普通とマニアと

 以前に書いた"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56250111.html"「偉大」なQBについての集合知の結果がより詳細に紹介されていた"http://www.footballperspective.com/wisdom-of-crowds-recap-quarterback-edition-2017/"。今回は募集方法も特殊だったが計算法も独特。確か100ポイントを好きなように割り振ってくれというルールで募集していたが、集計に際してはそれを単純に足し合わせる方法はとっていない。
 具体的には投票者ごとに最も多いポイントを割り当てたQBを100%とし、以下そのポイントに対する比率ごとに数字を当てはめていったという。トップのQBに25ポイントを割り当てた投票者の場合、その投票者が5ポイントを付けたQBは20%を得る。逆にトップのQBが6ポイントしかない場合、5ポイントもらったQBは83%として計算される。そのようにして各QBごとに算出した数字の平均値でランキングしたようだ。
 最初に出てくる表のうち、Shareは上記の計算法で出した数値。Ballotsは全51人の投票者のうち何人が投票したかを示し、Pantheonは当該QBに割り当てた数値は50%以上、GOATは当該QBに100%を割り当てた投票者の数だ。また2015年に行った同じ集合知投票の際のランキングと、その時からの順位の変動も記している。また2番目の表にはこの集合知以外に存在する様々なランキングの順位を並べて掲載している。

 トップになったBradyは、もちろんこの投票が行われたタイミングが追い風になったと見るべきだろう。またパス成績よりも勝ち負けに価値を見いだした投票者からの支持が多かったと思われる。2位のManningはやはり勝敗よりパス成績が評価されたようで、特に高い水準のプレイを長期にわたって続けた"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56198702.html"ところが大きかったのだろう。3位のMontanaはパス成績ではManningに、優勝回数ではBradyに負けたのがこの位置になった理由だろうか。
 4位のUnitasは優勝もしているが、どちらかというとパス成績、それも積み上げた量が評価されたのだと思う。サックデータのない時代も含めたANY/Aランキング"http://www.footballperspective.com/career-ranya-rankings/"でvalueを算出すると、1950年代以前にデビューしたQBの中では彼がトップだ。引退時点までに彼が記録したドロップバック数は5260。当時2番目に多かったFran Tarkentonが4605にとどまっていたのを見ても、Unitasが突出した存在だったのが分かる。
 ただし彼が5位のMarino、6位のGrahamより上に来るのかと言われると返答に困るところだ。もちろんこの両名にはそれぞれ弱点がある。Marinoはとにかく優勝したことがない。他の上位陣QBたちがいずれも優勝を経験している中で、優勝しないままトップ5に顔を出したことにむしろ感心すべきだろう。Grahamは優勝回数もパス成績もUnitasよりずっと上だが、AAFC時代の記録が「ゲタを履いていた」可能性がある。UnitasやMarinoらに比べてShareの数字が小さいのを見ると、このAAFC時代をディスカウントする投票者が思ったよりも多かったようだ。
 7位と8位も対照的なQBだ。Youngは太く短い、Favreは細くて長いキャリアが特徴。YoungはQBレーティングでもRANY/AでもMontanaより上の選手だが、いかんせんプレイ回数が(もっと古い時代のUnitasよりも)少ない。逆に連続出場試合記録を持つFavreは、RANY/Aで見ると他の上位陣QBたちとかなり見劣りがするが、何より「無事是名馬」を体現したその頑丈さが評価対象になったのだろう。
 9位のElwayは、正直言って記録より記憶で選ばれた選手のように思える。RANY/AではFavreより低く、valueの順位で言えば実はBoomer Esiasonにすら劣る。優勝こそ2回しているが、それなら5回優勝している(そしてRANY/AでもvalueでもElwayより上位にいる)Bart Starrの方が彼より上に来てもおかしくないはずだ。一方で51人の投票者のうち実に48人が彼の名を挙げているなど、知名度だけなら抜群。スタッツ系blogの集合知投票でここまで食い込んでくるのだから、そうでないただの人気投票なら、もっと上に来ていたかもしれない。
 10位のRodgers、14位のBreesはいずれもまだ現役なので、これからも順位は変わることだろう。特にRodgersは将来的にもっと順位を上げる可能性がある。そのためにはせめてvalueでMarinoを超えることと、できればあと何回か優勝を積み重ねる必要がありそう。それでもManningに続いてBrady、Breesらが引退すれば、その後は彼の独壇場になる可能性が残されている。完全に、もしくはほぼキャリアが完結したQBたちが上位に並ぶなかで、彼だけはまだ多くの未来がある。
 12位のSammy Baughを最も偉大なQBとした投票者が2人いた。それ以外の投票者は皆1~6位のうちの誰かを選んでいるのに比べ、Baughは評価が分かれるQBだと言えるだろう。そもそも古すぎる人物なので全く知らないとか思い浮かばない投票者がいた一方、実績を知っている人間からは高い評価を受けたのだと思われる。何より彼が1945年に記録したパス成功率70.3%、QBレーティング109.9は、当時のレベルとしては常軌を逸した数値というしかない。彼を最も偉大なQBと認定する人がいるのも不思議ではない。
 2015年の集合知投票の時からの順位変動も興味深いところ。WarnerやKellyの順位が急落したのは「次第に忘れられているから」で説明がつくと思うのだが、一方でMcNabbが大幅に上昇したのは謎。といっても彼のShareは1.1%に過ぎず、単に限られた範囲に大勢のQBがひしめいているため微妙な数字の変化が大きな順位の差になっただけかもしれない。むしろVan BrocklinやJurgensenの順位上昇の方が実際には大きな変化と見るべきだろうか。

 この集合知との比較対照として取り上げられている中で、1番興味深いのはRanker.com"http://www.ranker.com/crowdranked-list/the-best-quarterbacks-of-all-time"だろう。単純な投票で決まるこのランキングを見ると、圧倒的に最近のQBがひいきされているのが分かる。何しろElwayが5位、Aikmanが14位に入っているほか、Eli Manningが26位、Cunninghamが27位、Bledsoeが35位に紛れ込んでいる。中でも最も凄いのは69位のTim Tebowだろう。一方でBaughの名はどこにもない。NFLのスタッツにも歴史にも詳しくない普通のファンが持つ認識は、この程度なのだろう。
 その意味で言えばFootball Perspectiveの読者は、ある意味でレベルの高い、別の言い方をすればおたく度の高い連中が多いのだと思われる。逆に言えば一般読者から見て違和感のあるランキングになっている可能性がある。詳しい者とそうでない者との間にどうしても発生してしまう隔絶は、こうした分野にも存在すると思われる。
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