにとどめシーズン終了後にオプションを拒否して彼をFAにする方法の、どちらが得であるかだ。今回Bradfordを解雇したことにより、Cardinalsは彼がFAとして他チームと契約を結んでも補償ドラフトを得られなくなった。シーズン終了まで待てば契約満了という位置づけで補償ドラフトを得られるのに、なぜCardinalsは慌ててBradfordをクビにしたのだろうか。実はこれには補償ドラフトのややこしい仕組みが絡んでくる。
 実はCardinalsは先のオフにBradfordと契約を結んだことにより、得られたかもしれない補償ドラフト権を1つ相殺されていたのだ。こちら"https://overthecap.com/compensatory-draft-picks-cancellation-chart/"にもあるように、補償ドラフトはFAで失った選手からFAで得た選手を相殺し、残った差分のみが与えられる仕組みとなっている。CardinalsはFAで失った選手が6人いた一方、入手したFA選手がBradfordを含めると4人いたため、その差分である2人分のみの補償ドラフトを手に入れる計算となっていた。
 ただし、この補償ドラフトを計算する対象FA選手は「シーズン第10週までチームに雇われていること」が条件となる。それ以前に解雇されれば補償ドラフトの対象からは外れるのだ。昨シーズンはPackersがBennettを第10週より前に解雇したため、Patriotsの補償ドラフトがそれまでの計算より1人分減るという事態が生じていた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56519956.html"。
 今回のBradfordの解雇も同じだ。彼をクビにしたことでCardinalsは相殺対象が1人減り、その分だけ補償ドラフトが増える計算となる。一方、Bradfordが元いたチームであるVikingsは手に入れられる見通しだった3巡の補償ドラフトが消えてしまった"https://twitter.com/nickkorte/status/1058813229789437952"。Cardinalsにとっては、シーズン終了まで待たずに足元で解雇したおかげで、2019年の補償ドラフトが1つ増えた格好となる。
 もしここで解雇せず、シーズン終了時までBradfordを残していたらどうなるだろうか。FAとなった彼がどこかのチームに雇われる可能性はあるが、絶対にそうなるとは言えないうえに、今度の契約ではさすがのBradfordも控えレベル(つまり年4~5ミリオン)の契約しか手に入れられない可能性が高い。この金額だと期待できる補償ドラフトは2020年の6巡相当。結局、足元すぐ解雇した時に手に入るものと同じ巡でしかないうえに1年遅くなるわけで、いいことは何もない。早々に解雇するのが正しい選択なのだ。

 以上のように早くも来年以降を見越した動きが出てきているものの、シーズンそのものは今が佳境。今週はTNFで49ersのドラフト外QBであるMullensが3TDの0Intといきなりの大活躍を見せ、すぐ来週も先発することが決まった"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000983662/article/"。Garoppoloの怪我以降、落胆のずんどこに沈んでいた49ersファンにとっては、思いがけず現れた救世主のように見えたことだろう。もしかしたら一番驚いているのは本人かもしれない。
 とはいえ彼が本当に救世主になるかどうかはまだ不明、というか過去の成績を見る限り、そんなにうまくは行かないと思っておいた方が安全ではなかろうか。確かに公式戦でのプレイはこのTNFが初めてだったが、それ以前に彼は今年と昨年のプレシーズンで計5試合に出場している。その成績は1TDの4Intでレーティングは72.4、ANY/Aは4.44だ。とてもじゃないが期待の持てる成績とは言い難い。
 加えてRaiders自体のディフェンスの酷さもある。彼らの第9週までのディフェンスANY/Aは驚愕の9.47で、これはChiefsのオフェンスANY/A(9.45)とほとんど変わらない水準であり、つまりRaidersディフェンス相手ならどんなQBでもMahomes並みの成績を残せる、ということもできるのだ。Mullensの活躍が実力なのか、それともプロにあるまじきレベルの低いディフェンス相手に残した幸運の産物なのか、そのあたりを見極めるにはもう少し時間が必要だろう。
 その49ersの試合よりさらに大差がついたのがBillsとBearsの試合。あまりに一方的な展開にこんなgif"https://media.giphy.com/media/nJ80xdFIO5JJK/giphy.gif"を貼る人もいたほどだ。さらに問題なのは、Bearsの挙げた41点のうち17点はターンオーバー絡み(インターセプトリターンTDとファンブルリターンTDが1つずつに、インターセプトからのドライブでのFG1つ)だったこと。そもそもBillsのディフェンスはBearsオフェンスを計190ヤードに抑えており、むしろ奮闘したと言っていい。
 にもかかわらず一方的な展開になったのはもちろんオフェンスの機能不全が理由で、何しろパスのY/Aはたったの3.9と普通のランより短い有様。Petermanが記録した3回のインターセプトは彼の責任ばかりとも言えないのだが、少なくとも31回もパスを成功していながら189ヤードしか進めなかったのは明らかに拙い。何しろ過去30回以上パス成功したゲームで最も獲得ヤードが少なかったのは、2013シーズン最終週のFlaccoと14シーズン第10週のCarrがいるのだが、どちらも30回成功で192ヤードは稼いでいる。この試合のPetermanはそれにすら届かないわけで、どれほどパスが機能していなかったかがよくわかる。
 これまで9試合でBillsが挙げたのは96点といまだ3桁に達していない。過去に9試合で100点未満だった例を遡って探すと2009シーズンのRaiders(9試合で88点)、Browns(78点)以来となる。さらにここまでの9試合でBillsが挙げたパスTDの数は、実はBillsが与えたPick 6の数と同じ(3つ)。BillsのQBはこれまでのところ、味方に投げたのと同じ数だけ敵にTDパスを投げていることになる。第9週の時点でBillsのoffensive DVOAは1986年以降で最悪"https://twitter.com/FO_ASchatz/status/1059510901630517249"であり、歴史的なダメオフェンスが続いている。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック