Ryanより1割以上も高いサラリーをもらっているにもかかわらずFitzgeraldの評価が渋いのは、2013年当時のサラリーキャップを現在の水準に引き直した場合、当時のRodgersの契約は今の水準で年平均32ミリオンに達するという計算があるため。Rodgersの実力ならキャップに占める比率がもっと高くてもいいはずなのに、当時とそれほど変わらない水準のサラリーで満足していることになる。
もしこの指摘が正しいなら、この後で新たに契約を結び直すQBたちのサラリーがまた狭い範囲に集中する可能性が出てくる。いいQBと悪いQBのサラリー差が縮まれば、それだけいいQBを抱えるチームの有利になる。Rodgersの契約詳細"
https://www.spotrac.com/nfl/green-bay-packers/aaron-rodgers-3745/"を見ると、2020~22シーズンにかけて30ミリオンを超える見通し。年10ミリオンのペースでキャップが増えるとしたら、この時期のチームキャップに占める比率は16%前後になるのだが、この数字は例えば今シーズンのGaroppolo(15.9%)とほぼ同じで、Stafford(14.6%)とはほんの1.5%、Carr(13.5%)とも2.5%ほどの差しかない。
今シーズンの時点でこの1.5~2.5%の差をサラリーに直すと2.7~4.5ミリオンほど。こちら"
https://overthecap.com/texture/"を見れば分かるのだが、足元でトップ320人の選手はこれより高いサラリーをもらっている。つまり各チームでトップ10に入らないくらいの選手1人分かそれ以下の差しかないことになる。果たしてこの差はRodgersとStaffordやCarrの間に存在すべき格差として正しいのか、そしてこの差はQBの差を埋められるだけの格差と言えるのか。確かにFitzgeraldの懸念も分からなくはない。
ただしこれはRodgersがリーグでも文句なしトップクラスのQBであることが条件だ。彼がもし普通の、あるいは平均よりは上という程度のQBであれば話は変わってくる。彼のサラリーが他のQBたちの頭を抑える要因にならなくなるからだ。そして実際、Rodgersが果たして今もなお「文句なしでトップクラス」のQBであるかどうかは、実は微妙である。
まして彼はこれから30代後半という、選手にとって厳しい年代に差し掛かる。もちろん最近は30代後半どころか40代になっても元気いっぱいのQBがいるのでRodgersもまだまだ大丈夫と思いたくなるが、歴史的に見て30代後半のQBたちは、過去がどれほど華やかであっても、どんどん現役から脱落していった年代であることは間違いない。特に38歳(21シーズンの終わりにはRodgersもこの年齢になる)は多くのQBがスワンソングを奏でている"
https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56231297.html"。
もしRodgersが契約延長をした期間中に衰えを見せるのであれば、おそらく彼の契約はFitzgeraldが恐れるような「蓋」にはならないだろう。だが過去の実績を見る限り、Rodgersへの評価がそこまで下がるには時間がかかるであろうこともまた事実。少なくともPeytonの最終年のように「彼はもう終わった」と思われるまでは、Rodgersの契約が蓋になる可能性は残っている。つまりあと3~4年、いいQBとダメQBの格差が十分に開かない時期が続くかもしれないのだ。さて、どちらに転ぶだろうか。
Rodgersとの契約を更改したPackersは、同時に控えQBの交代にも踏み切っている"
http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000952060/article"。控えを探していたSeahawksにドラフト6巡と交換でHundleyを送り出し、今年の控えはKizerにすることが固まった。SeahawksはBrissettに2巡を出そうとしていたという話もあるくらい控えQBに困っており、昨シーズンあれだけ酷かった(ANY/A+が68)Hundleyでもいないよりマシと考えたのだろう。Packersが残すKizerも昨シーズンのANY/A+は同じく68と酷い有様だったが、プレシーズンではいい成績を残している。
というかSan Darnoldのプレシーズン成績は、現時点では劣化版Sam Bradfordにすぎない。パス成功率はそれなり(64.4%)だがY/Cが8.41ヤードとあまりにも低すぎる状態だ。ダウンフィールドにパスを投げられない典型的なDink and Dunk QBであり、McCownの17年レギュラーシーズンの成績(パス成功率67.3%、Y/C10.96)と比べてもいいところはない。焦って彼を出す必要はないように思えるのだが、さてどうなんだろうか。
Bridgewaterにとっては破滅的な怪我からの復帰における最初のハードルをまず越えたという感じだろう。本当はもっと先発の可能性が高いチームに行くのが望ましいのだが、まずは少なくとも控えQBとして高い価値があることは証明できた。もしかしたらSaintsが将来の先発含みでの契約更改を申し出てくれるかもしれないし、それがなくても少なくとも来シーズンはもっとマシな契約をゲットできるだろう。何しろ彼がこれまでにもらったのは安いルーキー契約と、Jetsが支払った1ミリオンだけ。ドラフト1巡としてはまだまだ稼がなければならない。
今のところBreesに衰えの気配は見えない。ただし彼も「QBの壁」である38歳は超えており、来年1月には40歳の大台に乗る。Peytonのような成績急落にいつ見舞われてもおかしくない年齢だ。そうなればBridgewaterの華麗なる復活が現実のものになるかもしれない。多分、今回のトレードはJetsとBridgewaterの双方にとっていいトレードだったんだろう。と同時に1ミリオン+6巡で3巡を手に入れたJetsと、2巡を手に入れるために21ミリオンを(Osweilerへのサラリーとして)支払ったBrownsの差も浮き彫りになった。Sashiはカネを貯めるのはうまかったが使うのは下手だったんだなと改めて思わされた。
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