確かにEliは2つのリングを手に入れているが、一方でレギュラーシーズンで表彰対象になったことがないというのがこのエントリーの指摘。過去にQBで殿堂入りした選手とこれから入ることが確実な4選手を含めると過去70年に29人の選手がいるのだが、そのうち1人を除いた28人は少なくとも1回はfirst-team All-Proになっている。でもEliはそこに選ばれたことが1度もない、という指摘だ。
まず29選手のうち16人は、5回のPeyton Manningを筆頭にAPのシーズンMVPに選ばれたことが少なくとも1回はある。8人はUPIやAPのAFL及びPFWAやNEAのMVP、あるいはBert Bell Player of the Yearに選ばれている。5人はAPやSporting Newsのfirst-team All-Proになったことがある。first-team All-Proに選ばれたことがない唯一の選手(Bert Bell PoYになったことはある)はRoger Staubachだが、彼は短いキャリアで突出した年がなかったためそうなっている。
一方のEli"
http://www.pro-football-reference.com/players/M/MannEl00.htm"はどうか。Super Bowl MVPを除けば、社会貢献で活躍した選手に送られるWalter Payton Man of the Yearしか獲得したことがない。Pro Bowlへの選出は4回あるがfirst-team All-Proはゼロだ。2回のSuper Bowl勝利という点でEliとStaubachは同じだが、後者が8年でプレイオフ17試合に先発したのに対し、前者は13年のキャリアで12試合の先発に過ぎない。そしてレギュラーシーズンのプレイ水準は月とすっぽんである。
エントリーのコメント欄もにぎわっているが、Eliの殿堂入りを支持する人より否定的な見解を示す人の方が圧倒的に多い。Eliのシーズンごとの成績でなく、キャリアトータルで積み上げたヤードやTDの数字が評価対象になると見る向きもあるが、それならVinny TestaverdeやDave Krieg、Drew Bledsoeだって対象になり得るとの反論が示されている。要するにEliの殿堂入りを支持する材料はリングしかないのだ。
果たしてEliは殿堂入りすべきか否か。まず彼と同様に2つのSuper Bowlに勝利しながら殿堂入りしていないJim Plunkettと比較してみよう。Plunkettの場合、レギュラーシーズンの成績はEliよりもさらに酷い。彼はAll-ProどころかただのPro Bowlerになったことすらないし、Super Bowlを除けば表彰は1980シーズンのComeback Player of the Yearだけだ。RANY/Aに至っては-0.24と、リーグ平均を下回る選手でしかなかった。それに比べればEliはRANY/Aが+0.15となっており、Plunkettより少しばかりではあるが評価できる。
もう1人、比較してみたいのはドラフト直後にEliとのトレードでSan Diegoに移ったPhilip Riversだ。先発定着がEliより遅れたためにトータルの数字では負けているが、ANY/A6.84、パス成功率64.4%、レーティング94.7はいずれもEli(5.96、59.7%、83.7)を大きく上回っている。Pro Bowlへの選出回数も6回のRiversの方が多い。
現状、Riversが将来の殿堂入り候補として名前を挙げられることは全くない。もちろんこれから彼がシーズンMVPやリングを手に入れれば話は別だが、現段階では可能性はほぼ皆無だろう。一方、そのRiversより明確にパッサーとして劣っているEliは、にもかかわらず殿堂入り対象として大いに話題となっている。その差はプレイオフで勝ち進んだかどうかだけしかなく、それもパッサーのおかげではなくチーム全体の努力の結果を反映している度合いが高い。
Plunkettよりは成績がいいのだから殿堂入りすべき、という理屈は成り立つ。だがRiversと並べた時、果たしてEliを殿堂入りさせてしまっていいのかという疑問が浮かぶのは間違いない。それにRiversの成績だってRomoと比べれば見劣りがするのに、そのRomoについても殿堂入りの話はとんと聞こえてこない。パッサーとしての実績を比較した場合、これらの選手たちより遥かに低い位置にいるEliが殿堂入りするのは、個人的には全く納得できない。
おそらく、殿堂入りなんてその程度のものと考える方が正しいのだろう。日本語では「名誉の殿堂」と格好良く書かれているが、元はHall of Fame、つまり「名声の殿堂」である。知名度があればそれでいいのであり、実績は後回しになっても仕方ない。運良く知名度が上がった選手が選ばれ、実力は上なのに知名度で下になってしまった選手ははじかれる。「殿堂入り」とはその程度のものだと割り切るべきかもしれない。
むしろ問題は、Eliより遥かに殿堂入りに関する議論が少なそうなRoethlisbergerかもしれない。最初に紹介したESPNの記事では彼はBrees、Rodgersと並んで「事実上確定」と書かれていたが、実は彼もまたfirst-team All-Proに1度も選ばれていないQBだ。つまり彼が殿堂入りする時はStaubachに次いで2人目の非first-team All-Proになり、そしてStaubachと異なりMVPやPoY関連に選ばれたことのない初のQBになる。加えて彼はEliと異なり、Super BowlのMVPも獲得していない。さて、果たして彼は殿堂入りにふさわしいQBなのだろうか。
コメント
No title
referenceのAVを見てたんですけどPlunkettは85(G157)で
Eliが109(G201)なんですね。
1試合にすると二人はどっこいですし
イーライが殿堂入りはちょっと・・・ですね
兄者ブレイディどちらがGOATと見られているか等々が
元々は知りたかったんですがQBに関する統計や
組織運営の話もとても面白かったです
いつも興味深い記事ありがとうございます。
2017/08/02 URL 編集
No title
Eliの評価については殿堂入りを決めるジャーナリストたちの判断が問われるところですが、最近の状況を見る限り入ってしまう確率は高そうです。
一方でパッサーとしての成績はずっと優れているにもかかわらず、一度も優勝していないために殿堂入りしていないKen Andersonのような人物もいるわけで、なかなかに世の不条理を感じさせる問題とも言えます。
2017/08/03 URL 編集
No title
例えばOBとしての能力は凡庸なのに、ものすごくチームを鼓舞する
能力が高く、リーダーシップに優れ、結果として勝っちゃうOBがいたとしたら、彼の評価はどうなるんでしょうねぇ??
もちろんそれだけで通用するほどNFLは甘くないけど
昔のキャプテンカムバックことハーボーとか、
スタン・ハンフリーズとか(あ、そうか彼ら印象は強いけど
たいした勝率じゃないか)
Eliも熱いリーダーじゃないけど、チームメイトの信頼は絶大みたいですね。
2017/08/15 URL 編集
No title
確かにHarbaughの勝率は(プレイオフ含め)0.469と負け越していますが、Humphriesは0.609と結構高い勝率です(Eliは0.550)。
つまるところ勝率でQBを評価するのはやはりおかしいのだと思います。
一方、リーダーシップについてはスタッツからの評価は困難でしょう。というか外部の人間には容易に窺えないものではないかと。
2017/08/18 URL 編集