ベンチ送り

 プレイオフ争い真っ最中のチームがエースQBをクビにして5巡指名の新人に差し替えた"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000877668/article/"。確かにこのエース、今シーズンの成績はいいとは言えない。10週時点でANY/Aは5.71でリーグ23位。チームのpass expected pointsは+19.4でリーグ平均(+30.1)より低い。だが今年だけでなく先発キャリア全体で見ればANY/A+は102と平均より少し上。彼を見捨ててドラフト3日目新人に賭ける行為については批判の声も多い"https://www.buffalorumblings.com/2017/11/15/16655914/"。
 一方でBillsファンの間ではこの対応を支持する声が多いのも確かだ。気持ちは分からなくもない。リーグ平均レベルのQBってのは一番困った存在で、彼に頼って勝てるほど信頼はできないが、でも我慢できずに交代させると3分の2の確率でレベルダウンに見舞われる。彼をキープしながらディフェンスその他を向上させて勝てるチームにするという手はあるんだが、Billsの2015シーズン以降の総失点はリーグで17番手とこれまた平凡。攻守どちらも決め手に欠けている状態だ。
 でも選択肢としてはリスクが高いのも確か。以前紹介したが、2002年以降にドラフトされたQBたちを見ると1巡上位以外は外れの方が多い"https://overthecap.com/thoughts-cleveland-browns/"。特に5巡以下は9割以上の確率でダメQBに当たっており、今回代わりに出場させるQBが普通である確率は1割未満しかないことになる。DVOAで見るとBillsの今後のスケジュールはかなり楽な部類"http://www.footballoutsiders.com/dvoa-ratings/2017/week-10-dvoa-ratings"となっており、プレイオフの可能性は十分ある。この局面でハイリスクな決断をする必要があるのかは疑問だ。
 今後のスケジュールを見ると、新人を出場させてもよさそうなゲームはいくつかある。14週のColts戦や、その後に2試合あるDolphins戦だ。どちらもスタッツ系サイトで極めて低い評価となっているチームであり、このあたりが相手なら星を落とさず新人の実力を試すことができる可能性が高い。でもChargersは勝率に比べて実力は高いと言われているところだし、その後にはChiefsとPatriotsが控えている。相手を考えるとこの時期に先発を交代するのは最善の選択とは思えない。もちろんプレイオフを諦めたなら話は別だが、チームもファンも諦めている様子は見当たらない。
 プレイオフに滑り込むだけでは意味がない、勝てるQBにする必要があり、それができないならいっそtankingをした方がましだと考えているのなら、困った平均QBを切り捨ててギャンブルに出るのもいいだろう。でもBillsは21世紀に入って一度もプレイオフに出ていない唯一のチームである。そのチームがこのチャンスにおいて敢えてハイリスクな行動を取る必然性が、私には理解できない。

 Petermanに交代するのがハイリスクだという根拠は、彼のドラフト巡以外にもある。プレシーズンの成績"https://www.foxsports.com/nfl/nathan-peterman-player-stats?seasonType=3"だ。わけても問題なのが54.4%しかないパス成功率である。もちろん母数が小さいのであまり重視しすぎるのはいけないんだが、それでもこの数字はとても輝かしいものには見えない。
 QBの将来成績を予想するうえで最も役に立つ指標がパス成功率であることは以前にも述べた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/54443205.html"。リーグ全体でオフェンスのウエストコースト化が進んでいる"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/53897314.html"のも、こうした事実が背景にあると考えるべきだろう。
 実は同じ論拠から、一部で「躍進」したと言われている"http://www.footballperspective.com/the-three-class-of-2016-quarterbacks-are-having-the-best-sophomore-years-ever/"2年目QBたちを私はまだ信用していない。いやもちろん彼らの今シーズンが素晴らしい成績になっているのは確かなんだが、彼らが長期的に成功することがそれで保証されているわけではない。なぜなら彼らのうち2人はパス成功率がリーグ平均を下回っているからだ。
 第10週までのGoffのパス成功率は61.2%、Wentzは60.5%。同じ2年目でもPrescottは63.3%に達しているのでまだいいのだが、GoffとWentzはリーグ平均(62.5%)を下回っている。ANY/Aで見ればGoffは全体1位、Wentzは5位とかなりいい数字を出しているのだが、他の上位陣(Smith、Brady、Brees)が67%以上の高い成功率を出しているのに比べるとかなり低いのは間違いない。
 こういう成績は長続きしない。Pro-Football-ReferenceでANY/A+が115以上、Comp%+が99以下を達成したQBを調べると、今シーズンのGoff、Wentzを含めても21世紀以降で6人しかいないのだ。彼ら2人以外の例は2015シーズンのNewton、14シーズンのLuck、06シーズンのMcNabbと04シーズンのPlummerにとどまる。
 ちなみにNewtonもLuckもMcNabbも、上記の年以外でANY/A+115以上を達成したことはない。例外はPlummerで04シーズン以外にも03及び05シーズンに115以上をキープしている。ただしこの2シーズンにおいて彼のComp%+は100を超えている。平均以上の成功率と合わせて高いANY/A+を達成したわけで、これこそが通常のパターンである。
 実際、Comp%+が101以上、ANY/A+が115以上のQBは今シーズンも合わせて21世紀に延べ98人も存在しており、かつBrady、Brees、Peyton Manningなど10回もこの記録を達成しているQBもいる。安定的にいい成績を残せるのはコンスタントに高いComp%+を残せる選手である。現時点で2年連続でリーグ平均未満のパス成功率にとどまっているGoff、Wentzについては、まだ将来が安心できるような選手とは言えない。むしろ2年連続で平均以上のパス成功率を達成しているPrescottの方が期待できそうだ。
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