タグ

 今オフシーズンのフランチャイズ・タグが決定"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000788559/article/"し、また2017シーズンのサラリーキャップも167ミリオンで固まった"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000788547/article/"。スカウティング・コンバイン"http://www.nfl.com/combine"も進み、3月9日の新年度スタートに向けて粛々とスケジュールが動いている。
 オフシーズンはチーム作りという切り口が中心となり、結果としてOver the Cap"http://overthecap.com/"やSpotrac"http://www.spotrac.com/nfl/"といったサイトに視線が集まりやすい時期となる。ただ、どちらも独自にサラリーを計算しているため、その数字は必ずしも一致するとは限らない。日本のサイトでも数字のずれに戸惑っている様子が見られるが、基本的に「どちらも完全には当てにならない」と考えておいた方がいいだろう。あくまで推定値だ。
 実際には細かい数字もさることながら、これらのサイトから大雑把な見方を学ぶ方が得策に思える。その場合、どちらかと言うと役に立つのはOver the Capの方だ。データの見せ方は両者で一長一短あるが、こちらはNFLに関連したblogを高い頻度で更新しているのが大きい。その時々の話題について取り上げることも多く、それを見ながらNFLの複雑なサラリーキャップについて知識を深めることができる。チームの運営にかかわるわけでもない素人が知識を深めてもあまり意味はないのだが、オフシーズンの暇つぶしには最適だ。

 例えばフランチャイズ・タグについては、こちらのエントリー"https://overthecap.com/thoughts-franchise-tag/"が参考になる。タグは一般的にチームを有利にし、選手にとっては有害となる。タグを貼る対象となる選手は基本的に直前シーズンにいい成績を収めた者であり、タグがなければ多額の多年度契約を結べたのに単年度契約を強いられる形になる。多年度のいい契約を結びたければ、さらに1年精進していい成績をもう一度残さなければならない。
 その代わり、この選手が2年連続でいい成績を残した場合、今度はチームが不利になるケースが見られる。今シーズンだとWashingtonのKirk Cousinsがまさにその例だろう。QBで2年連続のタグとなったことにより、彼の契約額はリーグトップクラスまで膨らんだ。気がつけば最高給をもらっているAndrew Luckなみの水準に近付いているわけで、しかもその間にチームに対する選手の不信感は増している。今のままなら17シーズン終了後にCousinsがチームを去る可能性が高い。
 ここから、特にサラリー水準の高いQBに関しては、タグを貼るリスクがチームにとって大きいことが分かる。チームのサラリーに与える影響はキッカーのような安い選手に比べて圧倒的に大きい。今年タグの対象になった選手を見ても、Cousins以外にQBはいない。Washingtonが契約戦略でミスした可能性はあるが、他チームはそうしたリスクある決断を避けたとも見られる。たまたま今年はCousins以外にスタータークラスのFAがQBにいなかっただけとも言えるが。
 一方、補償ドラフトについてはこちら"https://overthecap.com/2018-compensatory-pick-potential/"に面白い話が載っている。タグが確定したのを受けてこのオフにFAで出ていく可能性のある選手が固まり、それに伴って今年ではなく来年の補償ドラフトがどうなるかをまとめたものだ。スタータークラスのFAが多いところほど18年の補償ドラフトが期待でき、逆にそういう選手が少なければ補償ドラフトは当てにならなくなる。
 期待度がVery HighとされているのはNew England、Baltimore及びArizonaの3チームである。前2者は見慣れた名前であり、当然のごとく補償ドラフトをがっつり確保しにかかるだろう。またArizonaもキャップスペースにあまり余裕がないため、結果的に補償ドラフトが増える可能性はある。ただPalmerとFitzgeraldの年齢を考えると、18年ドラフトが増えるというのはあまり嬉しい話ではないかもしれない。
 逆にVery LowとなっているのがJets、Indianapolis、Jacksonville、Tennessee、Philadelphia、New Orleans、San Francisco、そしてSeattleだ。全体として上手くいっていないチームが多めだが、長期的な再建に向けて動き出すうえでもハンデを抱えることになりそう。もちろんこの予想通りになるとは限らないし、来年以降になればまた状況は変わるだろう。現時点で絶望する必要は全くないんだが、New EnglandやBaltimoreと比べるとつらいところかもしれない。

 NFLではどうしてもチーム力の変動に見舞われる。大半のチームはドラフトの運不運がそうした変動をもたらす要因となっている。例えばJets。こちら"http://www.footballperspective.com/revis-mangold-cuts-close-door-on-last-great-jets-team/"でも指摘されている通り、Jetsは06~07年ドラフトでの大成功を背景に、2年連続でAFCCGまで進むことができた。しかしその後のドラフトは外れが続き、今回のオフシーズンは再建モードに入っている。
 ドラフトはcrap shootだ。だから時にはツキの偏りができる。いい方に偏ればいいチームができる。かつてのようにサラリーキャップのない時代であれば、そうやってdynastyができることもあった。だが今や話はそこまで単純ではない。ツキそのものは左右できずとも「クジを引く」回数を増やしたり、あるいはコストパフォーマンスのいい選手集めに努力を払ったり、そうした工夫の積み重ねがチーム力の差につながる時代になっている。
 ツキに頼る方法でも時に勝利を掴むことは可能だろう。だがツキに頼るしかないチームでは、工夫を重ねて強くなったところとの差が長い目で見ると開いてしまう。同じ08年にドラフトされたMatt RyanとJoe Flaccoの成績を見ても、チーム作りのうまいBaltimoreにいるFlaccoがプレイオフで10勝5敗なのに対し、Ryanは今シーズンの快進撃を加えてやっと3勝5敗だ。パッサーとしての能力だけなら明白にRyanの方が上なのに、チーム力でこれだけの違いが生じてしまう。
 JetsもBrownsも49ersも、とにかくこれから再建に取り組むチームは、まず長期にわたって成功しているチームのやり方を分析し、それを上回るようなノウハウを作り出す努力をすべきだろう。ドラフトの引きが悪かった、高額FAが働かなかったと文句を言っているままでは、本当にツキ以外に勝つ道がなくなってしまう。天命を待つ前に人事を尽くす。そのスタンスで臨むチームが増えれば、いずれNFLに本当のパリティがもたらされるのではなかろうか。
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