RB王国

 ドラフト終了。今回はPatriotsの動きについて見てみよう。結論から言えば今年もBelichickはBelichickだった。

 まずこちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56639887.html"で今年の1~2巡の指名権のうち「ドラフトが終わると1つくらいは来年の指名権に化けている気がしなくもない」と述べた件だが、予想通りにそうなった。Bearsとのトレードで彼らの来年2巡指名権を手に入れた"https://www.patspulpit.com/2018/4/27/17293952/"結果、今年の1~2巡指名は3人で終了。さもありなん。
 トレードダウンを積極的に行ったのもいつも通り。ただ2巡で8人分トレードダウンした交換として手に入れた117位の指名権を、後に7人分トレードアップするのに使ってしまったのは、トータルとしてはマイナスだろう。まあ1人くらいの差は実際の指名が及ぼす影響に比べれば誤差の範囲ではあるが、Belichickにしては珍しく不手際を感じさせるトレードだった"https://twitter.com/FO_ASchatz/status/990028827513548800"。
 これまでと同様、Draft Trade Evaluator"http://www.advancedfootballanalytics.com/index.php/home/client/draft-trade-evaluator"でPatriotsのトレードを評価するなら、まず43位をLionsの51、117位と交換したものはJohnsonのチャートでは僅かながら支払い過多となるものの、AVでは5割弱、M-T Surplusだと7割強の受け取り過多となり、この取引だけなら十分にプラスが出ている。
 一方、Buccaneersを相手に63、117位を出して56位と交換した取引はそれぞれほぼ等価、6割弱、7割弱の支払い過多となる。この2つのトレードを足し合わせると、それぞれ2.1%の支払い過多、1.5%の支払い過多、そして2.0%の受け取り過多となり、やはり基本的には誤差の範囲。それでも少しばかりPatriotsにとっては不利な取引だった可能性はある。
 Bears相手のトレードでは51位を差し出して105位及び来年の2巡と交換した。それぞれ3割弱、7割、8割弱の受け取り過多となり、このトレードは成功だったと言える。Patriotsは現時点での補償ドラフト予想"https://overthecap.com/compensatory-draft-picks-cancellation-chart/"では2019年に3巡2つと6、7巡それぞれ1つの補償を得られる見通し。後に述べる3日目のトレードも含めると現時点で実に12人分のドラフト権を持っていることになる。凄まじい数だ。
 3巡指名権もトレードに使われたが、ここでは95位を出す代わりに49ersからOTのTrent Brownと143位を手に入れた"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000929371/article"。ここからBrownの価値をドラフト権に換算するとJohnsonチャートなら104~105位、AVなら246位以下でM-T Surplusだと244位になる。実際にBrown"https://www.pro-football-reference.com/players/B/BrowTr02.htm"は2015年に244位で指名されており、それだけ見ると妥当なトレードにも見えるが、3年で28試合に先発したことまで踏まえるなら割安とも言える。
 ルーキー契約4年目となるBrownの2018サラリーは1.9ミリオン"https://overthecap.com/player/trenton-brown/4092/"。RTの市場"https://overthecap.com/position/right-tackle/"で見るなら30位くらいの水準になる。PatriotsのRTであるCannonは年平均6.5ミリオンのサラリーをもらっているが、昨シーズンは4割強のスナップカウントしか出場していない。デプスのためにOTが必要と考えた可能性はある。
 Patriotsは昨シーズン、ドラフト権をルーキー契約中の若手にトレードする形でロースターを埋める試みを派手に行った。その中には成功例(1000ヤード以上を稼いだCooks)も失敗例(シーズン前に解雇されたEaly)もあったが、引き続きこの取り組みも進めていくつもりのようだ。Brownが上手く機能すれば今後も同じようなトレードが行われるかもしれない。
 3日目もトレードダウンを頻発。Bearsから手に入れた105位はBrownsの114位及び178位と交換になった。2%、6割弱、5割強の受け取り超過だ。その114位はLionsの来年の3巡と交換。2.9倍、3割増、2割増の受け取り超過と、こちらは珍しくJohnsonチャートの方が数字がでかい。また198位を出してChiefsから233、243位を手に入れたトレードではJohnsonチャートでは実に92%の支払い超過になるのだが、残る2つは5割弱、3割弱の受け取り超過だ。そして最後に233位をEaglesの250位と来年7巡と交換。100%の支払い超過と、9割弱、7割強の受け取り超過だ。

 もちろんファンにとって予想外のことをやらかすのも、これまたいつものBelichickだ。必要と言われていたBradyの後継QB指名を行わず、結果としてJacksonをRavensに"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000929151/article/"、RudolphをSteelersに"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000929640/article/"、LaulettaをGiantsに"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000929788/article/"、そしてFalkをTitansに"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000930062/article/"持っていかれた。指名したQBは7巡のEtling"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000930120/article/"。Bradyがいつガス欠になるか分からない状態だが、まだそうならないという自信があるのか、あるいは誰がQBであってもそこそこの成績を残せると思っているのか。
 前回も述べたRBの1巡指名も予想外だろう。当然多くのファンが「ディフェンスはどうする」と悲鳴を上げているし私もそう思った。ただこちら"https://twitter.com/patscap/status/989919377171582977"で指摘されているように、実はディフェンスのスターターはその多くがチームに残るうえに、怪我で出られなかった選手たち(その中には昨年のドラフト指名選手であるRiversや、一昨年指名のCyrus Jonesなどもいる)が戻ってくる。Belichickはディフェンス補強が優先だとは思っていない可能性がある。
 RB指名にしても、コストという観点で見れば少なくとも2位で指名したGiantsほどの負担にはならない"https://twitter.com/BenVolin/status/989925618526629888"。Over The Capでは既に指名された選手の年俸も反映した表が掲載されている"https://overthecap.com/position/running-back"が、Barkleyがいきなりリーグ4位の高給取りになるのに対し、Michelのサラリーはリーグで29番目だ。そのサラリーはトップ10の平均(7.591ミリオン)に比べて5ミリオン以上割安になっている。1巡指名によるデメリットはさしてない、という判断はあり得る。
 いやむしろPatriotsは積極的にRBを集めている気配がある。何しろサラリートップ32選手の中にPatriotsが4人もいるのだ(White、Burkhead、Gillislee、Michel)。これに前PatriotsのLewis、元PatriotsのBlountまで加えれば、この数年いつの間にかPatriotsがRB王国と化していたことが分かる。なぜ彼らはここまでRBに資源を投入しているのだろうか。
 Football OutsidersのDYARで見ると、昨シーズンのPatriotsのRBたちは実はかなりチームに貢献していた"https://www.footballoutsiders.com/stats/rb"。彼らがランとパスで積み上げた計637DYARは、ドラフトでKamaraという大当たりを引いたSaints(737DYAR)に次いでリーグで2番目に高かった。彼らを含めこの数字が200以上になっているところは12チームしかない。安価なRBでこの成績を残せれば全体として採算が合うことにBelichickが気づき、こうした対応をしている可能性はある。
 ゲームというのは相対的な強さを競うものだ。RBのサラリーが安くなったのは彼らが思ったほど勝利に貢献していないことがバレたためだが、安くなった結果としてRBへの投資採算が相対的に向上した可能性はある。一方でWRのコスト上昇が続いていることは前にも述べた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56649725.html"。RBでも安さを生かす使い方をすればいい投資ができる環境が整ってきたと見ることはできるかもしれない。

 もちろんBelichickの考えが正しいかどうかは結果を見なければ分からない。それにたとえ正しいとしても、ドラフトというcrapshootで運に恵まれなければ、そこには残念なオチが待っている。今年は2巡でCBを指名したが、かつてBelichickが2巡で指名したCBたち"https://twitter.com/billbarnwell/status/990028540866383874"を見ると、不安が募るファンもいることだろう。
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