読解力

 以前こちら"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55483569.html"で紹介した説、ごく単純に言い切ってしまうなら「エリートになれるかどうかはほぼ生物学的遺伝で決まる」説だが、ある意味それを立証するような研究が出てきた。こちら"https://mainichi.jp/articles/20170923/k00/00m/040/106000c"やこちら"http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017092302000119.html"で報じられているものがそうだ。
 新聞では毒を抜いた部分が紹介されているが、研究者自身のツイートを見ると実はかなりシュールな結果が出たことが分かる。文章の読解力と「相関はなかった」ものをツイートしているのだが、その対象は「国語が得意かどうか」「読書が好きかどうか」の他に「性別・得意な科目不得意な科目・一日の学習時間・スマートフォンの利用時間・読書の好き嫌い(5段階)・好きな本のジャンル・今月読んだ本の冊数・新聞購読の有無・通塾・習い事」など非常に多岐にわたったという"https://twitter.com/noricoco/status/911393056418496512"。
 要するにテストを受けた子供たちの文化的な環境や勉強の取り組みといったものは、読解力と結びついてはいないのである。そして「にもかかわらず、進学できる高校の偏差値との相関は0.8」と高い数字を出している。だとしたら、ここで登場していない何か、例えば「親の成績や社会的階層」のようなものが実は読解力に影響している、という可能性も浮上してくる。
 もちろん「中学で能力値が上がるという点で知能テストとは違」うことも確かだ。でも一方で収入に与える遺伝の影響は、歳を取るほど大きくなることが知られている"http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6659_2.php"。15歳くらいまでは家庭環境が学習能力に反映するとしても、大人に近づくにつれて遺伝の影響が高まるとの指摘はこちら"http://www.blog.crn.or.jp/kodomogaku/cafe2-1.html"にもある。高校生になると成長が見えなくなるのは、遺伝の影響が十分に反映されるのがその時期だからかもしれない。そしてもし読解力に与える遺伝の影響が大きいのなら、全体を引き上げようとするのは容易ではあるまい。
 そしてもう一つ、そんな日本でも実は諸外国に比べればまだマシな方に当たるという点もある。OECDの調査によると2015年の時点で日本の読解力はOECD加盟国(35ヶ国)内で6位、全72参加国・地域でも8位とかなり上位に位置している"http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/01_point.pdf"。前回2012年から低下したことが問題になっているが、単発のテストでブレが生じるのはむしろ当然。それに日本より上位の国・地域を見ると人口が1000万人超なのはカナダ、韓国のみ、5000万人超の大国の中では日本はトップになる。
 ここまで高水準にある国で、もう一段読解力を上げようとするのは極めて困難だ。50点の成績を60点に上げるのと、90点を100点にするのとでは、難易度が全然違う。もちろんこの水準を維持する努力は不可欠だろうし、そのための手段として読解力調査が役に立つ面があるのも確かだが、読解力がない生徒の割合をゼロに接近させるのは言うほど簡単なことではないように思う。
 でも読解力が必要なのは間違いない。ネットではテストの文章が悪文だという批判をする人も結構見かけるのだが、世の中に出た際に読まなければならない文章が常に読みやすい文章であるなどという保証はない。一定数の人間が間違えずに読み解くことができる文章が読めないのは、本人にとって明らかにマイナスになる。さらに短時間で読解する能力も、納期や締め切りの存在が当たり前な現実社会で生きていくうえでは欠かせないのが現実だ。社会で少しでも有利に生きていくための手段を伝えるのが教育であるのなら、読解力を高めさせるというやり方は間違いではない。
 とにかくまずはリーディングスキルテストの成績と相関する偏差値以外のデータを見つけ出すことだろう。相関は因果ではないが、それでも相関があればそれを手がかりに読解力全体の引き上げに取り組むきっかけが生まれるかもしれない。読解力を把握するためテストはしたが、でも読解力を上げる方法は分からないままでは、さすがにいかがなものかと言わざるを得ない。何か手がかりが見つかり、それを使って少しでも全体の読解力が上がる方向に世の中が変わることを期待している。
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