記事の要点となるのは「プロ入り4年間のSuccess rateは、大学時代のSuccess rateを上限としてそれを下回る」という指摘だ。実際には大半の選手は大学時代のSuccess rateより3ポイント以上低い数字を残している。大学時代のSuccess rateを使えば、その選手がルーキー契約の間に残すことができる最良の結果を推測できるというわけだ。もちろんあくまで上限であり、それより下になるリスクはある。
この記事によると今年のQBドラフト候補たちのうち、上限が高い選手として名前が出てくるのはやっぱりMayfieldと、さらにDarnold、Rudolph、そしてLogan Woodsideが続く。一方、真ん中程度のところに顔を出すのはFalkやJacksonの他にRiley Fergusonなど。そして評価の低い方に出てくるのはRosen、Litton、そしてやっぱりAllenだ。
Allenが高い数字を出しているのは、筆者が提示しているMarginal Explosivenessという数値。プレイヤーのIsoPPPと、同じ状況におけるリーグ平均のIsoPPPとの差を示したもので、Allenの数値(0.16)はMayfield(0.22)やRudolph(0.24)には劣るものの上位の成績だ。要するに目立つビッグプレーの多い選手と考えれば大きな間違いではないだろう。
問題は大学時代のMarginal Explosivenessとプロ入り後のデータとの相関係数が0.099、つまり無相関にとどまっていること。大学でビッグプレーの多かった選手がプロに入っても同じことをするわけではないし、大学時代にビッグプレーの少なかった選手がプロに入ってそういうプレーが多くなることもある。ビッグプレーが多いからという理由でQBを取るのはリスクの高い選択肢だと言える。
Allenと大学時代の成績が似た選手を探すと、出てくる名前はKizerだ。一方MayfieldはRussell Wilsonであり、プロチームにとってどちらが魅力的かは言うまでもないだろう。いよいよばば抜きの様相が強まってきたが、ドラフト当日はどうなるのだろうか。
具体的にはキャップヒット6~10%程度の「二線級QB」を使い、浮いた資金で他のポジションを少しでも強化するというやり方。JaguarsがBortlesとの契約延長で彼のキャップヒットを減らした方法や、RedskinsがSmithと結んだ当面の契約(来年以降の高額契約ではなく)などがその事例であり、FA選手としてはBroncosのKeenumやCardinalsのBradfordの契約がそれに当たる。
要するに一流だろうが二流だろうがフランチャイズQBに高すぎるサラリーを投入するのは止め、二流QBは二流QB並みのサラリーに抑えることで市場の効率化を図るべきだという主張である。もちろん彼らの指摘は正しい。QBに払い過ぎた結果としてチーム力にマイナスの影響が及んでいるRavensのような事例が減れば減るほど、リーグの競争は激しくなり見る側としては楽しくなる。最も高額をもらうポジションだからこそ、まずはQBから価値に見合った支払いを確立しなければ、チーム力の不均衡という問題は容易に解決しないだろう。
だが私はQBの「効率的な市場」が確立する可能性はあまり高くないと思う。これまでも指摘してきたが、今オフはたまたまQBの出物が多く、チームが無理に高額オファーを出す必要のない買い手市場になった。だが次のオフも同じ状況が整うとは限らない。OsweilerやGlennonの契約に見られるようなバランスを欠いた契約が来年からまた復活したとしても不思議はない。
市場参加者が皆合理的に行動する「経済人」ばかりなら、Over The Capが理想とするバランスの取れたサラリーとチーム力が成り立つことだろう。でも人間は合理性ではなくプロスペクト理論のようなヒューリスティクスに従って行動する。NFLの関係者たちも例外ではない。二流QBが二流のサラリーでとどまる時代の到来には、あまり期待しない方がよさそうに思える。
これだけの選手となればたとえ高額契約であってもとどめる意味はある、というのがOver The Capの指摘。特にGiantsは近い将来、Eliがチームを去りその後を(もしかしたら今年指名される)若いQBで埋めていくことになる。その際にOBJという強力なサポートが得られるかどうかは大きな違いだ。おまけにOBJは年齢的にまさにキャリアのピークを迎えつつあるところ。全盛期のCalvin JohnsonやAntonio Brown並みの数字を残せそうな選手をトレードに出すなどとんでもない、というわけだ。
逆にEliはむしろ切り捨ててもいい状況。最近の彼のパス成績及びその年齢を見れば当然の判断だろう。あと2年程度で袂を分かっても不思議はない。もし彼がサラリーのリストラに応じ、キャップスペースにかける負担をそれこそ「二線級QB」にふさわしい数字まで減らすのであれば、もう少し引っ張る手もあるかもしれない。上で書いた第3の道だ。だが個人的にはさっさとルーキーQBを指名し、QB以外にキャップを投じる戦略へと舵を切るべきだとは思う。
Over The Capはまた、OBJの将来的な契約についても、うまくやればWRとしてトップクラスのサラリーを払いつつキャップへの負荷を9%以下に抑えることは可能だとして、具体的な契約案を示している。一般論としてWRに必要なのはバリューだが、OBJやJulio Jonesクラスなら大金を投じる方がむしろいいというのがこの記事の指摘。だからGiantsが考え、決断を出さなければならないのは、OBJではなくEliをどうするか、である。
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