特に酷いのがAFCで、半分近い7チームが直近5年間以上にわたってプレイオフに出ていない。今シーズンもしOaklandがプレイオフに出れば少しは数値も改善するものの、それでもかなり高い数値が続く可能性が高いという。2012シーズン以降は4年連続でNew EnglandとDenverがシード1、2位を取っており、こうした事例は1990年代前半のSan FranciscoとDallasしかないほどだ。
このエントリーでは不均衡の要因としてQBを中心に説明している。もちろんQBはNFLにおいて最も重要なポジションであり、AFCで格差が広がっている要因として有能なQBがこの十数年AFCに集中していた点は否定できない。だがそれだけは説明として簡単すぎるのも事実。他の要因も当然影響しているだろう。
例えばドラフトだ。これまでドラフト数が多い方が基本的に有利であることは指摘してきたが、ではどの程度有利なのか。とりあえずHoustonがリーグに参加した2002シーズンから2015シーズンまでに各チームがドラフトした選手数と勝率を比較すると相関係数は+0.145。一応プラスの相関なのでドラフトした選手数がプラス効果をもたらしていると言うことはできるだろうが、その影響度はごく限られているように見える。
だが全体のドラフト数ではなく巡別に見ると様相が違ってくる。例えば2巡ドラフト数と勝率との相関は+0.246となり、弱い範囲ではあるがプラスの相関がみられる。5巡と勝率の相関も+0.231であり、また4巡(+0.185)や6巡(+0.137)もプラスだ。逆に7巡は-0.104となっており、僅かながら逆相関。
そして最も成績との相関が高かったのは1巡指名。その係数は-0.307、つまり逆相関だ。1巡指名が多いチームほど成績が悪い傾向がみられるわけである。基本的に各チームは1巡に1回の指名権を持っているはずであり、ここの指名権が多いチームは他の指名巡を使ってトレードアップした可能性が高い。それが全体としてはマイナス効果をもたらしている様子があるのだ。
巡別の違いに注目し、特定の巡だけを集めて計算すると、相関係数はもっと上がる。例えば2、5、6巡指名を合計した数と勝率との相関は+0.418に、さらにそこから1巡指名を差し引いた数字との相関は+0.454にまで高まる。どうやらドラフトは巡によってチームにプラスやマイナスをもたらすようであり、そこをうまく組み合わせたチームほど高い勝率を挙げている可能性があるのだ。
例えば1巡指名が最も多かったのは17人のCleveland(勝率0.335)、Detroit(0.339)、Minnesota(0.493)そしてSan Francisco(0.471)の4チームで、いずれも勝率は5割を切っている。逆に2巡が最も多かったのは20人のNew England(0.763)で、次が19人のDenver(0.607)だ。やはりプラスの相関が高い5巡を見ても、最も多い21人を指名したのはGreen Bay(0.627)で、20人がPittsburgh(0.636)とAtlanta(0.529)である。
2、5、6巡の合計で見ても、最も多いのはGreen Bayの57人で、以下Philadelphia(0.583)の55人、Baltimore(0.567)の54人、そしてNew England、Pittsburgh、Seattle(0.567)の50人と続く。おそらくこのあたりの巡が投資効率の高い指名になるのだろう。逆に1巡はどうしても投資効率が悪くなり、おそらく7巡も同様である。
BaltimoreやNew Englandはこの間、ずっとドラフト戦略のうまさで定評があったチームだ。PhiladelphiaもAndy Reid時代はNew Englandそっくりのドラフトを行っており、それが実績に現れている。SeattleやDenverは特に最近のドラフトで成功している代表的なチーム。彼らがどのような点に比重を置いてドラフトしてきたかには、ある程度の共通した傾向が存在するわけである。
もちろんドラフトだけですべてが決まるわけではない。2、5、6巡から1巡を引いた数が22人と最も少ないNew Orleansは勝率0.545と勝ち越している。だがこのチームはDrew Breesという優れたQBを持ちながら他のポジションが崩壊しているチームでもある。27人と4番目に少ないSan Diegoも勝率0.558だが、こちらもPhilip Riversという出色のQBを生かし切れていないチームだと言える。
QBだけでパリティ不在が説明できてしまうのなら、足元で生じた不均衡はその大半が運不運で説明されてしまう。もしPeyton Manningがアーリーエントリーをしていれば、ColtsではなくRamsが彼を手に入れていた可能性がある。Tom Bradyがここまで偉大な選手になることをBelichickが指名時に予想していたわけもない。彼らが特定チームに所属したのは、かなり運が働いた結果だと言えるだろう。
しかしドラフト戦略は運ではない。サラリーキャップ時代に求められる「投資効率の高い指名」を行うためにはどうするか、きちんとドラフトの効果を見定めて戦略を立て、実行してきたチームでなければ、プラスの結果を手に入れるのは難しかっただろう。NFLのパリティ不在は、勝つために必要な戦略があまりに複雑すぎて多くのチームがそれに気づくまでに時間がかかったために生じたのではないだろうか。結果として一足早くその仕組みを見抜いたチームが、長期にわたって有利な立場を維持していたのだと思われる。
そして、既に指摘していることだが、成績の悪かったチームから順番にドラフトで指名していくという現在の仕組みは、むしろ不均衡の維持にこそ寄与しているように思えてならない。新人のコストを下げたとは言っても指名順が高いほどコストパフォーマンスが悪くなるという傾向は続いている。成績の悪いチームは高順位で指名し、投資効率の悪い選手を抱えることでさらに成績に下押し圧力がかかる。いっそ新人は全員FAにしてしまう方が、よほどうまく競争原理が働き、パリティにつながりやすいと思える。
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