その分を取り返すかのように今シーズンのワイルドカードでは接戦が増え、きちんとアップセットも起きた。つまらなさ指数は-11、+5、+6、+7と、全て1ドライブ差以下。何よりTitansがChiefsを破ったのは、ANY/AでSmith(8.0)がMariota(5.8)を上回っていただけに予想外だった。そしてこの意外な結果をもたらしたのは、昨年のSuper Bowlと同じ「質よりも量」のゲームプラン"
https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56220312.html"と言える。
前半はChiefsが質でも量でも押していた。プレイ回数はTitans25に対してChiefsが33。Smithのパスは23回中19回成功し、231ヤードを獲得するなど絶好調。18点のリードを奪うのも当然だ。ところが後半になるとChiefsのプレイ回数は激減。代わってTitansがプレイ回数を増やし、結果はTitans39に対してChiefs20とほぼ倍の差がついた。
後半最初のドライブでTitansが15回のプレイ、8分半を使った挙句にMariotaからMariotaへのTDパスという幸運に恵まれたこと、また4Qにも11回のプレイで5分強を費やし80ヤードを進んだことが、Chiefsのオフェンス機会を奪った格好だ。しかも18点差を追う展開ながら、Chiefsの弱点であるランディフェンスをTitansが強力ランオフェンスで攻めることを重視(後半39プレイの内ランは半分強の20回)している。ハーフタイムのアジャストメントが上手く行ったということだろう。
もちろんツキもあった。というかむしろツキの影響の方がゲームプランより大きかったと考えてもおかしくない。何しろプレイオフのゲームでパスTDとレシーブTDの両方を記録した選手は、データを遡れる1950年以降でこのゲームのMariotaしかいないのだ。あのプレイは極めて珍しいものだったわけで、それだけの幸運に恵まれても結果はギリギリだった。この試合はTitansのツキというかChiefsの不運によって決まったと解釈できる。
一方、同じアップセットでもFalcons @ Ramsはパッサーの能力差がそのまま結果につながった。もちろんターンオーバーの影響もあったと見られるが、ターンオーバーのあった前半は3点差しかつかなかった。一方的な展開になったのは後半であり、その後半のANY/Aを見るとRyanが10.9だったのに対しGoffは4.6に低迷。結果として前者が13点取ったのに対し、後者は3点しか取れなかった。
2日目のゲームはいずれも順当な結果に終わった。Bills @ Jaguarsは点差を見る限りではBillsのディフェンスがかなり頑張ったと言える。何しろJaguarsのパス効率(NY/Aで3.0)はラン(YPCが4.6)より圧倒的に低いわけで、それだけBillsのパスディフェンスが効果的だったと言えるだろう。まあ正確にはBortlesがダメだっただけで、内容はディフェンス合戦というより拙攻合戦というべきだったかもしれないが。
Billsにとって残念だったのは彼ら自身のオフェンスの方がより拙い攻撃を繰り返したこと。ただしこちらはJaguarsのリーグ最強ディフェンスを考えれば想定通りの結果と言える。オフェンスで74回ものプレイを積み重ねても3点しか取れなかったのは、NY/Aで3.2、YPCで4.1という効率の悪さが原因だ。時には質の低さを量でカバーできる試合もあるが、通常はこのゲームのように質の方がモノを言う。
もう一つのPanthers @ Saintsは今週の4試合の中で最もまともにパスオフェンスが機能したゲームだった。負けたNewtonもANY/Aで7.9を記録したが、それよりも見事な数字を叩き出したのがBrees(10.7)。1ゲーム単位だとANY/Aが10を超えるケースは珍しいというほどでもないが、それでも誇るに足る成績であることは確かだ。結局4試合のうちANY/Aが低かったのに勝ったのはTitansだけだった。
Falcons @ Ramsはディフェンス(特にLB)重視のRamsに対し、QBとWR中心にオフェンス重視のFalconsと対照的な組み合わせになっている。FalconsのディフェンスはDL頼りだが、Ramsがオフェンスの中でも多額の投資を行っているWRを生かしたパスオフェンスで効果的に進めなかったことが勝敗を分けたのかもしれない。
Bills @ Jaguarsは投資額自体が少ないBillsとディフェンスにリーグ2番目の高額を投じているJaguarsの試合。リーグ32位のサラリーであるBillsディフェンスがよく相手を10点に抑えたと感心すべきなのか、このディフェンス相手に10点しか取れないBortlesに呆れるべきなのか。一方Billsのオフェンスだが、DLとSecondaryの強力なJaguars相手だとTaylorの不振も仕方ないかもしれない。
最後にオフェンス、ディフェンスともサラリー額なら上位のPanthersと、圧倒的にオフェンス重視(特にTEとOL)のSaintsとのゲームだが、高給取りの多いPanthersのフロント7がSaintsのパスオフェンスを止められなかったことが敗因の一つか。シュートアウトになるとWRへの投資が少ないPanthersとしては対処が難しいという面もあったかもしれない。
ではディヴィジョナルで登場する4チームはどのポジションにサラリーをつぎ込んでいるのだろう。まずSteelersだがオフェンスがリーグ1位で、RBやOLに多額のサラリーを投じている。逆にディフェンスは25位と低く、突出して高額なユニットは存在しない。その割に失点でリーグ7位といい位置につけているあたり、投資効率はいいチームだ。
Vikingsはオフェンス15位、ディフェンス23位とどちらも強くない。QBのサラリーは7位だが、これはIR入り選手も含め4人も抱えているためであり、一方のディフェンスは11位のDL、7位のSecondaryとパス対応に特化した布陣だ。でもこのサラリーでディフェンスはヤードも失点もリーグトップなのだから、やはり投資効率はいいと言える。
Patriotsはオフェンス11位、ディフェンス18位といずれも地味な順位。オフェンスではRBやTE、ディフェンスではSecondaryに資金を投じている一方、攻守ともラインは下位に沈んでいる。安いQBを生かした効率のいいオフェンスと、ヤード(29位)と失点(5位)の間に極端な差がある「曲がるが折れない」ディフェンスを作り上げる上では、こうした資金配分がいいのかもしれない。
最後はEagles。こちらはオフェンスが9位に対してディフェンスは16位だ。Patriotsとは対照的にOL(6位)とDL(5位)が一番の強みで、後はオフェンスのスキルポジションが10~12位。ルーキー契約の安いQBを強力ラインが支えるという恰好だろうか。残念ながらそのQBがシーズンエンドになり、控えQBに頼らざるを得ないところが厳しい。
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