逆立ちっ

 新聞の科学面にナメクジウオの話が載っていた。驚いたのは、脊椎動物の先祖から分岐した順番を見るとナメクジウオ(頭索動物)の方が先で、その後になってホヤ(尾索動物)が分岐したという話。以前はホヤの方が先に枝分かれし、その後でナメクジウオが分かれたと見られていたのだが、最新の研究では逆になっているのだという。おそらくこちら"http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/scripts/evol.html#060302"で紹介されている説などに基づく知見だろう。
 固着生活を送るホヤの方が普通に泳いでいるナメクジウオより我々に近縁であるというのも驚きだが、一つ残念なのはドーキンスが「先祖の物語」で紹介していたジョークが使えなくなること。ドーキンスはホヤの方がナメクジウオより先に分岐したとの前提で、脊椎動物+ナメクジウオはホヤの幼形成熟(ネオテニー)ではないかという説が昔あったと記していた。ホヤは幼生のうちはオタマジャクシのような姿で泳ぎ回り、成体になると海底に固着する。このオタマジャクシのまま一生を過ごすようになったのが我々の先祖、というのがネオテニー説だ。そのうえで先祖返りを起こした人間がテレビの前で頭を下にしてソファに張り付いてしまうというオチを示していた。
 ドーキンスによると最近はこの説はあまり支持されなくなっていたようだ。加えてナメクジウオの方が先に分岐したのだとすると、ネオテニー説は一層成り立ちにくくなる。この場合、ホヤと脊椎動物の共通先祖はナメクジウオのように一生泳ぎ回っていたと考えるのが普通。やがてホヤの先祖のみが成体になると海底に固着する生活へと特殊化を遂げ、脊椎動物の先祖たちはナメクジウオ同様の暮らしを続けたと見られる。ネオテニー説よりは面白みはないが、子孫の大半が固着しない生活を送っている以上、こちらの方が妥当な見解だろう。

 ちなみに上に紹介したサイトでは珍渦虫なる生物についての話も載っている"http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/scripts/evol.html#061106"。極めて単純な姿をしたこの生物は二枚貝の一種だと考えられていたそうだが、最近になってその位置付けが変わったらしい。我々脊椎動物を含む新口動物の一種だとか。珍渦虫はこちら"http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ken/story/07.html"のような姿をした奇妙な生き物。これが我々の比較的近い親戚だというのだから、ホヤくらいで驚いていてはいけない。

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