Super Bowl LII

 カラージャージの呪いは終わったがMVPの呪いは残った。Super Bowl LIIはEaglesがPatriotsに41対33で勝利し、初のSuper Bowl制覇をなし遂げた。チャンピオンになったのは1960シーズン以来だから、トップに立つのは実に半世紀以上ぶりとなる。ちなみに両チームの合計得点74点は49ersとChargersが試合をしたときに次いで多い数字。ディフェンスがダメだったゲームと見るべきだろう。
 オフェンスの獲得ヤードはEaglesが538ヤード、Patriotsが613ヤード、合計は実に1151ヤード。どこのPro Bowlだよと言いたくなるくらい酷い数字である。ちなみに今まで合計獲得ヤードが最も多かったSuper BowlはRedskinsがBroncosを第2Qにたたきのめしたやつの929ヤード。そういえばあの時もレギュラーシーズンでほとんど先発経験のないQBが出ていたな。
 記録と言えばBradyが投げた505ヤードはSuper Bowl記録らしい。ちなみに彼はこのゲームによってプレイオフ通算のパス獲得ヤードが1万を超えた。またAFCCGで逆転勝利を収めたPatriotsが負けたことで、プレイオフできわどい勝利を得たチームは次の試合で負けるという展開が最後まで続いたことになる(他の例はTitansとVikings)。
 以前にも述べた通り、これでEaglesはサラリーキャップ上の賭けに勝ったことになる"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56584399.html"。もっとも勝ったからといって事態が好転するわけではないので、やはり来シーズンはキャップをどうするか苦労することは避けられない。まして優勝したとなればさらにサラリー上昇圧力が強まることもあり得るわけで、むしろGMにとってはこれからが本番かもしれない。
 もう一つ興味深いのは、これでFolesが先発候補として市場に出てくる可能性が高まったこと。ただでさえ市場で己の価値を試そうとするベテランQBが珍しく多い年なのに、これにFolesまで加わるとかなり買い手市場の様相が強まりそうだ。いよいよもってドラフトQBを即戦力ではなく将来性で選ぶ傾向が強まるかもしれない。
 とはいえQB欠乏に苦しんでいるチームのうち、Folesをほしがるところが実際にどのくらいあるかは分からない。放っておいても今シーズンはCousinsが市場に出てくることがほぼ決まっているし、ドラフト新人たちも有力候補が多いとされている。Folesを取るとしても新人育成を兼ねたベテランジャーニーマンレベルの扱いにとどまる可能性がある。
 何しろFolesのキャリアトータルのANY/A+は101、Comp%+は92だ。個人的には地雷物件の可能性が高そうに思える。Wentz(ANY/A+が99、Comp%+が96)も正直言ってそんなに変わらないのだが、私がEagles関係者なら母数が小さく数字がぶれる可能性の高いWentzを使う方がまだマシだと判断するだろう。Folesのキャップスペースが18シーズンに急増する"https://overthecap.com/player/nick-foles/773"のも、彼を切り捨てる一因になるかもしれない。
 2年11ミリオンの契約だったFolesは、当然Rams時代にもらっていた年13ミリオンくらいまでは目指したいと考えているだろう。だが過去に先発として失敗しているため、QB不足のチームといえどもそうそう高値を出すとは思えない。20ミリオンを超えるような一流レベルのサラリーにありつくのは難しいんじゃなかろうか。Glennonが手に入れた15ミリオンにたどり着くぐらいならあるかもしれないが。

 一方Patriotsは開幕戦に次ぐ大量失点でシーズンを終えた。途中から好転しているように見えたディフェンス問題が最後に火を噴いた格好だ。「曲がるが折れない」といえば聞こえはいいが、このゲームでもサックゼロにとどまるなど十分にパスラッシュをかけられないディフェンスが続いていた様子が窺える。
 Patriotsのディフェンスを支えていたのは、ターンオーバーが少ないオフェンスと、特にキッキングで突出して有能なスペシャルチームの活躍によって、相手を深いところに押し込める戦略である。しかしこのゲームではEaglesに平均24.5ヤードのキックオフリターンを許している。レギュラーシーズンの平均リターンは18.9ヤードだったので、ここの優位が失われたのは間違いない。
 一方でPatriots側のリターンは平均14.7ヤードにとどまった。ターンオーバーは双方1つずつあり、フィールドポジションの争いでPatriotsが優位に立てなかったことが分かる。そうなると「曲がる」ディフェンスはすぐに「折れる」ディエンスとなってしまう。このゲームにおいてPatriotsは1点失うのに13.1ヤード進まれていた。レギュラーシーズン中の数字(19.8ヤード)には遠く及ばず、リーグ平均(15.4ヤード)すら下回った。
 Eaglesのディフェンスはかなりうまく攻略されてしまったと言っていいだろう。喪失ヤードだけでなく、シーズン中は平均20点未満だった失点が33点まで積み上がってしまったのを見ても明らかだ。ただPatriotsが自らの強みだと思っていたポジション争いで、むしろ彼らより優位に立ったことがEaglesにとってはプラスになったのだろう。Patriotsディフェンスの弱点を突きやすい状況を作り上げたスペシャルチームこそEagles勝利の立役者とも言える。
 とはいえこうした問題はPatriotsから見ると想定内のリスクだったとも考えられる。まずスペシャルチームの成績はブレが大きい。シーズン単位でもそうなのだから、まして1試合単位で負ける可能性は十分にある。一方ディフェンスのパスラッシュ欠如はオフシーズンのチーム作りの失敗に由来するのだが、それが失敗となったのは怪我人や引退、トレード相手が使えなかったことなどいくつもの要因が重なった結果である。
 結果論で言うならSheardやLongといったDEたちを残しておいた方が良かったのだろう。だが彼らの放出は常にキャップを考えながら長期的なチーム作りをやるPatriotsでは避けて通れなかった道だとも言える。もし彼らを残そうとしていれば、今のPatriotsはおそらくEaglesと同じく来シーズンのキャップ問題に頭を抱えていた可能性がある。短期決戦ではなく長期にわたって安定した成績を残すことを重視した結果としてのリスクが出てきたのだとすれば、それは受け入れざるを得ない。
 前にも書いた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56590237.html"通り、これからはPatriotsのように優秀なQBを使って長期的に安定した成績を残すことを重視するチームと、Eaglesのように短期決戦でサラリーをつぎ込み限られた期間のうちにチャンピオンを狙うチームとに分かれていくのではなかろうか。Eaglesは幸い成功したが、他のチームが全て同様に成功できるとは限らない。一方で長期安定志向のチームはどうしても弱点が生じるリスクを抱えがちになる。絶対確実な「優勝への道」がない中で、各チームがどのように試行錯誤するのかを見るのも楽しいかもしれない。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック