ドラフトで指名した選手が当たるかどうかは、彼らが実際にプレイを始めてみないと分からない。それも1~2年で判断するのは早すぎる。もし1年目だけで当たり外れが分かるのなら、RedskinsによるGriffin指名は大成功だったはずだ。せめて4年は様子を見ないとまずいだろう。
まず調べる対象は2018年のドラフト権が絡んだトレードのみとする。選手と19年のドラフト権との交換などは対象外だ。17年のトレードによって18年のトレード権を得た場合、そのValueはトレード順位そのままの価値ではなく、前年のトレードで得た差額分の価値を使う。対価を出して手に入れた権利なので対価分は差し引くというわけだ。ただ差額がマイナスの場合はゼロとして扱う。昨年のトレードで失っている指名権もゼロとする。
逆に今回のトレードで入手した19年のドラフト権については、ドラフト巡の真ん中(1巡なら16位)のValueから2割差し引いた数値を使う。StuartのValue Chartはドラフトから5年間の予想獲得AVを使っているので、1年後のドラフトならそのValueから2割差し引くのはおかしくあるまい。この方法で各チームが予め持っていたドラフト権と、実際に使ったドラフト権の間にどれほどの差があるかを数値化できる。
問題は選手が絡むドラフトだ。StuartのChartでは選手の5年分のAV引く10でValueを計算している"
http://www.footballperspective.com/creating-a-draft-value-chart-part-ii/"。そこでこちらも同様に選手の過去5年分(キャリアが5年未満なら5年分に換算)のAVを出してみたが、大半のトレードにおいて選手のValueは大幅にディスカウントされていた。今回、調査対象としたチームの場合、選手もしくは交換されたドラフト権のどちらかがゼロになるケース以外において、ドラフト権のValueは選手の実績AVに比べ56%から場合によっては1%未満にとどまっていた。平均は約2割。つまりトレードに際して各チームは選手よりもドラフト権を大きく評価していることになる。
以上のデータを基に、AFC東に所属する4チームの2018年ドラフトにおける投資効率がどうだったかを調べてみた。4チームに限定したのは、トレードデータを集めるのがものすごく面倒だったため。wikipedia"
https://en.wikipedia.org/wiki/2018_NFL_Draft"には詳細なトレード内容が書かれているが、よく見ると抜けているものがある。チームごとの特色がはっきり出ているAFC東を見ることで、各チームがドラフトによってどれだけ有利・不利な立場に置かれているかを見てみたい。
今回のドラフトで彼らが持っていた指名権は1巡から7巡まで(それぞれ比較的上位)の計7つと、昨年のCowboysとのトレードで手に入れた5巡の指名権1つだ。Jetsは昨年、ベテランの大量解雇を実行してキャップスペースを大きく空けるとともに、ドラフト権も分厚く手配した。今年のドラフトでもその恩恵を受けていることが分かる。
オリジナルの指名権のValueは合計51.65。これにCowboysから入手した指名権のValue(0.72)を足した52.37という数値は、当然ながらAFC東に所属する4チームの中では最多となる。指名権の数そのもの(8つ)は地区内の他チームと全く同じ、かつリーグ全体の平均値通りであり、指名順を除けばAFC東4チームの間に目立った格差はなかった。
StuartのChartによればJetsは27.6のValueを手に入れるため52.52のValueを支払った。見ての通りこの数字は、彼らが当初持っていたドラフト権(Cowboysから入手した分含む)に匹敵する。要するにJetsは全体3位の選手のために全ドラフト権を売り飛ばしたと見做すことができる。その昔、1人の選手を手に入れるためドラフト権全てを放り出したチームがあったが、それとほぼ同じことをしたと言える。
そのためにJetsが投入したのは来年の2巡指名権(Valueは7.92)。彼らはトレードアップし、予定通り今年のトップクラスQBを指名した。その後はトレードダウンを活用し、失った指名権の数を少しでも取り戻そうとした結果、最終的にJetsが指名したのは6人。Valueとしては43.6になる。だが来年の指名権まで含め投入したValue(60.29)に比べればかなり少ない水準にとどまった。
一方、トレードに絡んだ選手は4人。放出が1人で獲得が3人と、人数的には獲得の方が多いのだが、彼らの実績AVを見るとディスカウント後の数字でも放出7.5に対して獲得5.53と小幅ながらコストがリターンを上回っている。この部分でも投資に見合うリターンは得られなかったわけだ。
全体でJetsが投入したドラフト資源のValueは67.79に達した。一方、指名と獲得選手によって手に入れたValueの合計は49.13にとどまり、その差は-18.66に達している。この数字はStuartのChartに従うなら全体12位(18.8)と13位(18.3)の間に位置する。全体3位の指名権を得るために、1巡上位の指名権を1つ無駄にしたと言ってもいいだろう。投資効率はマイナス27.5%。4分の1以上のドラフト資源を消失させた格好だ。
ドラフト上位におけるトレードアップがどれほどチームのドラフト資源を損なうか、それが明確に分かるのが今年のJetsのドラフトだと言えるだろう。このドラフトを正当化させるためには、何が何でもDarnoldに成功してもらうしかない。具体的に言えば全体3位のValue(27.6)に投入額と獲得額の差である18.66を足した数字以上の実績を5年で達成してもらう必要がある。
また、たとえDarnoldがPrescottになれたとしても、ドラフト資源の減少により他のポジション強化に遅れが生じるという問題も残っている。17シーズンのJetsディフェンスは失点が22位タイ、Expected Pointsが21位だった。彼らの強化も図らなければチーム力は上向かない。再建への道のりはまだ遠いと見るべきだろう。
長くなったので以下次回。
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