なぜ2ポイントか

 NFL第7週のMNFで話題になっていたのが、Giantsがやった「14点ビハインドでTDを取った後の2ポイント」というプレイ選択。なぜこの選択がなされたかについては理解できない者"https://twitter.com/RealSkipBayless/status/1054573450247852032"もいるようだが、実はこれはアナリティクス関連ではよく知られた方法で、例えばEaglesも少し前に同じことをやっている"http://www.espn.com/blog/nflnation/post/_/id/283846/"。さらに分かりやすいのはこちら"https://twitter.com/Cole_Kev/status/1054567013522333696"の図で、要する2ptを選んだ方が勝つ確率が高くなるのだ。
 とはいえ、アナリティクスをバカにしているGMがいるチームがこれをやったことについては、スタッツ関係者を逆に驚かせる結果となっている"https://twitter.com/fbgchase/status/1054569037794041856"。Football Perspectiveでは3年近くも前からTD直後に8点差だった場合は2 point conversionをするのが合理的であると指摘している"http://www.footballperspective.com/down-14-scoring-a-touchdown-and-then-going-for-2/"し、今回Giantsがそうしたことで次第に当たり前の戦術になりつつあるのかもしれない。
 むしろ問題はそうした最先端(というほどでもないが)のノウハウを分かりやすくファンに伝えるべきマスコミの能力不足かもしれない。MNFのサイドライン・アナリストを務めていた元選手がこの2ptの選択を「激しく批判していた」"https://twitter.com/draftcheat/status/1054569533376090112"そうで、このくらいの簡単な算数もできない「アナリスト」が放送局の仕事をしていることになる。今のようにマスコミ関係者でなくても簡単に情報発信できる時代になると、元選手とはいえ昔の経験だけで食っていくのは難しい。
 もう1つ、Giantsの選択肢で疑問視されていたのがタイムアウトのない残り41秒及び20秒での2連続QB sneak。実際のところ残り1ヤードでのsneakはほぼ定番プレイなのだが、1ドライブで追いつけない点差でのこのプレイについては異論が出るのも無理はない。ただし1994年以降の例でゲーム残り2分以内、9~11点ビハインドでゴール前1ヤードからのプレイ選択を見ると、パスは18回中7回、ランは14回のうち11回、TDにつながっている。とにかくTDを取らないと話にならないと考えた場合、一概に否定できる選択とも言えないような気がする。

 ゲーム以外だとRaidersがAmari CooperをCowboysにトレードした"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000977422/article/"のが注目点。代償は来年のドラフト1巡だそうで、チームにとってはMackに続く大型選手のトレードになる。ただしRaidersファンの反応はMackの時とは正反対で、こちら"https://www.silverandblackpride.com/2018/10/22/18010852/"ではCooperのトレードを評価するかとの投票に9割近いファンがYesと回答している。
 シーズン前にトレードされたMackと異なり、1勝5敗とプレイオフの目がほぼ消えた現状では「tank上等」と判断するファンがそれだけ増えたのだろう。またMackに比べてCooperが、バストとまでは言わないものの期待外れであったとの評価もある。最初の2年間は1000ヤードを超えたものの3年目は680ヤードにとどまり、今シーズンは現時点でyards per receptionがキャリア最低となっている。ターゲット数がほぼ同じNelsonの方がヤードもTD数も多く、目先エースレシーバーの役目はそちらに任せられるという判断もあったのかもしれない。
 Cooperの契約"https://overthecap.com/player/amari-cooper/3852"は今シーズンはともかく、5年目オプションが適用される2019シーズンには14ミリオン弱まで跳ね上がる。現時点でのWRトップ10には入らないものの、それに次ぐくらいの高水準であることは確かだ。Raidersがそれだけの価値を彼に見いだしていないのだとしたら、トレード期限より前に彼を売り払う判断はおかしくはない。あとはどれだけ高く売れるかである。そう考えるとドラフト1巡という対価は非常にありがたいのではなかろうか。
 逆にCowboysから見ればCooperの対価としてドラフト1巡は高すぎるということになる。こちら"https://www.bloggingtheboys.com/2018/10/22/18010562/"を見てもファンの7割近くは「払いすぎか」という問いにYesと答えている。サラリー的にも現時点でCooperの2019シーズンのキャップヒットはチームで3番手となる。もちろんデッドマネーなしで解雇することは可能なのでキャップヒットはそう気にすることはないのだが、ドラフト権はそうはいかない。逆にRaidersはこれで3つのドラ1指名権を持つことになり、確かに夢が広がるところだ。
 それだけの対価を払う決断をCowboysにさせたのは、実はPrescottのためだとBill Barnwellは指摘している"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/25055564/"。今シーズンのCowboysのレシーバーはリーグでもかなり低レベルであり、例えばレシーバーがオープンになる確率や、YACのデータを見ると、Prescottのパスターゲットたちはほぼ最底辺に存在している。少しでもまともなレシーバーを揃えることにより、Prescottがルーキー年のように活躍できる環境を整えようとしたのが彼らの狙いだそうだ。
 実際、Prescottのルーキー契約は2019シーズンまで。彼は1巡指名ではないため5年目オプションはない。本当に彼がフランチャイズQBなのだとしたら、彼を安く使える期間はほぼ1シーズン半しか残っていないのだ。安いQBを使って優勝を狙う戦術をCowboysが使える時間は残り少ない。一方で彼らは今シーズン、リーグで3番目に多い30ミリオンものデッドマネーを抱えており、せっかくの「ルーキー契約QB」というメリットを生かし切れていない。その穴を少しでも埋めるための手段が今回のトレードだったというわけだ。加えて今シーズンのNFC東地区はわりとドングリの背比べで、まだ地区優勝の可能性はあるという判断も存在するだろう。
 一方で「気持ちは分かるが評価しない」という声もある"https://twitter.com/Jason_OTC/status/1054471327774584832"。まるでRoy Williamsのトレードを思い出すという指摘だが、確かに彼のトレードは「Cowboysの歴史上最悪」"http://www.espn.com/blog/dallas/cowboys/post/_/id/4697302/"と言われるものだった。とはいえリスクなくしてリターンなし。Cooperがどちらに転ぶかは不明だが、Patriotsのように有能なWRを1年で放出しドラフト権を取り戻す例もあるので、まだ失敗と決めつけるわけにもいかないだろう。
 一方のRaidersだが、こちらは完全にGruden主導の「スクラップアンドビルド」モードに突入している。おそらくCarrの将来もそう長くはないという観測すらある"https://wfan.radio.com/articles/nfl-trade-candidates"。代わりに積み上げているのがドラフト権であり、その意味ではまるでSashiのような行動だ。Sashiは積み上げたドラフト権をうまく使えず、Grudenも過去の実績において若い選手の評価がうまかったとは言えないらしい。しかし問題はドラフトよりベテランに与える影響だ、とBarnwellは指摘する。
 Carrが入団する以前のRaidersははっきり言ってドアマットチームであり、中核になる主力選手がいなかった。そういうチームに対してはベテランのFAも近寄ろうとせず、結果としてRaidersにはピークを超えた選手か実力以上の高額サラリーを求める選手くらいしか訪れようとしなかったという。その状況が変わったのはCarr、Cooper、Mackといった面々が力を発揮するようになってからであり、それを受けて集まったベテランの力もあって2016シーズンには12勝4敗という成績を達成できたのだという。彼ら中核選手たちが姿を消した後に、元の姿へと戻ってしまう懸念がないとはいえない。

 それ以外だとファンにも見捨てられつつある"https://twitter.com/weensandthings/status/1054087145399484416"Bortlesがベンチに下げられ、MahomesがデビューからのTD記録でWarnerを抜き"https://twitter.com/i/web/status/1054206233593499648"、さらに現時点での得点合計でBills全体よりGurleyの方が大きいという話"https://ftw.usatoday.com/2018/10/todd-gurley-has-7-more-points-than-the-bills"も話題になっていた。全体に今年はチームごとにオフェンスの力の差が大きく、7週時点での各チームの得点標準偏差は2013シーズン以来の高さになっている。
 また今週は28点以上の差がつく一方的な試合が4つもあった。これは2012シーズンの第15週"https://www.pro-football-reference.com/years/2012/week_15.htm"以来だ。敗北した4チームのうち2つ、つまりCardinalsとBillsはリーグでも実力最下位付近と評価されているところであり、残る2試合は勝った方(Rams、Chiefs)が各カンファレンス最強のところだった"http://www.espn.com/nfl/story/_/page/Football-Power-Index/espn-nfl-football-power-index"。ここまで差が付いたのは偶然の要素もあると思うが、勝ち負け自体は当然の結果だったのだろう。
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コメント

No title

とおりすがりa
いつも大変興味深く見てます。初心者の私にも分かりやすいデータでいつも新しい見方や切り口を学ばせてもらっています。
ところでこのなぜ2ptなのかというチャートに関して単純に全て50%ですが実際の2ptの確率で考えると違うようなきがするのですがどうでしょうか?

No title

desaixjp
実際の2ptの成功率は最近7年間で48.8%だそうです。
https://www.musiccitymiracles.com/2018/10/23/18013486/
ほぼ50%と考えても大きな問題はありません。
なおチャートではキックは100%成功の前提で計算していますが、実際には15ヤード地点から蹴ることもあって、成功率は94%ほどにとどまります。
キックのリスクは実際に思われているよりも高いのです。

No title

とおりすがりa
なるほど!
ご回答ありがとうございます!
6%も失敗の可能性があるとは!
そして2ptの成功率が50%もあるとは!
勉強になります!

No title

desaixjp
お役に立てたなら何よりです。
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