攻守の人員

 Football Outsidersで2017シーズンのOffensive Personnel"https://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2018/2017-offensive-personnel-analysis"とDefensive Personnel"https://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2018/2017-defensive-personnel-analysis"に関するまとめが載っていた。こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56654330.html"で紹介した話を別の切り口でまとめたものだと思えばいい。
 まずオフェンスの方だが、いわゆる11 personnel(RB1人、TE1人)の比率が調査開始以来初めて減少したことが話題になっている。といっても16シーズンに60.4%を占めていたのが59.3%に下がったというレベルで、いわば誤差の範囲内。また2位が12 personnel、4位が13 personnelとなっていることからもわかるように、RBを1人しか置かないフォーメーションが通例と化しているのは間違いない。
 それでもここまでほぼ一方的に増えてきた11 personnelが頭打ちになったかどうかは気になるところだ。どんなpersonnelであっても100%を超えることはない。いずれはどこかで伸びが止まるか、あるいは反動が出てくるだろう。17シーズンがその始まりなのか、それとも単なる踊り場にすぎないのか、そのあたりはまだ様子を見るべきだろう。
 またチーム別に見た11 personnelの採用比率も載っている。最も多いのがRamsで最も少ないのがRavensである。その比率と、11 personnelの時のDVOAとの間にはほぼ関係がない(相関係数は+0.123)のだが、11以外のpersonnelと比べた時のDVOAの差で見れば相関係数は+0.462まで上昇する。11 personnelの多いチームはその方が有利にオフェンスを進められると考えて11を選択したのだろうし、実際にそこそこの成果を上げていることもわかる。
 個別にみるとRamsは間違いなく11の方がDVOAが高く、プレイの選択として11が多いのも間違ってはいない。逆にRavensはリーグでも11でのオフェンスの拙さが下から2番目に位置しており、11が少ないのも当然だといえる。この2チーム以外にも11の比率が高い方ではSteelersが、低い方ではTitansが妥当な選択をしているということができる。
 一方、プレイの成果と選択とがあまり一致していないのは何といってもDolphinsだろう。リーグで2番目に11 personnelが多いにもかかわらず、11でない方がDVOAが高いわけで、あえて進まないオフェンスばかりを選択していたといわれても仕方ない。コーチングスタッフの能力に対して疑問を呈する向きが現れても不思議ではない状況だ。逆の方で目立つのはSaintsで、11の比率は27位と低いのに11の方がかなり高いDVOAを残している。
 ちなみに11の採用比率と、チームのsnap countから調べたWRの数との相関係数は+0.738と高い。11ってのは要するにWRを3人置くというpersonnelなので、両者が相関するのは別に珍しくはない。逆に言うと11の比率が高いということはWRがレシーブの主役を演じていると解釈することもできるわけだ。実際、11の比率が低いRavensやTitansはTEの使用頻度が高い。ちょっと特殊なのはPatriotsで、このチームはFBも含めたRBの登場頻度が高かったことが11の比率の低さにつながったようだ。

 次にディフェンスだが、こちらはオフェンスよりも大きな変化が出ている。16シーズンに57.4%を占めていたNickelが52.3%へと急減し、代わりにBase(つまりDB4人のpersonnel)が29.7%から33.1%まで上昇したのだ。オフェンスに比べれば大きな「反動」が生じたと解釈できそうに見えるが、一方でDime+(つまりDB6人以上)が11.0%から12.9%とこちらも上昇していることを考えると、必ずしも反動だけがあったわけでもなさそうだ。
 Football Outsidersは「3-4と4-3を分けるのは現代NFLではどんどん無意味になっている」と述べている。DBの数はまだしも、フロント7の内訳を論じるのは今やアナクロって指摘だろう。4-3のDEと3-4のOLBとの違いは「スナップ時に手を地面についているか否かの違いのみ」と化しており、中でもPatriotsなどは自在に3-4と4-3を行き来しているほど。16シーズンより増えたとはいえ全体の3分の1しかないプレイについてさらに詳細に分類するメリットはほとんどない、という理屈だろう。
 オフェンスの11の減少度合いに比べてディフェンスのNickelの減少度合いが大きい理由はわからないが、11に対してNickelが有効なのは間違いないようだ。11のDVOAを見るとBaseを相手にした時は+8.4%を記録しているのに対し、Nickelだと+0.8%にとどまる。ただし12のようにTEを2人置くpersonnelの場合はBaseの方が効果的なようで、減少を続けてきたBaseが上向いたのは、オフェンスで12が伸びたことへの対応かもしれない。
 チーム別にどのpersonnelが多いかも紹介されているが、Baseが最も多いのは6チーム(うちBaseが5割以上なのは3チーム)、Dime+が最多なのは3チーム(同ゼロチーム)で、残る23チームはすべてNickelが主力となっている。5割以上のプレイでNickelを選んでいるところも19チームと非常に多く、今やディフェンスの定番と化している。これまた以前に紹介した話と歩調が合っている。
 snap countとの比較もやはり同じでフロントセブンの数とBase比率との相関係数は+0.740と高い。一方セカンダリーの数と相関が最も高いのはDime+比率で、こちらは+0.868だ。Nickel比率とセカンダリーの数は-0.297とむしろ負の相関になっており、セカンダリーの数はNickelをどれだけ採用しているかではなく、Dime以上をどれだけ採用しているかで決まってくることがわかる。それだけNickelが当たり前の戦術になっているわけだ。
 Dime+の多いチームが採用しているのは3人のSと3人のCBを配置するもので、PackersはこれをNitro packageと呼んでいるそうだ。3人目のSは必要とあれば前進してボックスに入ることもできるような、LBとSのハイブリッドのような選手たちになっているようで、最近のように伝統的LBのサラリーが安く人材が不足しやすい時代においてはこの方法が合っているのだろう。だからこそLBを狙ってRBを増やそうとする動きが増えている"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56667206.html"のだろうけど。

 あと別の話題を一つ。Over The Capで補償ドラフトについての話"https://overthecap.com/front-office-scheme-bolstered-ability-trade-compensatory-picks"が紹介されていたのだが、その中にチーム側が使う契約上のテクニックが紹介されていた。契約の後半にチーム側のオプションを入れるという手法である。
 契約の途中で選手をカットした場合、彼が他チームと契約しても補償ドラフトの対象にはならない。補償ドラフトはあくまで契約切れになった選手がFAで他チームに流れた場合にのみ適用されるからだ。チームの側が自らの判断でカットした選手の分までドラフトで補償する必要はないという考えだろうか。だから昨年のJetsのようにベテランを大量解雇しても、契約途中の解雇であればドラフト権は増えない。
 しかしこれが途中解雇でなく「チームオプションをピックしなかった」という形だったらどうか。この場合、選手との契約は途中で切られたのではなくきちんと終了したとみなされ、この選手が他チームにFAとして拾われれば補償ドラフトの対象になる。例えばPatriotsとRevisの契約が典型で、表面的には2年32ミリオンの契約とされているが、中身を見ると実際は1年12ミリオンの契約で、1シーズン終わった後にはPatriots側にオプションを選ぶ権利があった。当然、彼らはピックしなかった。
 もっと凄いのがOkungとBroncosの契約。表面的には2年24.5ミリオンの契約だが、1年目は保証一切なしの5ミリオンしかなく、2年目に19.5ミリオンの全額保証という契約スタイルを取っていた。もちろんBroncosは2年目のオプションを採用せず、Okungが他チームと高額契約を結んだおかげで補償ドラフトをきちんとゲットしている。BelichickもElwayも、契約交渉に向けて最も準備しているチーム関係者と見られている"https://www.usatoday.com/story/sports/nfl/2018/04/19/528741002/"が、このオプションを活用した契約手法もそうした評価の一因なのだろう。
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