計算してみた

 近くBDが発売される作品"http://girls-und-panzer.jp/"で、錆びついた頭の体操を。こちらの動画"https://www.youtube.com/watch?v=nhz_yFT3dJI"の1:48あたりに、マウス"https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%82%B9_%28%E6%88%A6%E8%BB%8A%29"の砲撃でB1bis"https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BCB1"が派手にひっくり返るシーンがある。この「縦回転で吹っ飛ばす」"http://dic.pixiv.net/a/%E8%B6%85%E9%87%8D%E6%88%A6%E8%BB%8A%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%82%B9"場面を通じ、マウスの強さを分かりやすく表現しようとしたものだろう。
 フィクションなのだから、こうしたアニメならではの誇張があっても問題はない。縦回転どころか2回転半ひねりを加えたとしても、面白ければOKである。だが一方で、実際にはこの場合にどのような挙動をするかについても知りたくなる。そこでちょっと計算してみた。

 まずマウスの砲弾が持つ運動量を調べてみよう。マウスの主砲は「55口径 12.8cm KwK44戦車砲」"https://ja.wikipedia.org/wiki/12.8_cm_PaK_44"であり、徹甲弾は弾頭重量28キログラム、初速は935m/sだそうだ。つまり撃ち出された直後の砲弾の運動量は、質量と速度の積である26180kg・m/sとなる。
 B1bisは至近距離から撃たれているため、この運動量がほぼそのまま伝わったと仮定しよう。B1bisの重量は32トン=32000キログラムであるため、運動量を質量で割った速度は0.818m/sとなる。つまり水平に撃ち出されたマウスの砲弾が命中したB1bisは、秒速およそ80センチで後方へと押されることになる。もしあの路面の摩擦係数が極めて小さかったなら、人が歩くより少し遅い程度のゆっくりとした速度でB1bisが後ずさることになる。
 だが動画ではB1bisは後ずさるのではなくひっくり返っている。おそらくB1bisの底面最後尾が路面のくぼみだか突起だかによって固定されてしまい、そこを支点としてB1bisが回転した結果、ひっくり返ることになったのだろう。その前提でこの運動が物理的にどう計算できるか考えてみる。
 B1bisの重心を、単純に全長(6.38メートル)と全高(2.81メートル)の真ん中と考える(実際にはもっと低く前寄りにあると思われるが、ここでは簡略化する)。カシオが開いている「高精度計算サイト」の直角三角形計算ページ"http://keisan.casio.jp/exec/system/1259903491"を使い、底辺3.19、高さ1.405の直角三角形を調べると斜辺(つまり固定された支点から重心までの距離)は3.4857、角度θは23.77度となる。
 一方、砲弾が重心に真横からぶつかったとすれば、B1bisの重心に働く速度は水平に0.818m/sである。このベクトルを、重心から支点に向かうものと、それと垂直になるベクトルとに分割する。斜辺0.818、角度θ23.77で計算すると、底辺(つまり重心から支点へ向かうベクトル)は0.7486に、高さは0.3297になる。支点に向かうベクトルは固定されているためB1bisの運動には寄与しない。垂直に働くベクトルのみがB1bisを「ひっくり返す」ことができる。
 B1bisがひっくり返るには、重心が支点の真上まで来る必要がある。重心の動きを放物線の挙動になぞらえて考えるなら、放物線の到達高度が(3.4857-1.405)メートルを超えればその条件を達成できる。しかし放物運動のページ"http://keisan.casio.jp/exec/system/1204505751"で初速0.3297m/s、打ち出し角度(90-23.77)度で到達高度を調べると、到達高度は0.0046メートル=4.6ミリメートル。エンジンの振動の方が大きいのではないかと思われるレベルにしかならない。
 つまりマウスの砲撃を至近距離で受けたとしてもB1bisはほぼ微動だにしないのである。ひっくり返るどころかほとんど浮き上がることすらなく、白旗を上げて動かなくなるだけだ。現実であれば装甲に大穴が開くところだが、謎カーボンのおかげでそれすらなし。マウス砲弾の運動量はB1bisの底面最後尾を固定しているくぼみだか突起だかを通じて路面へと伝えられ、それで終わりだ。

 ではどうにかしてアニメのようにB1bisをひっくり返すことはできないのだろうか。こちら"http://keisan.casio.jp/exec/system/1204505822"を使って打ち出し角度66.23、到達高度2.0807メートルを達成するのに必要な速度を調べると6.98m/sとなる。この数字を出すためにはB1bisの重心は17.3173m/sで水平に移動しなければならない。運動量は554154kg・m/sだ。
 この運動量を達成するにはマウス主砲の弾頭重量を593キログラム(史実の21倍以上)にするか、砲弾の初速を19791m/s(音速の58倍強)にするか、さもなくばB1bisの重量を1512キログラムまで減らすしかない。つまりB1bisが中型乗用車並みまで軽量化すればあの「縦回転」も物理的に可能になるわけだ。でも中型自動車の長さや高さはB1bisよりずっと小さい。つまりあの作品に出てくる戦車は、実は比重で見れば中型自動車よりさらに軽いことになる。
 でも、実際の重量に比べ20分の1程度まで軽くなった戦車が使われていると考えれば、あの作品中に出てくる戦車がやたらめったら軽快に動いているのも辻褄が合う。cv33などは150キログラム程度になる計算で、大型二輪の方がよほど重い。倒れたcv33を女子高生2人が簡単に立て直せる"http://www.pixiv.net/member_illust.php?illust_id=44656408&mode=medium"のも、そう考えれば実は「正しい描写」かもしれない。
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