サンクコストQB

 Bortlesの先発の座が危うくなっている"http://www.sfgate.com/sports/article/Blake-Bortles-starting-job-with-Jaguars-in-11943439.php"。これまで私は、Kaepernickより成績が悪いのになぜか先発から外されない選手として、彼とTannehillの名をよく挙げてきた。後者は既に負傷により今シーズン先発しないことが決まっている。ここでBortlesが先発から脱落すれば、少しは私の違和感も晴れることになりそうだ。

 世の中にはダメな成績なのになぜか「先発サバイバル競争」でしぶとく生き残るQBがいる。一例はFitzpatrick"http://www.thedrawplay.com/wp-content/uploads/2016/10/Fitzpatrick.jpg"だが、これはまあ、たまたま(あくまでたまたま)本来の先発QBの負傷で出番が回ってきただけであり、例外的な存在と考えるべきだろう。
 より一般的な「サバイバルQB」のパターンは、ドラフト上位で指名されながらダメな成績しか残せないQBたちだ。多大なドラフト資源を投入したのだから成長するまで我慢強く待たなければならない、という先入観に取りつかれたチームがいつまでも先発として使い続ける。結果としてチームの足を長期にわたって引っ張り続けるというヤツである。
 具体的にどんなQBがいるのか。Trent Dilferが典型例だろう。1994年に1巡6番手でTampa Bayに指名された彼は6年間に76試合に先発したが、その間のANY/A+は87と平均より1標準偏差近く低い水準にとどまった。平均を下回った分に試合数を掛け合わせると-988となり、この数値はサラリーキャップ導入後にNFL入りしたQBたち(最低32試合以上先発)の中では最悪だ。
 この「チームに与えたダメージ累計」が上位に来るQBとしては、他に1999年の全体1位指名であるTim Couch(-649)や2002年の全体1位指名のDavid Carr(-975)、同全体3位指名のJoey Harrington(-770)、1997年の2巡指名であるJake Plummer(-902)といった面々がいる。ただし彼らはまだマネーボール出版前、つまりキャップ効率が今ほど重視されていなかった時代のQBたちだ。
 マネーボール登場後のQBたちの中で誰よりも多くチームに損害を与えたのは2009年ドラフト全体5位指名のMark Sanchez(-806)。彼が先発を務めたチームが2年連続でAFC Championshipに進出してしまったのは、Jetsにとってむしろ呪いになったと言える。そしてマネーボール時代においてSanchezの次に酷い被害をチームに与えているのが、2014年の全体3位指名であるBlake Bortles(-675)である。
 既にキャンプにおいて、チームメイトが彼のパスに対して不満を漏らしていたという報道が流れていた"https://www.bigcatcountry.com/2017/8/15/16151242/"。このblogで既に書いていた話"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56275836.html"が、FiveThirtyEightで改めて「無意味な時間のTom Brady」という見出しで指摘される"https://fivethirtyeight.com/features/blake-bortles-is-the-tom-brady-of-nfl-garbage-time/"など、先発QBとしてのBortlesの資質に関する疑問がようやく広まっていた。
 さらにプレシーズンゲーム2試合のプレイを見て、チームもようやくBortlesに「先発は確定していない」ことを伝えたそうだ"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000831354/article/"。これが遅すぎる決断であることは、上に紹介した数字を見ても一目瞭然だろう。現時点でなおドラフトされたチームで先発を続けているQBたちのうち最も酷い数字を出しているのはBortlesであり、次がTannehill(-462)。それに比べればSan Franciscoを追い出されたKaepenick(-58)などは全然マシである。
 Tannehillについてはシーズン終了後にあっさり首を切られる可能性があると述べた"https://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56417877.html"。だがBortlesに対しては、もし本当に彼が先発失格となればもっとはやく、シーズン開始前にもカットされる可能性があるとの指摘が出ている"https://www.bigcatcountry.com/2017/8/17/16165806/"。2018年度の開始までに解雇すればデッドマネーなしに5年目の19ミリオンのサラリー分を空けることができるが、怪我の保証を付けているため練習やゲームでBortlesが負傷すれば負担が一気に増える。それならさっさとカットした方がいいという理屈だ。
 ただし今シーズン中にカットすると6.57ミリオンのデッドマネーが発生するのも確かであり、それが嫌ならシーズン終了後まで解雇を待つべきとなる。とはいえJacksonvilleのキャップスペースはリーグでも3番目に多い44ミリオン"https://overthecap.com/salary-cap-space"。怪我でデッドマネーが増えるリスクを取るよりもさっさと首を切った方がいいと考える余裕もある。いずれにせよBortlesの先行きが一気に不透明になってきたのは確かだ。
 もちろんこの2人がクビになることなく生き残る可能性もある。Jacksonvilleの2番手であるHenneのキャリアRANY/Aは-0.90とBortles(-1.08)と比べて大して変わらない。トータルQBRではむしろBortlesの方がHenneより高く、Henneを先発にすればESPNのFPIが予想する勝利数は6.8から6.2に低下するそうだ"https://twitter.com/HankGargiulo/status/898531072308326400"。TannehillについてもCutlerが惨憺たる結果になれば他に頼る術もないという理由で復活する可能性がないとはいえない。
 だがその場合も彼らがチームに利益より損害を与え続ける確率は高いだろう。チームが彼らをいつまでも引きずっていたのは、単にサンクコストにこだわるという非合理的なヒューリスティックに囚われていたからに過ぎない。ようやく損切りを決断できる機会が訪れたこの段階で、JacksonvilleとMiamiは果たしてどのような判断をするのか。生温かい目で見ていきたい。

 なお、上に紹介した「サラリーキャップ導入後」に「最初の先発チームで32試合以上先発した」「ANY/A+が100未満」のQBたち(27人)について、チームに与えた損害とQBのデビュー年の相関を調べると+0.266となる。弱いながらも正の相関があるわけで、つまり古い時代のQBほどチームに損害を与える度合いが大きかった傾向が存在するのだ。逆に言えば今のチームは昔より効率重視でドライな判断をするようになっているともいえる。統計分析が広まることで、サンクコストの呪いが弱まっている一例だろう。
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