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 Super Bowlが終わればオフシーズンに入り、次シーズンに向けたそれぞれのチーム作りが始まる。まず最初に見る必要があるのが2017シーズンのキャップスペースだ。Over the Capによると、今年はかなりキャップが空きまくっているらしい"http://overthecap.com/salary-cap-space/"。以前からtankingじゃねーかと言われていたCleveland(106ミリオン)やSan Francisco(78ミリオン)をはじめ9チームが50ミリオン以上のスペースを用意している。本当に苦しいと言えるのは4チーム(10ミリオン弱のPhiladelphia、1ミリオン未満のKansas City、そして現時点で赤字のJetsとDallas)だけだ。
 ちなみにキャップ絡みの数字はそれぞれのサイトによる推計なので、実際には他のサイトも見た方が安全だ。例えばSpotrac"http://www.spotrac.com/nfl/cap/"を見ると、金額や順番が微妙に違っているのが分かるだろう。それでも1、2位や下位4チームは共通しており、全体的な傾向は一致している。
 驚きなのがOver the Capで5番手、Spotracで7番手に顔を出しているNew England。Super Bowlで勝ったばかりのチームが、これだけ上位に顔を出すのはいかがなものだろうか。もちろん一方でFAになる選手も多い"http://nesn.com/2017/02/patriots-have-so-many-important-players-hitting-free-agency-in-2017/"のでスペースが余っているとまでは言えないだろうが、それでもまだ対応しやすい状況にあるのは事実。とりあえずHightowerやButlerあたりをどうするかが最初の課題なんだろう。BruschiやMayoの例を踏まえるならHightowerはキープしそうだが、Butlerについては読めない。
 それにFAで出て行く選手が多ければ、2018年の補償ドラフトが増えるということも当然計算に入れているだろう。今年のドラフトでは5巡と、Collinsのトレードで手に入れた3巡の指名権を手に入れられそう"http://overthecap.com/projecting-2017-compensatory-draft-picks/"だが、今後のFA戦線でBennettあたりが他チームで高額契約をつかめば来年の補償ドラフトにも期待が高まるところ。もちろん代わりにFAやドラフトで穴埋めする必要もあるから単純にはいかないが、彼らは当然そこまで考えているだろう。
 そして穴埋めとなる選手を集める手法は、おそらくこちら"http://www.espn.com/nfl/story/_/id/18558456/"のようなものになる。つまり高位でドラフトされた「失敗」選手たちを安くかき集め、彼らを活躍させて価格をつり上げ、FAとして高額契約で他チームに行かせることで補償ドラフトを手に入れるというサイクルだ。割安な選手を買って割高に売りつけるという手法は、まるで株式取引のよう。経済学にも長けていると言われるBelichickの好む手法なんだろう。もちろんMingoのように上手くいかない例もあるだろうが、トータルとして利益が出るなら全然OKということか。
 この方法にメリットがあるとしたら、ドラフトの成功に頼ることなく強いチームを作れるところにある。今シーズンのCCに出場した4チームのスターターについての分析がこちら"https://blog.masslive.com/patriots/2017/02/how_the_new_england_patriots_k.html"に載っている、1~2巡で指名した選手の数はPittsburghが11人、Altantaが9人、Green Bay8人に対してNew Englandはたった4人。ドラフトは運であり、1~2巡でいい選手を引き当て続けることができる保証がない点を踏まえるなら、Belichickの取り組みはなかなかいいところを衝いている。

 NEの戦略はともかく、今シーズンはFAにとっていい年になる可能性が高そうだとか。Over the Capによれば今年は例年になく多額のキャップスペースが空いている一方で、過去に比べて「偉大なFAたち」が市場に出てくる年ではない"http://overthecap.com/things-watch-free-agency/"。となれば需要供給曲線に従って選手たちの価格は上昇する。腕に自信がある面々は間違いなく市場に打って出るべきタイミングだ。となると例えばPatriotsとHightowerとの契約なども意外に手間取るかもしれない。逆にCollinsと早々に契約したClevelandはうまくやったことになる。
 今年のFAをランキングしたものはこちら"http://www.nj.com/sports/index.ssf/2017/02/top_nfl_free_agents_2017_rankings_kirk_cousins_eri.html"。トップはやはりというべきだがWashingtonのCousinsだ。彼については前年同様にタグを貼られるという話と、San FranciscoのHCになったShanahanが引っ張っていくという話がある。またFAではないがトレードで出てくる可能性が高いDallasのRomoの行方も注目点だ。QBについてはこの2人がトッププロスペクトで、それ以下になるとMike GlennonやJimmy Garoppoloまでスケールダウンしてしまう。
 FAを控えた各チームの体制は、Super Bowl後にShanahanが正式に49ersのHCになったところで整った。結局、今回のシーズンオフにHCが変わるのはSan Franciscoの他にChargers、Rams、Buffalo、Denver、Jacksonvilleの計6チーム。まあ例年並みの水準だろう。この人事にともなって危うくなっていたポストを確保できたのではと見られているのがBlake Bortlesで、新たにvice presidentとなったTom Coughlinも、新HCのDoug Marroneも、Bortlesを自分たちのQBであると認めているという"http://www.usatoday.com/story/sports/nfl/jaguars/2017/01/12/96498872/"。
 結果、ドラフトのニーズにQBが上がっているチームは、こちら"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000714737/article"によるとCleveland、San Francisco、Chicago、Jets、Houstonの5チームに絞られた。一方、ドラフトの50位までのトッププロスペクト"http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000784163/article"に入っているQBはDeShone Kizer、Mitch Trubisky、Deshaun Watsonの3人。やはりドラフトだけでの穴埋めは難しそうで、結果としてRomoやCousinsは当然として、このままだとGlennonあたりまで株が急上昇しかねないところだ。
 ゲームはQBだけでやるものではないが、QBが最も重要な、それも普通に思われているよりずっと重要なポジションであることは間違いない。2002シーズン以降のプレイオフを含めた勝率とオフェンスANY/Aとの相関係数は+0.834と強い相関を示している。もちろんオフェンスANY/AからディフェンスANY/Aを引いた数値との相関係数(+0.942)よりは低いものの、ディフェンスANY/Aと勝率との相関(-0.487)に比べればずっと影響は大きい。長期にわたって成功するチームを作りたければ、一流のQBはやはり欠かせない。
 実際、2002年以降のANY/Aが高い上位チームを見るとNew England(Brady)、Green Bay(FavreとRodgers)、New Orleans(Brees)、Indianapolis(Peyton)、San Diego(BreesとRivers)、Pittsburgh(Roethlisberger)といった具合に、不動のフランチャイズQBを抱えているチームばかりだ。そしてこればっかりはFAやトレードで入手できる機会は滅多にない。たとえ外れが多いといえども、ドラフトで賭けに出るチームがなくなることはないだろう。

 最後にトリビア。最も直近に1巡でQBを指名したのはLos Angeles RamsとPhiladelphia Eagles。2016年のドラフトでそれぞれJared GoffとCarson Wentzを手に入れている。では最も長く1巡でのQB指名を行っていないチームは? 答えはNew Orleans Saints。驚くべきことに、1971年ドラフトの1巡でArchie Manningを指名して以来、彼らは一度も1巡でQBの指名を行っていない。
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