大番狂わせ

 NFL第9週の話をするつもりだったが、米大統領選がこういう結果になったのでそちらの話を。FiveThirtyEight"http://fivethirtyeight.com/"を見ながら継続的に追ってきた選挙の結果が、まさかこうなるとは思っていなかった。
 トランプが大統領選出馬をした直後、彼の支持率はほんの一桁に過ぎなかった"http://elections.huffingtonpost.com/pollster/2016-national-gop-primary"。当時、1年半後にトランプが大統領に選ばれると言って信用する人はどのくらいいただろう。冗談と思われるのが関の山だっただろうが、実際に大統領に選ばれたのはまさにそのトランプだった"http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161109/k10010762231000.html"。
 いや、正確には1年半どころではない。投票直前まで大半の予想サイトはクリントンの勝利確率の方が高いと予想していた。New York Timesのまとめ"http://www.nytimes.com/interactive/2016/upshot/presidential-polls-forecast.html"を見ても、同紙が85%という数値を出しているほか、Predictwiseが89%、Huffington Postに至っては98%など、軒並みクリントン優位を予想していた。最も慎重なFiveThirtyEightですらクリントン勝利の確率は71%と予想していた。
 つまり今回の選挙における最大の敗者は彼ら予想屋だった、という結論も言えそうだが、実はそれだけにとどまらない。彼らの予想が外れた最大の理由は、予想するうえで元になっていた各種世論調査が外れていたからだ。真の敗者は、実は世論調査だったのだ。

 こちら"http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html"にある様々な世論調査の結果一覧を見ればわかるのだが、過去の調査でトランプ優位の結果を出していたのはLA Timesくらい。大半の世論調査はほぼ常にクリントン有利のデータを提供し続けていたのであり、例外と言えるLA Timesについても実は「クリントンが得票率で勝つことは予想できていなかった」"https://twitter.com/NateSilver538/status/796242016120307712"わけで、彼らが正確な調査をしていたとは言い切れない。
 なぜ世論調査は間違えたのか。まず考えられるのが偶然だ。どんな調査であれ誤差はつきもの。今回の選挙では、たまたまどの調査もクリントン有利な結果が出るようなサンプリングをしてしまった可能性はある。しかし、ここまで横並びで間違えているのを見ると、その確率は低そうに思える。
 そうではなく、世論調査のやり方自体に問題があったのではないか。今回よく指摘されているのが「隠れトランプ票」"https://twitter.com/yoookd/status/796255787857408000"の存在だ。世論調査では明言しないが実はトランプを応援しているこの層こそが、今回の彼の勝利をもたらしたのかもしれない。もしそうなら、彼らの動向を掴めなかったことが世論調査の敗因となる。
 なぜ掴めなかったのか。気になるのは世論調査を実施しているのが伝統的なマスメディアであることだ。トランプ支持者たちに既存メディアを嫌う傾向があるのはよく知られているが、そうした態度が世論調査に対しても出ている可能性がある。既存メディアが行う世論調査にまともに答えようとしない彼らのために調査結果が歪んでしまっているのだとすると、今後こうしたメディアが行う世論調査の信頼性はさらに低下するかもしれない。国民の政治行動が一段と読みにくくなってくるのだ。
 今回の選挙は既存政治そのものに対する不信が背景にあると言われているが、そうした不信の対象にはメディアも含まれているのだろう。もし相互不信とそれに伴う連携・協力の欠如が米国民の間に広まり、それが世論調査の不正確さに表れているのだとしたら、それは米国のアサビーヤ"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55668651.html"が衰えつつある証左だとも考えられる。繁栄を極めたPax Americanaの時代が陰りつつあるのだろうか。
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