火矢

 欧州では初期の銃砲でクロスボウの矢(ボルト、クォレル)を放っていたことは間違いない。Milemeteの絵"http://www.vikingsword.com/vb/attachment.php?attachmentid=120684&stc=1"が代表例だし、それ以外にも例えばフロワサールの本"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55647219.html"や、ブルッヘのギルドが持ち出した例"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56352676.html"などがある。
 そしてこの種のボルトの中には現代まで残されているものもあるそうだ。こちらの掲示板"http://vikingsword.com/vb/showthread.php?t=18481"で紹介されている。筆者であるコレクター自身が所有しているもの"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=169867&postcount=2"がその1つ。他にも16世紀に沈没したマリー・ローズ号から見つかったもの"http://www.vikingsword.com/vb/showpost.php?p=142202&postcount=9"などがあるという。
 筆者が持っているのは鏃が鍛鉄性で、4つに分かれた留め金の中に黒くなった焼夷性の物質などが埋め込まれている。また一緒に何らかの織物のようなものの残骸も見える。鏃は取り外し可能。一方、マリー・ローズ号の矢の方は焼夷性と書いているが先端部がどうなっているかはよく分からない。サイズは大きく、筆者は大砲用ではないかと想像している。
 もう一つ、こちらのスレッド"http://www.vikingsword.com/vb/showthread.php?t=7085"にも焼夷性のボルトの実物が載っている。15世紀から16世紀初頭にかけてのものだそうで、こちらの方は材料を詰め込むための留め金らしきものは見当たらず、織物が中から姿を見せていたり、あるいは周囲を覆っていたりするのを見るに、もしかしたら火薬をペースト状にして布に塗り、それをボルトに巻き付けていたのかもしれない。
 博物館の分析によると焼夷物質の外部を覆っているものは硫黄88%、硝石10.4%、炭素1.6%の物質で、内部の塊は硫黄13.7%、硝石83.5%、炭素2.8%だったという。外部については発火温度の低い硫黄の比率を高めて火をつけやすくし、一方外からの酸素供給が期待できない内部は酸化剤である硝石の比率を高くして燃焼が続くようにしているのだろう。火薬に比べて炭素が少ないのは、可燃物にぶつけてそれを燃やすのが目的だからかもしれない。
 この手のものはクロスボウで発射されるもの"http://www.vikingsword.com/vb/showpost.php?p=70787&postcount=30"に加え、銃"http://www.vikingsword.com/vb/showpost.php?p=141779&postcount=2"や大砲で撃ち出すものもあったという。このうちクロスボウで撃つタイプ"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=170356&postcount=10"については、中国で最初に生まれた火薬兵器である火矢以来の伝統的な兵器とも言える。武經總要に弩で射出する火薬兵器があることはこちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56238179.html"で指摘済みだ。

 次に古い時代の後装式兵器について。以前にも書いた通り、欧州では初期の火薬兵器において後装式の武器が数多く存在したが、それらの大半はフランキ砲のようなシンプルな形状のものだった("http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=72045&postcount=3"参照)。だが中にはもっと凝った作りのものもあったようだ。
 例えばこちら"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=72625&postcount=5"のホイールロックは16世紀のものだが、見た目はより近代的な後装式の銃にも見える。こちら"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=72626&postcount=6"のホイールロックピストルも同様。こちら"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=72628&postcount=7"は1700年頃のフリントロック式ライフル(!)だが、これまた後装式で12個もの金属製カートリッジが付属している。
 以前こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56139507.html"で、真田の馬上宿許筒なるものが胡散臭いという話はしたし、その時代において真のフリントロックはあり得ないという指摘もした。そしてどうせならホイールロックを使えと言ったのだが、この後装式ホイールロックなどはまさに最高のギミックではないだろうか。流石に薬莢の自動排出は無理だろうが、あらかじめカートリッジを用意しておいて次々と銃を撃つようにしたら、見た目は格好いいと思う。

 最後にもっと中二感の強いものを。こちら"http://vikingsword.com/vb/showthread.php?t=19388"で紹介されている「ホイールロック搭載ウォーハンマー」だ。まるでRWBY"https://www.youtube.com/watch?v=pYW2GmHB5xs"に出てくるHCSSクレセント・ローズ"https://www64.atwiki.jp/rwby_jpn/pages/42.html"。もちろんフィクションに出てくる架空武器ではなく、1550年頃にニュルンベルクで製造されたモノホンの武器である。
 こうした武器が1つだけでなく、例えば1530-35年頃に製造されたもの"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=178436&postcount=2"、16世紀中ごろに製造されたハンマーとマッチロックの合成武器("http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=178600&postcount=3"の写真3枚目)、16世紀に製造された斧と銃身に後からフリントロックをくっつけた武器"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=178649&postcount=4"などがあった。
 射撃用の兵器だが接近戦でも使用できる、という中二心をくすぐる兵器は銃剣の発明によって現実になるわけだが、銃剣が一般化される以前にも似たような発想を持って武器を作っていた人間はいたということだろう。遡れば中国で火薬を入れた筒を槍に着けて火槍としていた例は昔からあるので、そういう武器自体は珍しくない。問題はそれがどれだけ実用性があったかであり、銃剣に存在した実用性は、おそらくこの手の「プロト=クレセント・ローズ」にはなかったと思われる。
 それでもこういうものを作り所有したがる人間が一定数いたことが、こういう使えない武器が残っている理由だろう。前に紹介した偽ホイールロック"http://vikingsword.com/vb/showpost.php?p=72177&postcount=9"もそうだが、効率性だけでは測れない実に人間臭い一品だと言える。
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