パリティの後退

 NBAのファイナルが3年連続で同じ組み合わせになった。その一方のチームに移籍したばかりの某選手は「NBAのパリティ(戦力均衡)問題は俺のせいじゃない」"http://www.sbnation.com/2017/5/26/15700974/kevin-durant-competitive-balance-parity-nba-warriors-thunder"と言っているそうだ。
 NBAが本当にパリティ問題を抱えているのかどうか、私は詳しくないので分からない。一応こちら"http://www.footballperspective.com/cleveland-and-three-straight-title-games-against-the-same-opponent/"を見ると、3年連続で同じ組み合わせのチャンピオンシップになったのは、米プロスポーツでは過去に1950年代のNFL(ClevelandとDetroit)しかないそうだ。であればパリティの欠如を言い出す人も出てくることだろう。

 一方、米プロスポーツでしばしばパリティが達成できている事例として取り上げられるのがNFLだ。厳しいサラリーキャップの適用によって勢力均衡がなし遂げられているという理屈。だがこれについても異論はある。こちら"https://www.numberfire.com/nfl/news/12740/is-there-really-parity-in-the-nfl"ではいかに特定のチームが何度もプレイオフを勝ち上がっているか、特にNew Englandが「直近16回のSuper Bowlの半分近く、AFC Championshipの3分の2以上」に出るなど圧倒的な成功を収めている点を指摘している。
 確かに16年間で5回もSuper Bowlに勝った例は過去にない。だが同じ16年間に優勝したチーム数という切り口で見るなら、10チームという数は決して少なくはない。例えばサラリーキャップ導入直前までの16年間(1978-93)に優勝したチーム数はたったの7チームで、当時存在した28チームの4分の1にとどまる。直近16年間に32チームの内3分の1近くが優勝したのは戦力均衡が進んだ結果、とも主張できる。
 そもそもパリティとは何か。究極のパリティは全試合引き分けになることだろう。だがそんなものはリーグもファンも望んでいるまい。あるいは毎シーズン、全チームが勝率5割で並ぶというパターンもパリティと言えるが、これまた期待される状況とは異なる。毎年とまでは言わないが、数年おきに強いチームが入れ替わり新しい戦力が台頭してくる。そうした新陳代謝が感じられる状況が続けば、それなりのパリティはあると言えるんだろう。
 というわけで、新人契約が満了する4年を1単位として調べてみた。1~4年目の合計勝率を5~8年目の勝率と比較し、その相関係数を出してみるわけだ。この係数がマイナスなら全体として弱いチームは強く、強いチームが弱くなることを意味する。ゼロ近辺なら1~4年目成績は5~8年目成績とは無関係で、プラスなら強いチームが引き続き強く、弱いところは弱いままというパリティに反した結果だと考えられる。
 21世紀に入ってからの16年間を2001~04、05~08、09~12、13~16シーズンの4期間に分けてそれぞれの相関を調べると、トータルの相関係数は+0.407になった(Texansのみは最初の期間が02~04年となっている)。この数字は緩やかな正の相関がある水準で、つまり強いチームが強く、弱いチームは弱いままという傾向が見られたことになる。ただし、これでパリティはないと断言まではできない。サラリーキャップ以前の期間と比べなければ意味がないからだ。
 というわけで1978~81、82~85、86~89、90~93シーズンについても同じように相関を調べてみたところ、係数は+0.231となった。何のことはない。70年代末から90年代前半にかけてのサラリーキャップがなかった時代の方が今よりもパリティが存在していたのである。実際、当時において2期間にわたって勝率7割超を達成した事例は1つ(San Francisco)しかないが、21世紀にはそうした事例が3つ(New Englandが3回)もある。強いチームだけでなく弱いチームも同じ。どちらかの期間で勝率3割未満、もう一方の期間で4割未満にとどまったチームは70~90年代だと4つあるが、21世紀には倍の8つになる。
 他のプロスポーツとの比較はともかく、NFLでパリティが達成できているかどうかといえばそれは疑わしい。少なくとも結果を見る限り、サラリーキャップ以前よりも今の方が強いチームと弱いチームの固定化が進んでいるのは確かだ。

 なぜそうなっているのか。いくつかの理由が考えられる。まず、ただの偶然。たまたま調査対象とした70~90年代は成績のブレが大きく出た時期であり、それとの比較で見た結果としてパリティが低下したように見えただけかもしれない。ただしさらに期間を遡ろうとするとAFLとNFLの合併前まで調べる必要が生じ、余計にノイズが増えてしまう可能性もある。
 偶然ではないとの理屈もある。まずサラリーキャップというややこしい制度に上手く対応できる能力を持ったチームと持たないチームの間で格差が生じたという説。Baltimoreのように優れたドラフト戦略を駆使し、一流QBを持たないにもかかわらず勝ち星を積み上げてきたチームがいる状況を見る限り、この説にも説得力はある。制度が簡単であればどのチームも同じような対応になるだろうが、複雑なためチーム間の格差が生じやすかった、つまりサラリーキャップはパリティ構築よりその破壊に役立った、という理屈だ。
 選手寿命の長期化が寄与しているとも考えられる。特にQBという、ゲームの勝敗に最も大きな影響を及ぼす選手の寿命は非常に長くなっている。運良く超一流QBを手に入れることができたチームは長期にわたってその選手のおかげで勝ちを増やし、それがパリティ破壊に役立ったわけだ。確かに21世紀初頭から現在に至るまでのNFLは、超一流QBの時代と言ってもいい。そしていいQBを持つチームほど勝ち星が多いのは否定できない事実だ。
 個人的には上に示した事情のいずれもがパリティの後退に寄与していると思う。このうち、最初の理由と最後の理由はリーグとして対応する余地はほとんどない。できるとしたらサラリーキャップやドラフトといった制度面での対応だけだろう。以前から書いているが、本気でパリティが欲しいならドラフトはやめてサラリーキャップだけにした方がいい。もちろんドラフト選手の契約額を人為的に下げるのもなしになるし、補償ドラフトなどという制度も消える。フランチャイズタグなども全面廃止だ。そうなれば制度の穴を突くような方法を駆使して他チームを出し抜くのは難しくなるはずだ。
 NFLが本気でパリティを求めているのか、正直言うと疑問を覚える。少なくともパリティよりもドラフトというイベント開催で得られる収益の方が大切なのは間違いないだろう。パリティという言葉は、実態というよりNFLの建前であると考えた方がよさそうに思える"http://www.sportsonearth.com/article/204897808/nfl-parity-problem-bad-teams"。
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