今年はディフェンスの人材が豊富だとか言われていながら、いざ蓋を開けてみると初日は序盤からオフェンスの、特にスキルポジションの選手が続々と指名される展開になった。特に驚きはQBで、12番手までに3人もの選手が、しかも全員トレードアップで指名。いかにQBに飢えているチームが多いかを明白に示す結果となった。
大学でたった1年の先発経験しかないTrubiskyを選んだ首脳陣に対し、Chicagoファンは不安を覚えていることだろう。一方でOver the Cap"
https://overthecap.com/first-round-draft-thoughts"のようにこの決断を評価する向きもある。多くのチームは特定のQBにのめり込み過ぎるのだが、ChicagoはGlennonとTrubiskyの2人を「積み上げ」、どちらか一方が当たればいいという形を作り上げた。もちろんそれだけ投資額も多かったが、その投資によってフランチャイズQBを入手する確率が上がるのなら、必要なコストと割り切ることもできる。なかなか面白い指摘だ。
次に10番目にKansas Cityが指名したのがMahomes、12番目にHoustonが指名したのがWatsonだ。どちらも1~2巡で指名されると見られていたQBだが、少なくとも1巡上位とまでは評価されていなかった。QBASEでもWatsonはバスト率56%。チームメイトの能力に助けられた部分が大きいという指摘だ。そしてMahomesはバスト率45.7%。こちらは数字はいいのだが、Air Raid Offenseのチームでパスを投げていたのが問題視されている。
Kansas CityのAndy ReidはQBに実力以上の成績を残させる点では優れたHCなので、おそらくMahomesもそれなりの数字は出せるように思える。でもAlex Smithと比べてレベルアップになるかどうかは不透明。Over the Capでも、早めに次のQBを用意するのは悪くないが、そのために1巡を捨てるのは拙いという考えだ。一方、Houstonの指名ははっきり言って自暴自棄に近い。Romoが手に入らないならドラフトでギャンブルに出るしかないという行動なんだろうが、分の悪い賭けだ。
上位指名が予想されていながら実際の指名が3日目まで見送られたのはDobbs(Pittsburgh)、Peterman(Buffalo)、Kaaya(Detroit)の3人だ。それぞれのバスト確率は53.8%、71.6%、そして60.9%となっている。PittsburghはもしかしたらRoethlisbergerの後継者になる可能性も見ているかもしれないが、残り2チームはあくまで保険としての扱いだろう。1巡上位の面々以外は、全体的な評価の低さを反映し腰の引けたQB指名になっていたように思える。
1巡上位では他にスキルポジションの選手が5人も選ばれた。うちWRについては将来のJulio Jonesがいるかもしれないのでまだ許容範囲と言えるが、RB2人の指名は正直言って疑問だ。基本的にRBというポジションは「代替可能」であり、だからコストが重要になる。JacksonvilleはFournette指名によっておそらくRBの中でも4番目に高いサラリーをもらう選手を抱えることになるうえ、もう1人のChris Ivoryを含め2人のレシーブ下手なRBを並べることになる。そのうえBortlesを残すつもりだと聞かされると、これはもう高度なtankingではないかと疑いたくもなる。
もう1人のMcCaffreyはレシーブができる分だけ、指名したCarolinaにプラスをもたらしてくれる余地は大きそうだ。それでもこの時代においてトップ10で2人のRBを指名するのはリスキーであることは間違いない。むしろ1巡下位指名だったが、TEが3人指名されたことの方がいまどきのNFLらしい。
チーム別に見るとCincinnatiとMinnesota、Seattleが11人、Cleveland、San Francisco、Washington、Green Bayが10人を指名したのが目立つ。逆に少ないのはNew England(4人)とChicago(5人)。SeattleやGreen Bayあたりはいつものパターンだが、New Englandは指名数を増やしてコストの安いドラフト選手を引き当てようとする全体的な流れにむしろ逆行している。代わりにドラフト中にKansas CityからTEのO'Shaughnessyを手に入れたのを含め、今回はドラフト指名権を4つ使って4人の選手プラス指名権1つを手に入れている。
手に入れた選手を見ると、年齢は今年の年末時点で27歳、24歳、26歳、25歳となる。ドラフト選手たちより年齢は上になるが、ドラフト選手よりは能力が見定めやすいという判断だろうか。Dwayne Allenを除けばいずれも新人契約中の選手たちであり、コスト的にはドラフトで取る選手とそれほど異なるわけではない。一方、ドラフト指名4選手はDEが2人、OTが2人と完全に絞り込んだ指名をしている。OLについては彼らが得意としている指名対象であり、DEは人材豊富と言われているポジションだ。勝ちやすいところはドラフトで勝負し、そうでない部分は短期の契約と割り切ってトレードにシフトした恰好か。
ドラフト期間中も含め今回のオフシーズンで選手のトレードが行われたのは9件。うち1件が廃棄物処理みたいなもの(Osweilerのトレード)だったので、選手を手に入れるために行われたトレードの半数はNew Englandがやったことになる。他チームが選手をトレードするのは、その大半がシーズン直前の8月以降に集中しており、しかもトレードの代償は大半が6巡以降の指名権と完全にロースター調整のためだけであるのに比べ、New Englandがより積極的な目的でトレードを活用していることが分かる。
New Englandのやり方は、要するに一種の「逆張り」なんだろう。みながトレードダウンを活用し指名権を増やすことに力を入れ始めれば、ドラフトに頼るのではなく若い選手をトレードで集める方に舵を切る。他チームがやっていないことを敢えてやることにより、他者を出し抜こうというわけだ。もちろんそれが常に成功するという保証はないが、面白い考え方ではある。
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