理論の妥当性は、それが予測に役立つかどうかで決まる。どれだけ精緻な議論であっても予測を外しまくるようでは意味がない。同時に、その理論を使えば誰でも予測できるようでなければやはり意味はない。ニュートン以外に使いこなせない運動方程式なんてものがあったとしたら、それを教科書で教えても無駄だろう。
一方、同じデータからエリートの過剰生産も起きている様子が分かる。トップ5~10%の2010年の収入は656万円。これは1971年当時のトップ1~5%の年収(646万円)とほとんど変わらない。上位陣の年収はボトム90%と異なり、45年前よりも高い水準を維持しているのだ。また大学進学率も1972年には2割程度だったのが、最近はほぼ5割に到達している"
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~kyoken/data/13.pdf"。この2つの傾向に政府の財政悪化を加えれば、現在の日本は米国と同じく危機が次第に近づいている時期だと考えられる。
では危機はいつ来るのか。農業社会であれば人口減のタイミングは危機到来の1つのメルクマールである。だが日本は既に2008年をピークに人口減が進んでいる"
http://www.stat.go.jp/info/today/052.htm"。労働人口はそれよりも前から減り始めているのにいまだに実質賃金が低迷しているのは、グローバル化などの要因が働いているためだろう。人口で見るよりも、やはり実質賃金の推移で危機に入るタイミングを調べる方がいいように思える。
危機の到来を予想させる出来事は他にもある。一例はアパート空室率の急増"
http://toyokeizai.net/articles/-/127463"だ。グラフを見てもわかるが、足元で急激に空室率が増えている。理由は賃貸アパート自体が急増しているから。基本的には相続税の増税をきっかけとした動きなのだが、レントが減少していく流れはまさに危機フェイズに特徴的だと言える。人口が減るのにアパート供給を増やしてもいいことはない。資産を持つ人間にとって不利な状況が訪れつつあるのかもしれないのだ。
危機の訪れがあるとして、それが欧米のような物理的紛争につながるかどうかは分からない。日本の場合、例えば江戸時代に人口増が止まった後に行われたのは改革の取り組みであり、エリート間の過当競争ではなかった。考えてみれば日本では20世紀末から何度も改革の掛け声が上がっており、既にその時から危機モードに入っていたのかもしれない。ただはっきりしているのは、これから資産を持つのは相対的に有利とは言えなくなる可能性があること。むしろ次に来るのは労働者の楽園かもしれない。そうであるなら、今こそ子供を作るべきときだ。
もちろんもっと詳細に調べなければ詳しいことは言えないが、もしかしたら21世紀初頭は世界的にとても不穏な時代になるかもしれない。そうならないことを祈っているけど。
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