「計画」の行方

 BrownsがGMのSashi Brownをシーズン途中に解雇"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000889168/article/"。代わってGMに選ばれたのは2013~16にChiefsでGMをやっていたJohn Dorsey"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000889412/article/"だった。これで1999年の新チーム発足後、彼らのGMは19年間で9人に達することとなった"https://www.pro-football-reference.com/teams/cle/executives.htm"。
 同期間のPatriots"https://www.pro-football-reference.com/teams/nwe/executives.htm"を見るとGMは2人(Pioliを事実上のGMと見なしても3人)、Steelers"https://www.pro-football-reference.com/teams/pit/executives.htm"も2人、Packers"https://www.pro-football-reference.com/teams/gnb/executives.htm"は3人で、Ravens"https://www.pro-football-reference.com/teams/rav/executives.htm"は1人だ。フロントの継続性に欠けるという点でBrownsのやり方はまずいもののように見える。
 だがBrownを解雇した一方でDePodestaなどは残っているらしいので、彼らがマネーボール自体を諦めたとまでは言えない。またDorseyがChiefsでGMをやっていた期間はReidの指揮下でチームが勝ち越しを続けていた時期でもあり、新GMの実績も問題ないようにも見える。ただしGMの実力を4年で測るのが無理であることはこれまでも指摘している通り。表面的な成績だけでなく、もっと中身をきちんと見る必要がある。
 この4年間にDorseyがドラフトで指名した選手は32人。1年平均だと8人となり、極めて平均的な数字だ。気になるのはコストパフォーマンスのいい2巡が少なく(2人)、当たりがほとんど期待できない下位指名が多いこと(3日目指名が21人)。ただしその限られたドラフト資源を使い14人にリーグで10試合以上の先発を達成させた点は評価に値するかもしれない。タレントの評価能力は高いとの指摘もよく見かける。
 同期間にチーフスが関わったトレードは11回。うちトレードアップは1回でトレードダウンは2回とそれほど多くない。基本は選手同士、あるいは選手とドラフト権とのトレードが中心だ。同時期のPatriotsが21回もトレードを行い(うちトレードダウンが5回)、またSashi Brownが2年弱で15回トレードをした(トレードダウンはやはり5回)のと比べると、オーソドックスな選手集めを行うGMだと考えられる。
 補償ドラフト権をにらんだ契約をしたのは2014年と16年。結果的に合わせて8つの補償ドラフトを得ているので、これはそう悪くない実績に思える。一方こちら"https://kckingdom.com/2017/02/10/kansas-city-chiefs-30-best-free-agent-signings-of-all-time/2/"で評価されているFA獲得選手30人のうち、Dorseyが取ったのは4人。多いかどうかと言われると判断に困る数字だ。
 Spotracによると彼がChiefsを引き継ぐ前の時点でキャップスペースはマイナス19ミリオンに突入する見通しだったが、16年にチームを去る時にはプラス4ミリオンまで状況を改善させている。一方でデッドマネーは引き継ぎ前の1.4ミリオンが14ミリオンまで急増。そのためもあってか、Dorseyはキャップマネジメントが下手だと言われている"http://chiefswire.usatoday.com/2017/06/23/roundup-of-all-theories-behind-chiefs-release-of-john-dorsey/"。
 全体としてBrownという有能かもしれないがエキセントリックなGMから、一般的な手法をとる普通のGMへとシフトした印象になる。幸いなことにBrownによってキャップスペースには大幅な余裕があり、かつドラフト指名権は山のように溜まっている。今ならよほど下手なGMがやらない限り、他チームより有利な立場から仕事を始めることができそうだ。
 NFLは未経験だが弁護士で交渉のうまいBrownにチーム作りの土台となる資産作りを任せ、資産(キャップスペースとドラフト権)がたまったらスカウト経験が長く選手を見る目を鍛えてきたDorseyに仕事を引き継ぐというこのやり方は、実はかなりいい策に見える。シーズン途中の解雇も、GiantsのGM解雇によってDorseyがかっさらわれるリスクを踏まえての対応"https://twitter.com/billbarnwell/status/938799520107786241"だとすれば、むしろ上手い動きだったといえる。
 第一報でBrown解雇の情報が流れた時には、Brownsファンも含めて批判的な声が多かった("https://www.dawgsbynature.com/2017/12/7/16746312/"のコメント欄など)。だが新GMの手配まで含めて考えれば、むしろHaslamは巧妙に立ち回ったと解釈することもできる。HCの継続を約束したのも、GMこそ変わるがチームの継続性は維持したいというオーナー側の意図の表れだとすれば、一概に批判だけできるものでもない。

 だが懸念はある。Dorseyは過去の実績を見る限りその手法においては普通のGMに見え、だとするとドラフト資源やキャップ資源が残っている間はともかく、その後は平凡なチーム作りに戻る可能性がある。タレント評価の良しあしについても、実のところたった4年で判断できるものではない(300年以上が必要だとの指摘もある"https://twitter.com/bburkeESPN/status/938904896232882176")。キャップマネジメントが本当に下手だとしたら、せっかくBrownsが積み上げた資産が無駄に食いつぶされる恐れもある"https://twitter.com/rwelton83/status/938980032894119936"。
 また「計画」継続性の象徴となっているHCだが、実は彼こそ2年で1勝しかできない真の原因である可能性が存在する。少なくとも今シーズンのBrownsは実力を大きく下回る勝率しか残していない"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56540228.html"。それが単なる不運ならまだいいのだが、そうではなくHCの無能が原因だとすれば不安はさらに膨らむ。
 何より問題なのは、マネーボールという彼らの「計画」が本当に続くかどうかだ。NFLにおけるオーソドックスなGMがマネーボール的な考えに親しんでいるとは思えない。Dorseyのようにフットボールの世界にどっぷり浸ってきた人物がGMに就任することで昔ながらのやり方に戻ってしまい、変えずに続けるべきだった「計画に変更が付け加えられる」"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56538602.html"としたら、その先に待っているのは再びのドアマットへの道だ。
 もちろん短期的にはBrownが溜め込んだ資産を利用してチームを強くすることはできるだろう。でもそれはPatriotsやSteelers、Packers、Ravensのような長期にわたって一定の強さを保つチームになる道ではない。DorseyがこうしたチームのGMたちと並ぶだけの優秀な人材であるかどうかは、むしろこれから試される。そして彼がそういう人材でなかった場合、Haslamは巧妙に立ち回ったのではなく、単に堪え性がなかっただけと判断できる。その場合、Brownsファンの皆様におかれましてはご愁傷様。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック