HC問題

 HC人事が決まったというニュースが流れたほんの数時間後、McDanielsがColtsのHC職に就かずにPatriotsのOCにとどまるとのツイート"https://twitter.com/AdamSchefter/status/961035448490610689"が流れた。その昔、JetsのHCに就任したBelichickが1日で辞任したことがあったが、今回はそれより短時間で「サヨナラ」したことになる。
 こちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/22349872"によるとColtsはMcDanielsが契約に署名する前に新HC就任の会見を開くとツイートしてしまい、それがニュースとして流れたようだ。もともとMcDanielsは家族との関係からNew Englandにとどまる方がいいのではとためらっていたらしく、今回はHCになることよりも家庭の事情を優先したのだそうだ。
 詳細はともかく、最も衝撃を受けているのがColts関係者であるのは間違いないだろう。McDanielsがいいHCになるという保証はないが、このために2018シーズンに向けた彼らのチーム作りが他所より一歩遅れるのは事実。ここから改めてHCを人選し、契約を締結し、それから場合によってはコーチングスタッフを固めなおすことまで考えると、FA解禁までの限られた時間のうちにやらなければならないことは山積している。

 そうでなくてもColtsはかなり問題を抱えたフランチャイズだ。17シーズンの彼らのSRSはBrownsに次いで低い-10.1"https://www.pro-football-reference.com/years/2017/"。DVOAで見るとオフェンスは29位、ディフェンスは27位となっており、攻守とも苦戦していた様子が窺える"https://www.footballoutsiders.com/stats/teameff"。ヤード差で見れば堂々のリーグ最下位である。
 Coltsの問題は今になって始まったものではない。前GMのGrigsonがLuckをはじめとしたオフェンスに偏ったドラフトを実施(彼がいた5年間にドラフトした39選手のうち23人、3巡以上なら14人中10人がオフェンス)。加えて実績だけだと決して一流とは言えないLuckのルーキー契約が終わるやリーグトップクラスの高額契約を結び、他のポジションの強化がさらに困難になった。Luckが怪我で全休した17シーズンにそうした咎めが全て噴出した格好だ。
 今なおColtsのサラリー状況は酷い偏りを見せている。ポジション別"http://www.spotrac.com/nfl/indianapolis-colts/positional/"で見るとQBが4分の1近い極めて高い比率を占めている一方、ディフェンスは最もマシなポジションでもリーグ23位、酷いところだとリーグ31位とろくに資金を投入していない。一部高額サラリーの選手以外には全く金をつぎ込まず、穴を全てルーキー契約で埋めようとしているため、ロースター53人中41人をルーキー契約選手が占める(Brownsと並んでリーグ最多)という異常な状態になっている。
 もちろん彼らもこの状況を脱しようとしてはいる。18シーズンのキャップスペース77ミリオンは、49ers、Brownsに次ぐリーグ3番目の大きさ"https://overthecap.com/salary-cap-space"だ。4位に顔を出しているJetsも含め、17シーズンを犠牲にしてでもチーム状況の改善に取り組もうとしていることが分かる。空いたキャップスペースを上手く使い、18シーズン以降によりバランスの取れたチーム作りをするのが狙いだろう。
 ただそのために使えるドラフト資源は決して多くない。18年のドラフト権は7つのみで、補償ドラフトを手に入れられる見通しは現時点ではない"https://overthecap.com/projecting-2018-compensatory-picks/"。そうなると穴を補強するためには例えばトレードダウンを派手に実行してドラフト権を増やすか、あるいはFAをかなり使い倒す必要が出てくる。前GMが大量のドラフト権をため込んでいたBrownsほど状況に恵まれているわけではないだけに、GMの手腕が問われる展開だ。
 キャップスペースに余裕があると言っても、Luckの高額契約が常につきまとう問題は変わらない。キャップスペース全てを使い切ったとしても彼のキャップに占める比率が10%超に達するのは間違いなく、その分だけ他のポジションにはどうしても穴ができやすい。LuckがMVPクラスの活躍でもすればワンチャンはあるが、現時点ではそもそもいつ怪我から復帰するかもまだ見通せない"http://www.espn.com/blog/nflnation/post/_/id/268051"ようだ。
 並のQBに多額のサラリーを注ぎ込んだ状態では、他のポジションを強化するといっても限度がある。Peyton Manningのように独力でも試合に勝てるほど突出した才能の持ち主であれば他のポジションが弱体でも何とかしてくれるかもしれないが、Bradyですら自チームのディフェンスが崩壊したSuper Bowlで勝てなかったのを見ると、強豪相手のプレイオフで勝ち上がるのは難しそうだ。となるとColtsがやるべきなのは、Luckの契約見直しということになる。
 実は彼の契約"https://overthecap.com/player/andrew-luck/538"を見ると、6月以降なら彼をカットするのも選択肢として十分にあり得ることが分かる。デッドマネーを分割できれば9.4ミリオンのデッドマネーで15ミリオンを浮かせることが可能なのだ。もちろん実際にはカット以前にトレードを試みるのが手順だと思うが、キャップスペースが大きいだけにそういう大胆な対応も考えられなくはない。以前から述べているように今回のシーズンオフは割とQBが大量に市場に出回ってくるため、Luckの後継者探しにはちょうどいいタイミングとも言える。
 Luckを切って安いルーキーあるいはFAのQBを投入。余ったサラリーでDL、DBを強化し、ランオフェンス強化のためOLにも力を注げば、これはかつてSeahawksが、最近ではJaguarsなどが歩んだルートと同じだ。もちろん優勝できるようなチームを1年で作り上げるのは無理がある("http://www.footballperspective.com/the-super-bowl-participants-didnt-get-much-help-from-rookies-again/"参照)。実際には数年かけてドラフト権を増やし、有力ルーキー(特にDLとDB)をため込む必要があるだろう。
 チームのオーナーにLuckを切るという決断ができない場合は、契約のリストラを進めてキャップヒットを減らすという方法がある。しかし総額を変えないようにすると、これは単なる問題の先送りになってしまう。年平均24.594ミリオンという総額自体に問題があることを踏まえるなら、やはり手っ取り早いのはトレードなりカットなりでLuckと袂を分かつ方法だ。
 もしColtsフロントがこうした行動に出ることができるなら、現在のNFLで生じている「QBサラリーのおかしさ」とそれに伴うチーム力不均衡化の流れにも一石を投じることができるかもしれない。ドラフト全体1位だろうが何だろうが実績のないQBに高すぎる金は出さないというチーム側のメッセージが明確に伝わるわけで、そうなれば現在の「BradyよりStaffordやCarrが遥かに高い給料をもらう」という変な状況も多少は改善されるかもしれない。

 QBのサラリーを安く抑えて優勝を目指す戦術が成り立ってしまうのは、本来もらうべきでない高額サラリーをもらうQBが大量に発生しているせいだ。逆に言えば本来QBに対して払うべきサラリーを渋ったチームが優勝できてしまうわけで、結果として嫁さんの方が高額所得者というQBや、ルーキーだからという理由でサラリーを低い額に抑制されているQBのいるチームがより容易にトロフィーを手に入れる。この問題を解決したければ、実力に見合うサラリーをQBに支払う流れができればいい。
 でもまあ実際にそうなるのはかなり難しいだろう。市場が完全に合理的になることは現実にはあり得ない。必ず情報の不均衡が生じ、そして人間ならではの錯誤が生じる。Coltsがそういう大胆な策に出たとして、その場合Coltsは強くなることができるかもしれないが、他のチームが彼らと同じ間違いを繰り返す可能性を完全になくすことはできない。
 そして、既に報じられていることだが、このオフシーズンもQBと高額の契約を結ぶ動きが始まっている。そのあたりについてはまた次回。
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