サラリーキャップに詳しい人の発言でしばしば言われているのが「重要なのは保証額」という指摘だ。というのも特に大型契約はそうなのだが、表面的な金額がそのまま支払われるケースは決して多くない。例えばOsweiler"
https://overthecap.com/player/brock-osweiler/8"はTexansと契約した際に「4年72ミリオン」と言われていたが、実際には1年でクビとなり、結局手に入れたのは保証額37ミリオンだけだった(Texansが21ミリオン、Brownsが16ミリオン弱を負担)。紙面を飾る数字は実際と異なることが珍しくない。
個人的には巨額のデッドマネーが発生するSuhよりもTannehillの方がカット候補になるかと思っていたのだが、Dolphinsフロントはそう思わなかったようだ。むしろTannehillには契約見直しを要請し、今年のキャップヒットを減らしたという"
http://bleacherreport.com/articles/2764461"。その分だけ来年以降のキャップヒットが増えるわけで、つまりDolphinsはキャリアANY/A+が94しかないこのQBとまだ後数年はつきあうつもりらしい。
他のQBたちについても一気に動きが出ている。Breesは予想通りSaintsと再契約を結んだが、金額は2年50ミリオンで保証は27ミリオン"
http://www.espn.com/nfl/story/_/id/22745688/"。リーグトップに躍り出る水準ではないが、一方で晩年のElwayのようなディスカウントでもないという、微妙な水準の数字だった。ただSaintsは直前のドラフトが非常に上手くいった状態なので、現状このくらいの負担でも大丈夫と見たのかもしれない。
そしてBillsはMcCarronと契約した"
http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000921360/article/"。残り物をつかまされた印象もないことはないが、2年で「少なくとも10ミリオンと、インセンティブが6.5ミリオン」という記事を見る限り、年平均は5~8.25ミリオンだと想定される。QBの契約額としてみれば最大でもTrubiskyより1ミリオンほど高いだけで、要するにルーキー契約とほとんど変わらない。元々Billsは新人をそのまま先発させる計画だとされており、そのためにドラフト指名権をため込んでトレードアップに備えている状態。いつ控えになってもいいQBを用意するのであれば、FAで手配する選手としてはMcCarronで十分なのだろう。
いずれにせよ、前にも述べた"
https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56582853.html"ように「QBプロスペクトが余り気味」のオフシーズンになったのは確かだろう。事前の段階ではトレード候補としてFolesの名前も挙がっていたが、現時点では彼を取りに行く必要性に迫られているチームはない。また高額契約として年平均30ミリオンが出るとの見通しも外れた。供給が増えれば価格が下がるというマーケットメカニズムが当然のように働いたオフシーズンだったのだろう。
ちなみに「供給が増えた」とはいうものの、実のところ彼らのレベルは大したものではない。このオフシーズンにチームを移ったQBたちのキャリアRANY/Aを見れば、平均より明白に高いのはCousinsの+0.64くらい。後はTaylor(+0.00)、Keenum(-0.04)、Smith(-0.07)あたりがようやく並の存在で、Bradfordは-0.42、怪我持ちのBridgewaterは-0.67、そしてプレイ数自体が少ないMcCarronは-0.21といずれも平凡以下の選手だ。
実際、よく見ると今回移籍したQBたちのうち3年以上の契約を結んだのはCousinsと、トレード後に4年94ミリオンの契約をすることになっているSmithの2人だけ。残りは金額こそ幅があるが契約期間は1~2年に過ぎず、結果が出なければすぐに切ることができるようになっている。割安なルーキー契約の選手ならばともかく、そうでないQBには目先の結果を求める。効率のいい投資を求められるサラリーキャップ時代には、チームもそういう世知辛い戦略を取らざるを得ないのだろう。
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