WRのコスト

 Dez Bryantが解雇された"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000926363/article"。こちら"https://twitter.com/Jason_OTC/status/984833981773467649"でも言われている通り、彼の解雇自体は「考えるまでもない」判断である。こっちの記事"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000926459/article"でも「いつもは1年か2年遅く」選手に別れを告げるCowboysが、よりビジネスライクになってきたと書いている。
 だが私が思うに彼の解雇は1年と1ヶ月半遅かったのではないか。まず、なぜ新年度が始まった3月上旬ではなく4月中旬に解雇したのかという問題がある。この時期に解雇されても他のチームはドラフト前のチーム作りをほぼ終えており、特に高額契約は一巡してしまっている。これはDezの代理人が行った契約のやり方に問題があった"https://twitter.com/ZackMooreNFL/status/984840347858735105"ようで、3月にロースターボーナスを設定していればもっと早く次の道へと進みだせたかもしれない。
 しかしこの1ヶ月半は細かい話だ。Cowboysにとってもっと拙いのは1年前の状況。実際のところ2016年の時点で既にDezは一流WRではなくなっていたという声が出ていた。当時の彼はシーズン中に28歳を迎えたばかりであり、一般的にWRは30歳を過ぎてから成績が落ちていく"https://www.footballoutsiders.com/info/FO-basics"ため、もう1年くらいは様子を見たいと思ったのかもしれないが、その判断には疑問がある。
 最大の問題はDezの契約"https://www.sbnation.com/nfl/2015/7/15/8124905/"にある。彼が2015年に結んだ1年平均14ミリオンという契約は現時点においてもトップ10に入るクラスの高額契約で、当時においてはさすがにCalvin Johnsonには及ばずともDemaryius Thomasと並ぶほどの水準ではあった。直前の3年間、連続して1000ヤードと2桁TDを記録したことを踏まえるなら、この時点での契約がそれほど悪かったとは思わない。
 だがその後は拙かった。2015シーズン前半に負傷した彼は7試合目から復帰したのだが、1試合平均のレシーブ回数やパスキャッチ率が新人当時すら下回るキャリア最低までダウン。それでもたまたま怪我の影響が残ったためと考えれば翌シーズンの復活に期待するのもアリだが、実際には16シーズンは796ヤード、パスキャッチ率はキャリアで2番目に低い52.1%にとどまった。もはや一流ではないとの見解が出てきたのはこのためだ。
 私がCowboysフロントならこのシーズンが終わった時点でDezのトレードを考える。目的はドラフト権というよりデッドマネーを作らずにロースターを空けることにあるので、交換するドラフト順位は低くてもかまわない。既に16シーズンの時点で彼のキャップヒットは13ミリオン(キャップ総額の8.4%)に達しており、17シーズンには10%を超えることが分かっていたからだ"https://overthecap.com/player/dez-bryant/623"。これだけのキャップヒットを正当化できるのはリーグでもトップレベルのWRのみ。怪我以降の成績が振るわず、年齢的にも賞味期限の迫っているDezにそれを期待するのは難しい。
 Dez自身は「Garrett guysが自分を追い出した」と言っている"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000926506/article"ようだが、GarrettのようにAnalyticalなアプローチを取る人物が権限を握っていたらもっと早くに追い出されていたとしてもおかしくない。ファミリービジネスとして選手を長々と手元に置きたがるJerry Jonesがいたからこそ今まで残っていられたわけで、むしろ遅い決断だったと思われる。

 問題はそれより前に彼を切れたかどうか。負傷後の彼の成績が落ちていることは15シーズンの時点で気づくことは可能だっただろう。しかし母数の少ないこのデータで彼が一流WRではなくなったと判断が下せたかどうかは分からない。実は15シーズン終了時なら保証額は32ミリオンで済んでおり、それだけ少ない負担で切ることはできた。トレードする場合でも相手からずっといい条件を引き出すことが可能だっただろう。この時点でDezをカットするかトレードに出すことができたなら、それはかなり有能なフロントだと見てよさそうだ。
 もっと早く、新人契約が終わる時点でのカットはどうか。これは正直かなり難しい。この時点で翌年から急激に彼の成績が落ちることを予想するのは困難だし、それまでの実績は本当に文句なしのレベル。たとえ金に渋いPatriotsでも、当時のDezからリーグトップクラスのサラリーを要求された場合、むげに断ってトレードに出せたかというと微妙だ。何しろ直前の3年間、レシービングTD数ではリーグトップを記録した選手である。
 Patriotsは確かにWRに金を使わないチームではあるが、その彼らもRandy Mossとは3年27ミリオンという当時としてはかなり高額の契約"https://fivethirtyeight.com/features/running-backs-are-finally-getting-paid-what-theyre-worth/"を結んだ(ただし保証額は15ミリオン)"http://www.espn.com/nfl/news/story?id=3274806"。リーグの中でも傑出したWRになれば、キャップの10%近いサラリーを投じるのもありだという点はOver The Capも指摘している"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56641449.html"。
 実際3~5年目に3300ヤード以上、30TD以上のレシーブを記録した選手は、パスルールが変わった1978年以降でたった11人しかいない。その中にはBryant以外にMossやMarvin Harrison、Jerry Rice、Terrell OwensといったHOFerや、Calvin Johnson、Antonio Freeman、Andre Risonといった一流WRたちが名前を並べている。これだけの選手をサラリーが高いからという理由だけで切り捨てるチームはそうは存在しないだろう。よほど桁違いな契約でもない限り、手元にとどめる判断が普通だ。

 それにしても今年のFAではWRの値段が跳ね上がっているようだ。こちら"https://twitter.com/Jason_OTC/status/984851663738556416"によると、上位15人のサラリー上昇度では元からサラリーの低いポジションを除けば最もよく上がっているのがWR(+7.6%)で、次がEdge(+6.6%)となっている。ILBやCenterは元が低いので大幅上昇してもまだキャップへの負荷は大きくないが、WRやEdgeはそうはいかない。
 こちら"https://twitter.com/Jason_OTC/status/985033029394534400"では分かりやすくサラリーがインフレを起こしている選手としてWilsonとAmendolaというDolphinsに移籍した選手の名が挙げられている。Wilsonは年平均8ミリオン、Amendolaは6ミリオンだが、前者は4年で1544ヤードの7TD、最も多い年でも554ヤードしか記録しておらず、後者は9年のキャリアでいい年でも700ヤード未満、年齢は32歳だ。このツイートで指摘している「現実的なスケール」で言うなら、どちらも半分以下の契約で済ませるべきところだった。
 この2人以外にもWatkinsの年16ミリオンといった驚愕の契約がある。彼は4年のキャリアで1000ヤードを越えたことが1回しかなく、2桁TDはゼロ。トータル3052ヤードは、同じく4年のキャリアを持つJordan Matthewsの2955ヤードとほとんど変わらないのに、後者の契約は年平均1ミリオンだ。この2人に16倍ものサラリー差がつくのはどう考えても異常。Chiefsの契約は明らかに間違いであり、一方Patriotsの契約は明らかにダンピングと言える水準だ。
 こういう契約を見せられると、各チームのフロントの能力差が否が応でも浮き彫りになる。こちら"https://twitter.com/Jason_OTC/status/985034930764894208"では特にキャップマネジメントの下手なチームとしてSaints、Dolphins、Panthers及びLionsの名が挙がっているが、確かにWRに高額投資をしているチームの中にはDolphinsがいる。彼らのキャップスペースに余裕がなさすぎることは以前から指摘しているし、多額のデッドマネーを残したうえでSuhをカットしたのもフロントの失敗と言えるだろう。
 ちなみに高額な契約ではあるが上に紹介した選手たちよりは説得力があるLandry"https://www.pro-football-reference.com/players/L/LandJa00.htm"について、典型的スロットレシーバーの彼にサラリーをつぎ込んだ一方、BrownsがドラフトでJosh Allenを取るという噂が出ているのは何とも奇妙な話だ。どう見ても間違った組み合わせに金やドラフト資源を投入するのは矛盾しているように思えてならない。こちら"https://www.theringer.com/2018/4/11/17224760/"では「Allenを指名するならBrownsのAnalytics時代は終わりを告げる」と指摘されているが、さてどうなることやら。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック