ディベート

 しばらく言及していなかったが、米大統領選は全国大会直後のワンサイド的状況から再び接戦モードへと移行している。何よりクリントンの健康問題が大きな要因の一つだろう。徳川家康の例をあげるまでもなく、健康は政治家にとって最も重要な資質だ。だいたいは生き残ったやつが勝者になる。その意味では70際前後の候補者のどちらに今後4年の政治を任せるべきかを選ぶ今回の選挙は、米国民にとってしんどい選択かもしれない。
 直近のイベントはもちろん討論会。この後にまだ2回同じイベントがあるため現時点で結論を出すのは早いが、まず1回目に関してFiveThirtyEightはクリントンの勝利と判断している"http://fivethirtyeight.com/features/clinton-won-the-debate-which-means-shes-likely-to-gain-in-the-polls/"。CNNの調査"http://i2.cdn.turner.com/cnn/2016/images/09/27/poll.pdf"やこちらの調査"http://www.publicpolicypolling.com/main/2016/09/voters-nationally-say-clinton-won-debate-5140.html"などが理由だ。
 基本的にFiveThirtyEightは伝統的な世論調査、それもインタビュー形式のものを高く評価している。それに対し、様々なネット調査"https://twitter.com/realDonaldTrump/status/780796008854876160"についてはnon-scientific online pollsとばっさり切り捨てている"http://fivethirtyeight.com/features/what-could-the-polls-be-missing/"。加えて討論会後にメキシコペソが米ドルに対して急上昇したのも、トランプが負けたという市場の評価が背景にあると見られる"https://www.ft.com/content/140c1c02-846e-11e6-8897-2359a58ac7a5"。
 そうした判断が正しいかどうかは、討論会後の世論調査が出そろうのを待つしかないだろう。現時点での支持率はクリントンが3~5ポイントほどリードしている("http://www.realclearpolitics.com/epolls/2016/president/us/general_election_trump_vs_clinton-5491.html"や"http://elections.huffingtonpost.com/pollster/2016-general-election-trump-vs-clinton")。一時期よりは差が詰まっているが、足元ではまた少し引き離したところだ。
 現時点でかなりクリントン優位を予想しているのはNew York Times"http://www.nytimes.com/interactive/2016/upshot/presidential-polls-forecast.html"で70%の勝利確率を見ている。またこちらの予想市場"http://predictwise.com/politics/2016-president-winner"も70%超の確率でクリントンが勝つと見ており、いずれも一方的とまでは言えずともかなりクリントンがfavoriteになっているのは確かである。
 それに対しFiveThirtyEightは慎重だ。Polls-onlyの予想"http://projects.fivethirtyeight.com/2016-election-forecast/"でクリントンの勝率は62%。討論会の成功で再び上向いてきたが、一時は55%台まで落ち込むなど決して楽な戦いではないとみている。どうやらトランプは思っていたよりも強い、と考えるべきなのかもしれない。

 これでもしトランプが大統領選に勝つようなことになれば、Peter Turchinが永年サイクルに基づいて主張している「エリートのワナビー"http://peterturchin.com/blog/2016/04/19/donald-trump-as-an-elite-aspirant/"が不満を抱く大衆に支持される」時期、つまりクライシスが迫っていることを示す一例になる可能性がある"http://www.ibtimes.com/political-capital/what-ancient-history-has-say-about-near-future-doom-2354723"。もしかしたらここまでのトランプの粘り強さは、既存エリートに対する大衆及びエリートワナビーの不満がそれだけ高まっていることを示す証拠かもしれない。
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