見ての通り特定の1チーム、即ちPatriotsが突出して高い評価を受けているのが最大の特徴だ。パリティ? 何それおいしいの? と言わんばかりのランキングであるが、おそらく一般評価もこれに近いところがあるように思われる。32チームもいて1チームの優勝確率が3分の1を超えるという状態は、戦力均衡を謳っているはずのリーグにとっては忸怩たるものがあるのではなかろうか。それでも3回に2回近くは別のチームが優勝する計算なのだから、まだ絶望するには早すぎるが。
プレイオフ出場可能性の高いところを見ると、AFCでは6チーム中4チーム(Patriots、Steelers、Raiders、Chiefs)、NFCも同じく4チーム(Seahawks、Packers、Cowboys、Falcons)が16シーズンと同じメンツになっており、メンバー交代があるのは両カンファレンスで計4チームに絞られる見通しとなっている。その意味ではかなり保守的な予想だし、特に勢力図が固定しているAFCはともかく、NFCですら似たような面々が出てくると見られているのはこれまたリーグにとって残念なところだ。
勝率ではなく得失点差で見ると、昨シーズンプレイオフに出た12チームの中で最も悪い成績だったのが、まさにこの4チームだった。Texans(-49)、Dolphins(-17)、Lions(-12)はいずれも得点より失点の方が大きかったし、Giantsは+26とプラス幅が最も小さかった(次に小さかったのはRaidersの+31)。そして翌シーズンの予想をするうえでは、勝率より得失点差の方が高い相関性を示すのである。
2002-16シーズンを対象に、ある年の勝率と翌年の勝率の相関係数を見ると+0.310になる。正の相関にはなるがその度合いはあまり高くない。ではある年の得失点差と翌年の勝率の相関はどうか。実は+0.352と小幅ながら上昇する。引き続い弱い相関ではあるが、少なくとも勝率を見るよりは予想が的中しやすくなるのは確かだ。
これがある年の得失点差と翌年の得失点差の相関になれば+0.409まで数字が上昇し、そこそこの相関と言える範囲に達する。ちなみに得点と失点のうち翌年との相関が大きいのは得点の方で、例えば得点と翌年の得失点差の相関が+0.360となるのに対し、失点と翌年の得失点差は-0.272にとどまる。NFLでは得点の大半がオフェンスチームによってもたらされるため、オフェンスが強いところほど翌年も安定して勝ちやすくなることが分かる。
プレイオフから脱落する4チームに代わってプレイオフ入りすると見られているのはAFCがRavensとColts、NFCがPanthersとVikingsだ。Ravensの得失点差(+22)はAFCでプレイオフに出られなかったチームの中では2番目に高く、またColtsの+19はAFC南では最もいい。Vikingsの+20もNFCでは比較的高い方で、要するにPanthers(-33)を除けば得失点差は割とよかったが勝率につながらなかったチームが上向いてくるという予想なわけだ。
個人的にスタッツ分析に取り組むサイトはやはり一般通念をひっくり返すような見方を示してほしいと思っている。ESPNのFPIも元はAdvanced Football Analytics"
http://advancedfootballanalytics.com/"のExpected Pointsを使ったランキングなので、そういう意外感のある予想を見たいという希望が心の中にはある。でも、最近はスタッツ系サイトからそれほど意外な見方は出てこなくなったように思う。
おそらくはそれだけスタッツを活用したスポーツ分析が当たり前になってきたのだろう。Clevelandのようにそうした手法に基づいてチームを強化するところも現れており、ファンもマスコミもスタッツ分析に基づく見方に慣れてきている。だから通念と離れた予想があまり出てこなくなっているのかもしれない。
そしてもう一つ、やはり戦力の固定化が進んでいる懸念がある。FPIランキングではAFCの東と北、NFCの北と西で特定チームの地区優勝確率が5割を超えている。全8地区のうち半分はそれだけ戦力の不均衡が進んでいるわけであり、それ以外にも2地区で昨シーズンと同じチームが優勝する確率が最も高くなっている。きっとGoodellは「パリティはどこへ行った」と迷路で戸惑うネズミのような気分になっていることだろう。
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