レヴァントにある中期旧石器時代と後期旧石器時代の遺跡から見つかるProjectile Points(尖頭器)を分析し、中期の遺跡からは(ホモ・サピエンスのものであれネアンデルタール人のものであれ)飛び道具には向かないタイプのものしか見つからないのが、後期になってホモ・サピエンスが進出した時期の遺跡には弓矢やアトラトルを使う投槍用の尖頭器が見つかる、というのがこの論文の主題。実際に矢柄や槍の柄に付属していた石器の特徴を調べ、それと合致するものを調べたそうだ。
投擲武器用の石器は、矢であれば0.5×最大幅×最大厚みの数字が33平方ミリ、投槍なら58平方ミリになるそうで、それより大きなものは投擲用には向かないのだそうだ(p108)。レヴァントで見つかった石器は中期旧石器時代の場合は113~162平方ミリと大きく、投げるよりも白兵戦用の槍として使うのに向いていた。一方、後期になるとサイズがずっと小型化し、投擲用としてふさわしい大きさになった。
論文ではなぜネアンデルタール人が複雑な投擲武器を開発できなかったかについても推測している。体の大きなネアンデルタール人はホモ・サピエンスより必要なカロリーが多く、そのため構造が複雑で製造に時間のかかる複雑な投擲武器を作るための時間がなかったという説明だ(p114-115)。そんなものを作る暇があったら従来の武器を使って獲物を獲りに行く方が合理的だったのだろう。だが変化を拒んだ彼らは結局絶滅への道を歩んだ。変わる環境への適応に失敗したということだろうか。
むしろ面白いのはAmentum"
https://en.wikipedia.org/wiki/Amentum"。ジャベリンに革製の紐を巻き付け、それを指に引っ掛けてジャベリンを投げる。するとジャベリンにスピンがかかり、軌道が安定するうえに飛距離が伸びるという仕掛けだ。アトラトルは道具を使って遠心力を増す機能を持っていたが、それとは異なるメカニズムで投槍の威力を増しているところが面白い。
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