Hackenberg指数

 以前"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56738212.html"紹介したプレシーズンの能力評価について、これを例えばHackenberg指数とでも呼ぶことにしよう。1年目のプレシーズンでANY/Aが2ヤード未満の新人ドラフト上位指名QBはヤバい、という指数だ。Hackenbergがこの数字を叩きだした1年目のプレシーズンで彼が出場したのは2試合。全チームが2試合経過した時点で、さてこのHackenberg指数にひっかかった新人QBはいただろうか。
 結論から言うならいなかった。というかそもそもHackenbergが記録した48ドロップバックに届いている新人QB自体、たった1人しかいない。HOFゲームを含め3試合に出場しているLamar Jacksonだ。彼のドロップバック数は49でANY/Aは3.33。決していい数字ではないというか悪い数字だが、Hackenberg指数に比べればまだまし。ヤバいと断言するにはまだ気が早い。
 ただしRavensにとってはヤバいと言いたくなる状況ではある。現時点でプレイしているQBは4人(こちら"http://www.ourlads.com/nfldepthcharts/depthchartpos/QB"のデプスチャートで確認できる)いるが、ANY/Aが10を超えているFlaccoを除くと、一番いいGriffinでも4.52しかない。Flaccoではダメだと判断してドラフト1巡のQB指名に踏み切った成果が出ているとは、現時点では言い難い。
 Jacksonの次にドロップバック数の多い新人QBはBrownsのMayfieldだ。こちらは35ドロップバックでANY/Aは8.80となかなか高い。チーム内でもTyrod Taylorの11.75に次ぐ高いANY/Aだし、そのTaylorはドロップバック数が12と母数が小さすぎてあまり参考にならない。つまりMayfieldは少なくとも現時点では全体1位指名の期待に応じるだけの成績を残していると言える。もちろん現時点で成功すると断言するには母数が少なすぎるが、少なくともHackenberg指数からは程遠い。
 次に多いのはBillsのJosh Allenで、34ドロップバックのANY/Aで6.00となっている。上位指名では最もハイリスクなQBと言われていたが、少なくとも現時点ではHackenbergのような明白なヤバさはない。パス成功率も56.3%と、合格点とは言わないまでもHackenberg(1年目36.2%)よりははるかにいい。というかMayfield(54.5%)より高いくらいだ。今のところBillsのトレーアップの賭けが外れたとは言えないだろう。
 ただしチーム内の他のQBたちを見るとPetermanが10.76、McCarronが6.33となっており、Allenがすぐ先発と言えるほどいい成績を上げているわけでもない。McCarronの負傷"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000948871/article/"の経過次第という面もあるが、Allenが早いタイミングで公式戦に顔を出す可能性が高まったと考えられるかどうかは微妙なところ。
 次に多いドラフト上位指名の新人QBはSam Darnoldで、ドロップバック数29、ANY/A3.65となる。ある意味で事前評価は最も高かったQBだが、少なくとも今のところは成績が伴っていない。おまけにJetsではBridgewaterが(ドロップバック数が25と限られているとはいえ)ANY/Aで8.00といい数字を残している。Hackenberg指数まではまだ余裕があるとはいえ、先発への道は遠そうだ。
 ドラフト上位の最後の1人、Josh Rosenは29ドロップバックでANY/A5.79だ。新人であることを考えれば悪くはないがいい数字でもない。Cardinals先発候補のBradfordが9.57、新人FAのChad Kanoffがドロップバック数16ながら8.06という数字を残しているのを見る限り、Rosenも期待に応えているとまで言っていいのかは微妙なところ。
 あと上位とは言い難いかもしれないが、3巡で指名されたMason Rudolphは29ドロップバックでANY/A3.38だ。こちらもHackenberg指数にはまだのりしろが残っているが、とてもRoethlisberger(プレシーズンには未出場)を脅かすような成績ではない。
 とはいえ彼らの大半がHackenbergの1年目よりさらに少ないドロップバック数であることは問題だ。母数が少ない段階ではランダム要素が大きいTDとIntを含むANY/Aはかえってノイズを増やす考えられる。というわけでそれらを除いたNY/Aで見ると最もいいのはMayfieldの7.67、以下Rosenの5.10、Allenの4.82、Darnoldの4.34、Rudolphの4.24、Jacksonの3.43となる。Hackenbergの1年目は3.19で彼らはいずれもそれよりは上だが、ちょっとJacksonのヤバさが増す。
 もちろん、繰り返すが現時点での数字はあくまで「プロとして通用するか否か」を見るうえでの参考数字でしかない。そしてその参考数字を見る限り、現時点ではHackenbergよりひどい選手はいない。おまけにこの数字が極端に低かったHackenbergですら、Eaglesに拾われ"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000947518/article/"、再びプロの一角に食い込んだ。Hackenberg指数はあくまでプレシーズンのネタに使う数字、くらいに考えておいた方がいいんだろう。

 ただし中には本当にこの数字がヤバい選手もいる。新人ではないがBroncosのPaxton Lynchは25ドロップバックでANY/Aが-0.08、NY/Aも1.72と惨憺たる数字だ。20ドロップバック以上を記録しているQBたちの中で彼より低い数字の選手はいない(次に低いのはRamsのSean MannionでANY/A1.28、NY/A2.69)。かつてのドラフト1巡指名とはいえ、ブーイングを受けるのも理解できる数字だ。
 特にBroncosでは急速に評価を高めているChad Kellyがいることが重要だ。彼の成績はドロップバック数32のANY/A8.47、NY/A8.00。母数が少ないとはいえ、この差はつらい。Lynchが勝っているのはドラフト順くらいなんだが、過去2年の彼はドラフト7巡選手に先発争いで負けている。今年も既にMr. Irrelevantにデプスで負けており、こういう声"https://www.milehighreport.com/2018/8/18/17755636 "が出るのも仕方ない状況だ。
 2010年代に入ってドラフト1巡で指名されたQBたち27人のうち、チームの主力先発としてプレイしたシーズンがゼロの選手は(今年のドラフトQBを除き)4人しかいない。そのうち2人はMahomesとWatsonという2017年指名QBであり、彼らはどちらも今年は先発を予定されている。残る2人とはManzielとLynchだ。さらにApproximate ValueではManziel(5)より低い2しかなく、要するにLynchは10年代の1巡指名QBたちの中でもManzielと並ぶバストになる可能性が高まっている。
 以前こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56629433.html"で背の高いQBたちは過大評価を受けているのではないかと指摘したが。Lynchはその典型例だろう。彼が普通の身長の選手だったら、おそらくドラフト中位か下位の指名で終わり、ファンから変な期待とその反動としてのブーイングを受けることもなかったのではなかろうか。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック