NFL week16

 NFLはラス前、プレイオフ出場確定チームが一気に増加した。NFCは予想通り、昨シーズン出場していないチームが6枠のうち5つを占めることが確定した。またAFCでは今週の試合の結果、Texansに続いてDolphinsとRaidersのプレイオフ脱落が決定。これでプレイオフ全体の3分の2が昨シーズンと違うチームになることが決まった。波乱の1年だったと言えるだろう。
 一方でプレイオフからの脱落決定も続出。NFCでは残った1つの椅子を争うのはFalconsとSeahawksのみ、AFCはワイルドカードの2枠をRavens、Titans、Chargers、Billsで取り合うことになる。で、問題となるのが最終週のフレキシブルスケジュール。両チームがプレイオフ争いに絡んでいるカードは、困ったことにPanthers @ Falcons、Jaguars @ Titansしかない。そしてどちらのゲームも他のゲームの結果次第で無意味になる可能性がある。
 結果、NFLはナイトゲームの開催を諦めた"https://twitter.com/NFLprguy/status/945146454397673472"。プレイオフがかかっているチームはできるだけ同時に試合をするようにして、時間の前後による不公平さがでないようにするにはこの方法しかなかったのだろう。個人的にはいっそRedskins @ GiantsをナイトゲームにしてCousinとEliが今のユニフォームで行う最後の試合(かもしれない)と盛り上げる手もあったかなと思うが、まあ無理だろうな。
 来週にかけてもう1つ興味深いのはこちら"https://twitter.com/billbarnwell/status/945064760671916032"。RavensとChargersが勝ち、Titansが負けると、Billsはプレイオフ最後の椅子をタイブレーカーで失うことになる。しかも失う相手がTaylorをベンチ送りにしてPetermanを先発させたあのChargersだ。もしそうなったら、これはかなり痛烈な皮肉となる。もちろんPetermanでなくTaylorが先発していれば勝てたかというとその確率は低いと思うが、ほぼ確実な負けと見られていたPetermanよりはずっと可能性があったと思う。あの判断をBillsファンはどう思っているのだろうか。
 あと、一部で波紋を呼んでいるのがこちら"https://twitter.com/AdamSchefter/status/944890937679011840"。PackersがIRのルールに違反したからRodgersをリリースすべきだと、一部のチームが文句を言っているらしい。もしこの指摘の通りだとしたらBrownsがドラフト前にウェーバーでRodgersを手に入れAFCのパワーバランスが大きく崩れる、かもしれない。実際にそうなる可能性はほぼゼロだと思う"https://www.acmepackingcompany.com/2017/12/24/16816110/"が、なかなか興味深い話だ。

 NFLにとって全米中継がなくなるのはもう一つの問題につながる。即ち視聴率の低下だ。昨シーズンは大統領選の影響だなどと言われていたのだが、今シーズンになっても状況は変わらず。第15週時点までに全米で放映された今シーズン96ゲームにおける平均の視聴者数は15.1ミリオンと、昨年第15週までの95ゲーム平均(16.6ミリオン)を下回っている"https://nypost.com/2017/12/20/nfls-biggest-audience-of-season-cant-save-sagging-ratings/"。
 大統領選が原因でないのなら国歌斉唱問題が関係している、という指摘もあるのだが、それだけが理由と見なすには無理がある。そもそも試合前の短時間の国歌斉唱部分だけを問題視し、3時間を超える試合全体の視聴率から目を逸らすのは賢明な言い分ではないだろう。それを示す証拠の1つがこちら"http://www.chicagonow.com/patriotic-dissenter/2017/12/nfl-ratings-keep-tanking-for-business-not-political-reasons/"。最初に出てくるグラフを見れば分かるのだが、視聴率が下がっているのは共和党支持の多いRed statesだけでなく、民主党支持が多いBlue statesも同じだ。
 ある教授の指摘によると、視聴率問題には3つの背景がある。まずフットボールゲームの多さ。大半のファンにとってはNFLもカレッジも同じフットボールゲームであり、様々な試合を見る機会が増えれば増えるほど視聴者の見るゲームがばらけてしまう。次が伝統的なテレビ視聴者の減少であり、そして最後はテレビチャンネルそのものの増加による関心の分散だ。要するに供給が増える一方で需要は必ずしも増加していない、という単純な需給構造こそが視聴率低下の要因という説明だ。
 中でもテレビそのものの視聴が低下傾向にあるという問題は、実は深刻だ。何しろその背景には人口問題とでもいうべきものが横たわっている、と指摘するのはForbesだ"https://www.forbes.com/sites/adamhartung/2017/09/29/the-nfl-has-a-bigger-problem-than-kneeling-employees-demographics-and-trends/"。テレビでスポーツを見る人々の高齢化が、アメリカでもどんどん進展しているのだ。
 NFLだけではない。こちら"http://www.rbr.com/magna-the-aging-audience-for-live-sports/"に解説されている通り、2000年時点で視聴者の平均年齢51歳とかなり高齢だったMLBは、2016年には57歳まで上昇しているし、NHLは33歳から49歳へと急激に老けた。ボクシングは45歳から49歳だ。NFLはNCAAのバスケットボール及びフットボール、そしてテニス中継と同じく、2016年時点で平均50歳となっている。スポーツ中継が年寄り向け番組になりつつあることが分かる。
 もちろん全てのスポーツがそうなっているわけではない。NBAは40歳が42歳、サッカーは36歳が39歳とまだ比較的若々しい状態を維持している。だが若者がなかなかスポーツ中継の視聴者として新規に参加してこないため、じわじわと高齢化が進む傾向は同じ。Forbesの記事では若者たちがスポーツ観戦に際して「単に座ってゲーム全体を見ることをしない」と指摘。彼らは同時にいくつものことをしながら、経過よりも結果を知りたがると書いている。
 この問題はSuper Bowlの視聴率や視聴者数"https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Super_Bowl_TV_ratings"にも見受けられる。平均視聴者数がピークを付けたのは第49回目のSuper Bowlだったのだが、それから2年連続で視聴者数は低下している。2年連続の減少は1990年代前半以来の出来事だ。もちろんこれが長期トレンドになるかどうかはまだ分からないが、不安を抱かせるデータであるのは確かだろう。
 そして減少が起きているのは視聴者数だけでなく、球場を訪れる観客数も同じ。第16週までに記録した観客動員数"https://www.pro-football-reference.com/years/2017/attendance.htm"は延べ1623万人、昨シーズンの同時期までの動員数に比べて約3%の落ち込みだ。もちろんこちらもChargersの移転に伴う影響などがあるので一概には決めつけられないが、厳しい数値に間違いはない。
 しかも問題は表に出てくる数字だけではない。NFLの動員数はチケット販売数のことなのだが、ほとんどがシーズンチケットのため購入しても実際にはスタジアムにやってこない人もいる。その状況を指摘したのがこちら"https://t.co/Q7Uny37ZwE"。試合中のスタジアムの写真を集めたものだが、空席が目立つスタジアムが多い。Clevelandなど空席が多くても仕方ないチームもあるが、決して望ましい状況とは言えまい。
 そもそもNFLの視聴者平均年齢である50歳とは、1960年代生まれに相当する。そして60年代はまさにNFLがMLBを追い抜き、米国で最も人気のあるスポーツに躍り出た時だ"https://www.wsj.com/articles/popularity-contest-baseball-vs-football-1428679449"。NFLの人気と一緒に人生を歩んできた人々であり、ネットがなくテレビが娯楽の王様だった時代に多感な時期を過ごした人々。それが今でもNFLの視聴率を支える層と重なっているのだろう。
スポンサーサイト



コメント

No title

koy*man*32*29
いつも拝読するばかりですが・・・
今回は珍説を一つご紹介します。

若年層のフットボール視聴減少の一因として、
マデン(お馴染みのゲーム)がリアル且つ面白くなりすぎて、
実試合のライバルになっているのでは?と言う説であります。
最初聞いた時は笑っちゃいましたが、知人の20代アメリカ人が
友人同士集まって大盛り上がりしてるのを見ると、もしかしすると??という気もしてきました。

もともとアメリカ人のスポーツ視聴方は、日本より友人同士などで
わいわい言いながら見るパターンが多い様に思います。
その時にゲーム(マデン)がここまでリアルになってくると
そろそろ実試合観戦と同じジャンルとして、
パーティー娯楽としてどっちが上か?
と言う競合関係になりつつあるのかもしれません。
先頃のNBCでのマデン画角での放送の賛否とも併せて
考えさせられるものがありますね。

No title

desaixjp
面白いご指摘、ありがとうございます。確かにそういう調査結果があるようですね。
https://www.limelight.com/resources/white-paper/state-of-online-video-2017/
Figure 18.を見ると18~25歳では通常のスポーツよりeSportsの方が見る時間が長いという結果が出ています。
なるほど、これではTVスポーツ視聴者の高齢化が進むのも仕方ないですね。
ここはいっそNFLがEA SPORTSを買収してしまうのも手かもしれません。

ちなみに私が一番好きなマデン動画はこれです
https://www.youtube.com/watch?v=lHDkkcZZWFc

No title

昔のロゴで出ています
--すみません、前コメントに名前を入れ忘れました--
マデン動画ネタの続きですが、仰るように買収とまで
行かなくても、コラボによる新商売はいろいろ出て
くるでしょうね。
例えばSuper Bowl XLIXの直後に
あのゴール前のシーンを、疲労や試合中の怪我に合わせて
選手のパラメーターまで修正した状態の
ゲームデータとしてダウンロード配信したら、
世界中にMonday morning Russell Wilsonが
出現したでしょう。
もちろんわたくしも欲しいです。
アメリカのことですから、新たに、特定の試合の
著作権(再現権)なんてビジネスが発生したりして・・・
*マデン動画、拝見しました。熱いですね~

No title

desaixjp
eSportsを使ってTVの放映権並みの収入を得られるようなマネタイズができるなら、NFLにとってはありがたい話なんでしょう。
しかしそのためにはゲームそのものの魅力がないといけません。
一部で指摘されているように、3時間にわたる長時間のスポーツ観戦というスタイル自体が若い観客のNFL離れを引き起こしているのだとしたら、単にマデンとの連携を強めるだけでなくもっと根本的な対策を取る必要があるのかもしれません。
非公開コメント

トラックバック