大型契約

 OBJがGiantsとの契約を延長した"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000951811/article"。初報段階では5年95ミリオンと報じられていたが、実際にはうち5ミリオンはインセンティブ。実際は5年90ミリオンと考えてよさそうだ。それでも年平均18ミリオンという数字は、WRとしてはBrown(17ミリオン"https://overthecap.com/position/wide-receiver")を超えて最高額。というかQB以外で年平均18ミリオンを超える数字を出している選手はMiller"https://overthecap.com/player/von-miller/2/"くらいしかいない。
 しかし何より目立つのは保証額。サインした時点で41ミリオン、保証額の総額は56.5ミリオンという大きさは、WRはもとよりQBたちと比べてもかなり高い。OBJを上回っているのは契約時点ではリーグ最高額だったStafford(60.5ミリオン)、全額保証で契約したCousins(84ミリオン)と、現時点で最高額のサラリーをもらうことになっているRyan(94.5ミリオン)くらいだ。より具体的な契約内容はこちら"https://www.spotrac.com/nfl/new-york-giants/odell-beckham-jr-14421/"を参照。今シーズンのキャップヒットを3ミリオンほど減らす代わりに、来シーズンから本格的な負担がかかってくる。
 Giantsがここまで高額のサラリーを払うことになったのも、それだけOBJがチームにとって不可欠と思っているからだろう。何しろ彼がいるといないとではEliの成績が大幅に違ってしまっているのが現実"https://twitter.com/billbarnwell/status/978284471328935937"。最初の4年で稼いだヤード数を見るとOBJの4424ヤードはそれほど大きくないが、1試合平均で見ると94.1ヤードというすさまじい数字を残しているところを見ても、Giantsが手放したくないと考えるのも無理はない。
 どうせ手放すつもりがないのなら、保証額を吊り上げることで総額を抑制する、というのは一つのやり方かもしれない。Over The CapのJason Fitzgeraldも「Beckhamのようなプレイヤーの契約総額を下げるためなら、ほとんど全てのチームが代わりに保証額を差し出すだろう」"https://twitter.com/Jason_OTC/status/1034152266163470336"と述べている。契約途中で解雇することが想定されるなら保証額は重要だが、そうでないならむしろ大切なのは契約総額。OBJほどの選手なら後者になる可能性は高い。
 Giantsは足元のサラリーキャップにはあまり余裕がないが、来年以降はリーグでも真ん中あたりのポジションにいる。今ならまだOBJにそれなりの額を提示することはできるし、それに最も高額をもらっているEliの契約は来年までだ。その後、彼が現役を継続したがるかどうかは不明だが、その場合でも今よりは安いサラリーしか出さないという選択肢はある。他の高額選手が近くいなくなるならOBJの分が増えても大丈夫、かもしれない。
 もちろん過去最高のサラリーをもらうWRとしてOBJにはそれにふさわしい活躍をしてもらう必要が出てくる。1試合当たりのヤードを維持しつつ、16試合フルに活躍するくらいでないと、チームにとって差し引きプラスとは言えないかもしれない。実は昨シーズンの怪我が影響してDez Bryantのように成績が急落しました、なんてことになればチームにとっても本人にとっても残念な結果となる。まずはおめでとう、そしてこれからが本番、といった感じか。
 OBJに比べれば地味だが、それでもリーグ内ではそれなりの契約を勝ち取ったのがPatriotsのShaq Masonだ"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000951791/article"。ルーキー契約だった彼は、今回5年50ミリオン(保証額は23.5ミリオン)をゲットし、年平均10ミリオンはRGの中でも5位タイという高いポジションになる"https://overthecap.com/position/right-guard/"。
 PatriotsにおいてOLで最高額をもらうことになるのだが、サラリー事情に詳しい人によれば「いつであれチームが最良のOLと契約延長を締結するのはいいニュース」"https://twitter.com/patscap/status/1034130701296259072"と評価している。チーム全体としてOLに投資しすぎになる可能性があるのではという懸念も存在するかもしれないが、同じく年平均10ミリオンをもらっていたSolderが出て行ったばかりということを考えれば、そこで減った分が増えただけとも考えられる。

 選手契約に動きが出てくる一方、Over The Capではロースターの中でもスター選手たちに支払っている額がチームごとにどうなっているかについてまとめた記事"https://overthecap.com/top-roster-spending"を掲載していた。サラリーの年平均額についてトップ3人、5人、10人、15人、そして4人目から15人目までの合計を算出し、昨シーズンの成績との比較でいろいろと言及している。
 トップ3人への支払額が多いチームのうち昨シーズンプレイオフに出たところはそれほど多くない。しかしこれがトップ10になるとその多くがプレイオフチームとなる。昨シーズンの成功で契約延長を勝ち取った選手が出てきたり、優勝まであと少しという理屈でFA補強をするチームが多いことが理由だそうだ。そういう選手はトップ3に入るような高額選手よりも少し下の選手たちが多いのだろう。
 それぞれ昨シーズンの勝率、得失点差、SRSと、これらスターに支払っている金額との相関を見ると以下のようになる。

Top3 0.198 0.190 0.249
Top5 0.262 0.285 0.340
Top10 0.275 0.340 0.386
Top15 0.238 0.333 0.363
4-15 0.143 0.267 0.267

 ここを見てもトップ10のデータが昨シーズンの成績との相関が最も高いことがわかる。もう一つ、勝率よりも得失点差やSRSの方が金額との相関が高いのも注目点だろう。ある意味、表面的な勝率よりも、より実力を反映しているとみられる得失点差やSRSの方が、選手に投下するサラリーに反映されていると言えるかもしれない。

 サラリー以外に言及しておきたいのが、Football Perspectiveがまとめているディフェンス選手の体重とApproximate Valueとの関係。まずこちら"http://www.footballperspective.com/defensive-player-weight-is-the-line-blurring-between-lbs-and-dbs/"では1990シーズンと2017シーズンの対比をしたうえで「昔に比べてDBとLBの境界線が曖昧になっている」と指摘をしている。
 それは確かにその通りなのだが、グラフを見ると境界がもっと曖昧になっているのはむしろLBとDLの間だ。かつては260ポンド付近に踊り場が存在し、そこにLBとDLの適性の隙間みたいなものがあったことがわかるが、直近ではそうした踊り場がほとんど見当たらず、なだらかな推移となっている。DBとLBの間に昔より幅が狭いとはいえ踊り場が残っているのと比べると、かなり対照的である。
 その理由を説明したのがこちら"http://www.footballperspective.com/weight-defensive-players-and-how-not-all-tweeners-are-created-equal/"。260~270ポンドのところに名前が出てくる選手たちの名前はChandler Jones、Jadeveon Clowney、Terrell Suggsなど、代表的なEdgeの選手たちだ。どうやらこの体重は「フロントセブンの中のEdgeにとって望ましい体重に違いない。[ラインの]端を素早く回り込めるだけ軽く、だが相手選手を圧倒できるのに十分なだけ重い」。
 以前、LBとDLというポジションの分け方が実情を反映していない時代遅れなものになっているのではないかと指摘したことがある"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56654330.html"。このエントリーも同じことを指摘しているとみていいだろう。ディフェンスの選手をDL、LB、DBと分けるのは、もう実態に合わなくなっている。Edgeというポジションをもっと公式に認めるべき時が来ているのではないか。少なくともフランチャイズタグを決める際にEdgeというポジションがないことは、これから大きな問題になってきそうな気がする。
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