プレシーズン見所?

 いよいよ本格的にプレシーズンゲームが始まる。ファンにとっては久しぶりにNFLのゲームを見るという以上の価値は存在しないのだが、それでもこれを待ち望んでいるファンが多いのは確かだろう。チームについて言うと、レギュラーシーズンを予想するうえでプレシーズンにはほぼ意味がない(例:Browns)。それでも個々の選手がNFLレベルに達しているかどうかを調べるうえでは役に立つのだろう。
 それを窺わせる一例として、結局公式戦では1度も投げることなく仕事を失ったHackenbergのプレシーズン成績を見てみたい。2016年にドラフト2巡で指名され、同年のプレシーズンでは第3、4週のゲームに、さらに翌年のプレシーズンでは1〜4週のゲームに出場したQBだが、この間の成績は残念きわまりないものだった。
 まず16年だが2試合のトータルは47試投の17成功で成功率は36.2%、獲得ヤードは159ヤードでY/Cは9.4、TD1回、Int2回、サックは1回6ヤードで、ANY/Aは1.73ヤードとなる。なお同シーズンのレギュラーシーズンにおけるリーグ平均ANY/Aは6.22だった。次に17年の成績は4試合で74試投の42成功で成功率56.8%、獲得ヤードは372ヤードでY/Cは8.9、TD2回、Int2回、サック9回59ヤードで、ANY/Aは3.17ヤードになった。同年のリーグ平均は5.91である。
 このデータを見れば彼が問題だらけのQBであることはプレシーズン時点から想像できただろう。まず成功率が低すぎる。今や60%は最低ラインなのに6試合のうちこの水準に到達できたのが1試合(17年第1週)だけというのはまずい。次にY/Cについても10ヤードは最低条件なのに半分の3試合でそこにすら届かない数字を出している。Y/Cが高い代わりに成功率が低いというのなら言い訳もきくのだが、そうでないことがここから分かる。
 何よりANY/Aの低さは致命的と言っていいだろう。16年に規定試投数に達したQBたちの中で最もANY/Aが低かったOsweilerでもその数値は4.34、17年ではKizerが3.69という数字を出しているが、この最低数字すら下回っているのがプレシーズンのHackenbergだ。レギュラーシーズンより格落ちのディフェンス相手にこの数字しか出していないQBを本番に投入することにJetsがためらったのは当然と言える。
 ちなみに16年に6試合、17年に4試合本番で出場したPettyのプレシーズンの成績を見ると、16年(4試合)のANY/Aが7.61、17年(3試合)が8.62と非常に高い成績を収めている。プレシーズンのディフェンス相手なら控えQBでもこのくらいの数字は残せるという一例だ。パス成功率はトータルで61.5%とこの部分で既にHackenbergを上回っているのだが、何より重要なのがY/Cの14.2という数字。Hackenbergに比べて57%も高い数字を出しており、両者の差が歴然としていたことが分かる。
 結局の所HackenbergがPettyに勝っていたのはドラフト指名順位のみ(前者は2巡全体51位、後者は4巡103位)。ドラフトがcrapshootであることを踏まえるなら、HackenbergよりもPettyをデプス上位に置くのはごく普通の対応だと思う。Jetsが彼を事実上解雇(形式的にはトレード)したのも当然だ。
 というわけでプレシーズンで注目すべきなのは、特にドラフト上位ながら全然数字を残せない選手たちだろう。ドラフト下位やドラフト外の選手が苦闘するのは当たり前。でもドラフト上位はエリート候補としてチームが雇ったわけであり、彼らがプレシーズンにすら対応できないことが分かれば、これからどうするかが問われることになる。ファンとしてはプレシーズンを見る楽しみの一つと考えてよさそうだ。
 もちろんプレシーズンは最大5ゲームに過ぎず、しかもフル出場する選手はほとんどいない。母数が小さいのであまり軽々に判断を下すべきではないだろう。HackenbergとPettyくらい分かりやすく差が出ればともかく、実際には判断に困る微妙な数字を積み上げる選手が多いと思われる。そうした数字については「判断を保留する」のが正しい。結局は本番を見ないと分からないし、本番も数を重ねなければ本当の実績とは言えない。少ない母数で「こりゃダメだ」と判断できるのはよほど酷い、それこそHackenberg並みの数字が出てきた時だけ。まずはそういう選手が出てくるかどうかに注意すべきだろう。

 ちなみにどこまで正確かは分からないが、現時点での各チームのQBデプスはこちら"http://www.ourlads.com/nfldepthcharts/depthchartpos/QB"のようになっている。新人でQB1(先発)になっているのはゼロ。QB2に顔を出しているのがMayfieldとRosenで、それ以外はQB3以下だ。一応この2人が新人先発に最も近い位置にいると見ていいだろう。プレシーズンの出来や、先発の怪我(特にBradford)次第では開幕先発の可能性も残っている。
 ドラフト上位指名でQB3になっているのがDarnold、Allen、Jacksonの3人。AllenとJacksonの場合はチームのQB1、QB2にも冴えない名前が並んでいるが、彼ら自身も即戦力になるかどうか不透明な点が多いことがここにいる理由だろうか。Darnoldの場合は逆にQB1、QB2がそれなりの選手であるためにこの位置に甘んじているのだろう。
 上位指名以外でQB3となっている選手は7人いるが、うち4人はそもそもロースターにQBが3人しかいないチームであり、1人はQB4も新人のチーム。ベテランに先んじてQB3になっているのは4巡指名のLaulettaと、2年目のGraysonより上となっているBenkertの2人だけ。前者がドラフト上位指名の可能性も言われていた選手であることを考えるなら、本当のスリーパーと言えるのはBenkertくらいかもしれない。でもRyanのいるFalconsで彼が先発まで成り上がる可能性はかなり低そう。
 新人以外について見ると、昨シーズンと先発が変わる見通しなのがBills、Browns、Broncos、Chiefs、Redskins、Vikings、Cardinalsなど、怪我からの復帰となるのがDolphinsとColtsだ。このうち最も先発経験が少ないQB1はもちろんMahomes(プレイオフ含め1試合)で、次がMcCarron(4試合)となる。それ以外の選手は少なくとも40試合は先発を経験しており、どの程度の力があるかは想像できるだろう。逆にBillsとChiefsにおいては控えQBの役割が以外と大きくなる可能性がある。
 ただしBillsの控えはJohnny Football"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000944668/article"と並び称される男Petermanに、即戦力というよりは将来性に期待してドラフトされた新人Allenと、あまりデプスは厚くない。昨シーズン、プレイオフに出たにもかかわらずランキング"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000945490/article"下位になっているのはこれが一因だろう。それに比べれば53試合先発経験のあるHenneがQB2に、7試合だけだが先発したことがあるMcGloinがQB3に控えているChiefsの方が余裕はありそうだ。
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