2018ドラフトQB

 衝撃的なニュース"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000924657/article/"が伝えられ、大本営でもBreakingが流れていたのだが、Patriotsファンの反応がえらく地味。こちら"https://www.patspulpit.com/2018/4/3/17194720/"のコメント欄を見ても発狂しているファンがほとんど見当たらず、バリューがどうとか「よく考えりゃありだよな」とか、とにかく淡々とした書き込みが続いている状態。「はいはい、いつものBelichickね」といった感想が中心になるのも、これまでさんざん鍛えられてきた結果だろう。
 とにかくBelichickはいらないと思えばさっさと選手を切る。それをもう十数年ずっと続けている。Milloyの時には驚愕したファンたちだって、そりゃ慣れるし訓練される。JonesやCollinsだってとっととトレードに出したんだ。1000ヤード稼ぐWRを1年で放り出しても不思議はない。むしろドラフト32位が1年後の23位になったと思えば悪くないんじゃね? 少なくともGronkをトレードに出すよりはマシだろう、などなど。
 こうした見方はサラリーキャップ専門家やスタッツ分析関係者の見方に近い。こちら"https://twitter.com/Jason_OTC/status/981315454575808512"ではCooksについて「1.5ミリオンで1シーズンレンタルしたのは悪くない」という評価だし、こちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/22680603/"も基本的に同じ判断。確かにこのコストで1000ヤードWRを使えたのはありがたい話だと言える。もちろんこの先、若手のWRのコマをどう揃えていくかという問題はあるが、選手に高すぎるサラリーを払うよりはましなんだろう。
 こちら"https://twitter.com/patscap"によるとPatriotsのキャップスペースはこれで14ミリオン台まで増加。リーグでも少ない方だったのが真ん中あたりまで増えた"https://overthecap.com/salary-cap-space"。そしてドラフト指名権が1巡、2巡とも2つに増加。Belichick時代において上位2巡で4つの指名権を持った例は過去にないという"https://twitter.com/cpriceNFL/status/981309682445897728"。といいつつ、ドラフトが終わると1つくらいは来年の指名権に化けている気がしなくもないが。

 一方、Football OutsidersはQBASEを発表した"https://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2018/qbase-2018"。やはりこちらの見立て"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56582853.html"と同じく、Mayfieldの評価がとても高く、Allenの評価が低い。特にMayfieldの評価は今ドラフトでは突出しているようで、1997年以降で4番目に高い水準にあるという。
 このQBASEの歴代トップテンを見ると、平凡だったLeftwich、まだ評価するには早いMariotaを除き、そこそこ優秀な先発だったPalmerとMcNabb、間違いなく一流のRivers、そして優勝経験があるWilson、Peyton Manning、Rodgers、Roethlisbergerといったなかなか充実のメンツが並んでいる。ここに顔を出すのだからMayfieldは最悪でも先発可能なクラス、上手く行けばリーグ屈指のフランチャイズQBになることも期待できそうだ、ということになる。
 逆にAllenはマイナス。過去にこの数字がマイナスでありながらそこそこ活躍した選手はBrian Grieseくらいしかおらず"https://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2016/qbase-2016"、残りのDraft Prospectたちは軒並みbustと化している。昨年のドラフトQBの中ではKizerとPetermanがマイナスだった。
 QBASEの算出に際しては予想されるドラフト順位も使われている。今年の場合はこちら"http://insider.espn.com/nfl/draft/rankings?year=2018"がそうらしい。つまりAllenはこの予想ドラフト順位で高い下駄を履かされているにもかかわらずマイナスを記録しているわけで、その意味では過去にQBASEがマイナスになった他のQBたちよりも一段とリスクが高いとも考えられる。かなりの確率で点火する地雷だと覚悟すべきだろう。
 他の上位候補たち、つまりJackson、Rosen、Darnoldは両者の中間にある。敢えて言えばDarnoldが少し低い程度だが、大きな意味を持つほどの差ではないそうだ。ただしQBASEはパス能力のみを評価するので、ラン能力の高いJacksonについては使い方次第ではもっと役に立つとも考えられる。つまり上位候補を敢えて並べるならMayfield、Jackson、Rosen、Darnold、Allenという順番になる。
 それ以外に紹介されているのはRudolph、Lauletta、Falkの3人で、彼らはいずれもDarnoldより下だがプラスという位置に集まっている。ただしRudolphの評価がそれほど高くない理由の一つには「予想ドラフト順位が低いこと」があるらしいので、スカウトを全く信用しないのならRudolphに賭けるという手はありそうだ。ただしそれをやる余裕があるのは現在の先発QBに不満のないチームくらいだろう。
 そんなわけで今年のドラフト上位はババ抜きのつもりで見ているといいかもしれない。もちろんAllenが成功する可能性は常に存在するが、リスクの高い選手に上位ドラフト指名権を投入するのは、たとえ結果的に成功したとしても評価できる選択とは言えない。どのチームのフロントがAllenというジョーカーに手を伸ばすのか、生温かい目で見守らせてもらおう。

 実はFootball Outsidersはもう一つの新人QB予測システムを開発したようだ"https://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2018/beating-nfl-drafting-qbs"。こちらで特徴的なのは、おそらくQBASEでは使われていないfunctional mobility、つまり機能的なモビリティなる指標を活用している点だろう。
 機能的モビリティはこちら"https://www.si.com/nfl/2015/05/14/functionally-mobile-quarterbacks-aaron-rodgers-tom-brady-drew-brees"で示されている概念で、「QBがポケットの中と周辺で行う仕事」だという。単なる足の速さを示すのではなく、例えばポケット内でラッシュを上手くかわすといった方法まで織り込んだ概念だ。
 計算法としてはラン―パスレシオとランの平均獲得ヤードそれぞれの自然対数を使っているという。パスに対してランの比率が上がれば機能的モビリティは下がるものの、そのランのYPAが高ければ機能的モビリティは上がるという計算らしい。カレッジの統計ではサックはランと計算されるので、たとえばANY/Aなどに比べてサックのペナルティが多そうな計算に見える。
 ただしそれだけを見ているわけではなく、具体的な数値を出す際には予想ドラフト順位も加味している。結果、例えば今年のドラフト候補ではDarnoldやRosenの方がMayfieldより上になり、Allenも4番手をキープしている。もしドラフト順位がなければMayfieldは2位になるし、Allenは対象8選手のどん尻という結果になる。やはりAllenのリスクが高いのは間違いないようだ。
 問題はこの機能的モビリティの具体的な数値が分からないことだ。このページに載っているのはあくまでドラフト順位まで含めた数字でしかなく、おまけに2015年以降にドラフトされた選手の分しか載っていない。著者によれば2000年以降では機能的モビリティが最もNFLでの成功をよく予想しており、次がパス成功率だというのだが、ではどの程度の相関係数で予想できているのか、そのあたりが分からない。
 できれば機能的モビリティの数値のみを歴代のQBについてまとめて示してもらいたいところ。それが分かればこの新指標の信頼度も高まるし、ドラフトQB候補たちを見るうえでスタッツを活用した分析の幅を広げることもできる。
 具体的なデータが知りたい理由の中には、少なくともプロ入り後の機能的モビリティ関連データとQB成績との間の相関が乏しいという事実もある。2000年以降にデビューしたQBたち(1000試投以上の57人)を対象に、パス/ラン倍率(サックはランに含める)とQBの勝率との相関を見ると0.089、ANY/Aとの相関は0.203となり、かろうじて後者に弱い相関があるくらいだ。
 これがランのYPC(こちらもサックをランに含める)で見るとQB勝率との相関は0.024、ANY/Aとの相関は-0.013となり、どちらも無相関と言える。正直この2種類のデータをどう組み合わせても、パス成功率と勝率との相関(0.441)やANY/Aとの相関(0.779)を上回るほどの数字が出てくるとは思えない。もちろんカレッジの数字との比較で行けば話が変わってくるかもしれないが、本当に機能的モビリティが重要なのか、重要だとしてもその算出方法としてラン―パスレシオやランのYPCを使うのがいいのかどうか、疑念は尽きない。
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