遺伝的アルゴリズム

 以前書いたこちら"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/56010397.html"に追加。火器の発達を生物進化になぞらえられるのではという話なんだが、同じく生物進化を利用した遺伝的アルゴリズムとも共通性はあるかもしれない。特にこちら"http://www.sist.ac.jp/~kanakubo/research/evolutionary_computing/island_mgg.html"に出てくる「局所優良解」という概念は、色々と応用が利きそうだ。
 具体的に言うなら、中国はまさに「局所解」に陥った典型例に見える。北宋時代も、明や清の平和も、それぞれの局面で武器の進歩は止まるか極めてゆっくりしたものと化していた。中央集権的な火器開発や製造体制を敷いていたおかげで「解の多様性」が失われ、局所優良解以上の解が出てこなくなる状態に陥っていたのではないだろうか。
 彼らがその停滞状態から脱し、全体の中の最適解へ向けて足を踏み出したのは、他国の侵略と遭遇した時だ。「島モデル」で見るなら中国はまさに島であり、そこに他の島から新しい火器が「移住」してくることによってそれまで停滞していた進化が再び動き出す。欧州のように多様性が維持され続けたところでは、いわば常に移住が存在している状態であり局所優良解で足止めされることがなかった。だが孤立した島のような地域だった中国は、しばしば局所優良解が拡散し、火器はそこに収束していったのだろう。
 局所解に陥らないためには多様性を維持する必要があるのだが、たとえば明代に一度は地方へと広まった火器製造が再び中央に集められるなど、中国の体制は多様性を減らす方に舵を切った。まさにそれこそが局所的には優良な解であったことは確か。でも多様性が失われることは遺伝的アルゴリズムで言えば最適解への道を妨げることも意味する。常に不安定であった欧州の方が、安定した体制を作り上げた中国よりも最適解に近づきやすい状況にいたと言える。
 こちらの記事"http://www.4gamer.net/games/265/G026574/20160901121/"では、ゲームをプレイするAIを遺伝的アルゴリズムで開発したところ「必然的に『ガチ勢』のプレイに肉薄して」いったことが指摘されている。あまりガチすぎるとゲーム開発上は問題があるらしいのだが、このアルゴリズムが現実の世界でも稼働しているのだとしたら、うっかり局所優良解に陥ってしまうことがどれほど危険であるか分かるだろう。ガチ勢ばかりの中にぬるゲーマーがいきなり放り込まれてゲームをさせられるようなものであり、アヘン戦争以降の中国はまさにそんな状況にあったのかもしれない。

 ちなみに遺伝的アルゴリズムについてはこういう動画"https://www.youtube.com/watch?v=gWExx-NpimQ"があるのだが、これを見るとある意味ホモ・サピエンスのハイハイは局所優良解に陥っているのかもしれない。単に移動速度を上げるだけなら、後ろ向きにハイハイする方がむしろ全体最適解に近いとも言える。もちろん動画のモデルは「視界」を取り入れていないから、現実のホモ・サピエンスと一緒にすることはできないんだが。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック