NFL week13

 QBが先発をクビになったと思ったらHCとGMがクビになっていた。何を以下略。

 GiantsがHCのMcAdooとGMのReeseをまとめて解雇した"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000887801/article/"。Eliをベンチ送りとし、連続先発記録を途切れさせた直後である。ファンの反発のすさまじさにオーナーがびびったのだろう、と思わせるくらい急な動き。もちろんリーグ最悪ディフェンスを誇るRaiders相手に17点しか取れないGenoではダメなのは一目瞭然だが、Webbを試す暇も与えずにクビってのはかなりな話だ。
 McAdooの仕事は2年持たなかった。一方Reeseは2007年からGMをやっているので、こちらはかなり長持ちしたと言える。こちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/page/Barnwellx171009/"ではReeseの2008~13年ドラフトが「大惨事」だったと指摘。指名した選手のほとんどがチームに残っていないという過去の実績を踏まえるなら、Reeseをクビにしたのは仕方ないかもしれない。だがMcAdooを2年弱でクビにしたのは果たして適切な判断だったのだろうか。
 NFLにおけるコーチの採用が「危機的状況にある」と指摘しているのがこちら"https://www.theringer.com/nfl/2017/11/21/16684534/"。実は昨シーズン、GiantsがMcAdooをHCとして雇っていなければEaglesが彼に手を出していたという話があるそうだ"https://twitter.com/DanGrazianoESPN/status/930182451024056320"。その時点で彼がNFLでプレイコールを担当したのはたった2年しかなかったにもかかわらず、である。
 GiantsやEaglesだけではない。リーグ全体でも昔に比べて短期間でめまぐるしくHCを変えている。49ersは2015シーズン、16シーズンと2年連続でHCを1年でクビにしているが、これはリーグ初の出来事だそうだ。Belichickが2000年にPatriotsのHCに就任して以来、リーグ全体で雇われたHCの数は延べ146人に達する。各チームが使い捨てのように次々とコーチを取り換えていった結果、選ばれるコーチの水準が低下し、それが問題をむしろ悪化させているというのがこの記事の主張だ。
 忍耐力の欠如がこの問題の背景にある。本来ならチームは「計画を見いだしそれにこだわる」必要がある。成功しているチームは確かにそれを実践している。だが失敗するチームは計画が最初にトラブった段階でそれを放棄し、毎年のように変更を付け加える。そうした過去の経緯の上にできあがったチームは今勝つのか、将来のためにチーム作りをしているのかが曖昧となり、それを引き継ぐことになったHCが失敗すれば彼が犠牲のヤギとされる。そうして次々とHC候補を無駄に消費した結果、HC候補自体が少なくなっていく。
 コーチ側もこのトレンドに対して自衛策を打つ。具体的にはリスク回避に走る。これはコーチに限ったことではなく誰であってもしかりで、例えばKaepernickは彼に対する批判が強まっていた昨シーズン中、インターセプトを回避しようとするあまりにサックが増えていたという指摘がある"http://www.footballperspective.com/was-colin-kaepernicks-style-of-play-impacted-by-his-political-stance/"。HCが自衛に走ればプレイコールは保守的になり、勝つ確率を増やすより批判される確率を下げる方に意識が向く。
 Brian Burkeはプロスペクト理論("https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56435187.html"参照)を元に、HCの解雇とチーム成績の改善は必ずしも因果関係のあるものではないと指摘している"http://archive.advancedfootballanalytics.com/2009/02/fighter-pilots-and-firing-coaches.html"。悪い成績のチームが翌年改善するのは、単に平均への回帰である可能性が高いからであり、コーチの解任が問題解決につながるとは限らない。
 以前から指摘しているが、HCやGMの評価はQBの評価と比べて極めて難しい"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55876538.html"。1990年代のBrownsのように、5年間の実績を見ても正しい判断を下せないケースがある。まして1年や2年でHCの評価を下すのは不可能と言っていいだろう。にもかかわらず堪え性のないオーナーやファンの圧力がHCのめまぐるしい交代をもたらしているのだとすれば、これは誰にとっても不幸というべき事態だろう。McAdooがいいコーチかどうかは分からないが、Giantsの選択が良かった可能性は決して高くない。

 すぐクビになりがちなHCに比べ、逆になかなかクビを切られないのがQBである。特にドラフト上位指名QBは凡庸であることが分かっても容易に先発を外されない。またEliのように、彼自身の実力よりチームの力のおかげであっても優勝の実績があるQBはなかなかクビにならない。例えばGiantsのQBがEliでなくCutlerだったらどうか。GenoはともかくWebbと交代させることに対するファンの不満はほとんどなかっただろう。彼らの生涯ANY/A+はほぼ同水準(Eliが101、Cutlerは99)なのだが。
 こうした反応はプロスペクト理論の保有効果や後光効果で説明がつく。つまりチームもファンも非合理な選択をしている点はHC解雇と同じだが、その方向性が逆を向いているわけだ。本当ならデータを取りやすいQBの方が少ない試合数でその実力を評価しやすいはずなのに、別の認知バイアスのために彼らは守られ、逆にコーチはクビを切られる。いっそHCについてもドラフト制を導入した方が、チームもファンも今よりコーチを大切に扱うようになるかもしれない。

 なおゲームの方は第13週が終了し、全チームともシーズンの4分の3を終えた。既にプレイオフから脱落したところは出てきているが、まだ出場を決めたチームはない。といっても1位と2位のゲーム差が4ある地区(AFC東とNFC東及び北)はほどなくして決まることだろう。むしろこの期に及んで3チームが並んだAFC西の方が興味深いところ。
 NFLでは序盤に快走しながら途中で急ブレーキがかかるチームがよく見られる。今シーズンは開幕5連勝の後に1勝6敗で勝率5割に戻ったChiefsが代表例だが、昨シーズンもVikingsが5連勝でスタートしながら最終的には8勝8敗に、その前のシーズンにはFalconsがやはり5連勝で始めて8勝8敗で終わった。
 今シーズンで特徴的なのは、同地区で4連敗から始めながら急速に成績を戻しているChargersがいる点だろう。昨シーズン4連敗でスタートしたのはBrownsだけ(最終成績1勝15敗)、その前はLionsだけ(同7勝9敗)だったのと比べると、今シーズンはなかなかに対照的な組み合わせが生まれたと言える。第13週が終わった時点でChargersとChiefsは勝率で並んでおり、シーズン序盤からは予想し得ないような光景となっている。
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