25ヤード地点

 Manningロス?でしばらくNFLのニュースを追っていなかったのだが、何でもタッチバック後のプレイ開始地点を自陣20ヤードではなく25ヤードにすることが決まったらしい"http://www.usatoday.com/story/sports/nfl/2016/03/23/82158540/"。狙いはキックオフ時のリターンを減らすことでケガのリスクを下げることにあるんだそうだ。
 これに対し、報道の多くはむしろリターンが増える可能性を指摘している("http://www.chicagotribune.com/sports/football/bears/ct-touchbacks-rule-change-proposal-20160321-story.html"や"http://deadspin.com/new-touchback-rule-designed-to-reduce-number-of-kickoff-1766603355"など)。Football Outsidersでも「スクイブキックなどで20ヤード以内からのリターンを強いるようなキックが増えるのでは」"http://www.footballoutsiders.com/extra-points/2016/nfl-moves-touchbacks-25"と想定している。
 2015シーズンのキックオフ後のドライブ開始地点は23.2ヤード。タッチバックは20ヤード地点から始めればいいため、キッキングチームにとってはタッチバック狙いは合理的だった。だがルールが変わりタッチバック後のドライブが25ヤード地点から始まるなら、タッチバックを避けてリターンさせるように蹴るべきようにも思える。

 実際、15シーズンのデータだけ見ればそうなる。Pro-Football-ReferenceのDrive Finder"http://www.pro-football-reference.com/play-index/drive_finder.cgi"で調べてみると同シーズンを通じてキックオフ後に始まったドライブ数は合計2515ドライブ。そのうちTDあるいはFGで得点につながったのは805ドライブであり、スコア率は32.0%となる。
 このうちちょうど20ヤードで始まったドライブは1482あり、うち474ドライブが得点に結びついている。スコア率は全体の数値と同じ32.0%だ。NFL.comによると15シーズンのタッチバックは計1470回だったので、リターンの結果として20ヤード地点から始まったのは12ドライブだった計算になる。
 また19ヤード以内から始まったドライブ数は371、得点したのは102でスコア率は27.5%、21ヤード以上から始まったものは578ドライブで得点は205、スコア率35.5%となる。これらのドライブはいずれもタッチバックでなかったものだろう。これに20ヤードから始まったもののうちリターンの結果と思われる12ドライブを足すと961ドライブになる。うち得点が期待できるのは102+205+(12*0.32)=310.8ドライブ、スコア率は32.3%と計算できる。
 15シーズンまでのルールに従うなら、タッチバックの場合のスコア率(32.0%)はリターンされた場合のスコア率(32.3%)より低く、キッキングチームがタッチバックを狙う合理的根拠があった。だがドライブ開始地点が25ヤードになるとドライブ数58のうち得点につながったのが20ドライブ、スコア率が34.5%へ上昇し、リターンされる場合より高まる。即ち、キッキングチームはタッチバック狙いで深く蹴り込むより、リターンを強いるようなキックを蹴る方が有利という計算になる。各マスコミが指摘している通りだ。

 だがこの場合、特に開始地点が25ヤードの時の母数が少なすぎる。そこで期間を13-15シーズンの3年間に延ばすと、状況は変わる。リターンした場合のスコア率は31.5%に、20ヤード地点からのスコア率は29.9%に、そして25ヤード地点だと30.9%(191ドライブのうち59ドライブが得点)となる。この場合マスコミの指摘とは逆に引き続きタッチバック狙いのキックオフが正解であり、リターンを減らしてケガを回避するというNFLの狙いは満たされる計算だ。
 さらにキックオフのルールが変更された11シーズン以降の5年間に調査対象を増やそう。すると20ヤード地点からのスコア率は29.4%、25ヤード地点だと31.2%(321回中100回得点)、リターンされた時のスコア率は30.7%となり、再びリターンさせる方が有利という結果になる。つまりデータの取り方によってキックオフでのタッチバック狙いが増えることも減ることもあり得るわけだ。
 現実はこの数字ほど簡単ではない。リターナーが有能だったり、味方のカバーチームが弱体だったりすれば、やはりタッチバックを狙った方がいいこともあろう。リターンさせようと狙って20ヤード以内にボールを落としても、リターンチームがエンドゾーンまで転がるのを見送り、タッチバックにさせることだってある。
 要するにルール改定の影響がどうなるかを断言するのは現時点では難しいということだ。トータルでNFLの狙い通りリターンが減るかどうかはやってみなければ分かるまい。だからリーグもこのルールをまずは「1年限定」で採用することにしたんだろう。

 ただこのルール変更がドライブ指数"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55625618.html"に影響するのは間違いない。少なくともこれまで後退してきたドライブ開始地点が一度前進するのは確かだろう。15シーズンに27.7ヤード地点にあったドライブ開始地点は、単純に考えれば29.0ヤードほどまで進む可能性がある。その後は16シーズンにリターンが増えるか減るかによって状況が変わるだろう。
 リーグの狙いがはずれリターンが増えるようになれば、1年後にはルールが元に戻りドライブ開始地点も元に戻る。だが狙い通りにリターンが減ってルールが恒常化した場合、キックオフを使ってドライブ開始地点を下げることはその後も困難になるため、これまでよりドライブ開始地点が下がる速度が遅くなると思われる。ドライブ距離そのものの伸び方によっては、これまで一定範囲にとどまっていたドライブ指数が上昇に転じる可能性もある。
 個別チームごとに影響を見るなら、タッチバックの比率が高いチームにまずマイナスの影響があると見るべきだろう。15シーズンで言えばIndianapolis(87.0%)、Baltimore(85.1%)、Denver(69.7%)、Atlanta(68.4%)などだ。逆に飛距離のないキッカーを抱えるCleveland(38.6%)、Jets(39.5%)、Giants(39.8%)などの影響は限定的と見られる"https://www.teamrankings.com/nfl/stat/kickoff-touchback-pct"。キッカーに関して言えば、飛距離よりもパンターのように高く蹴り上げる能力が求められるようになるかもしれない。
 まずは1年間、ルール変更の影響を見るべきだろう。果たしてキッキングチームはタッチバックを減らそうとするのか、リターンチームは増やそうとするのか、それともいずれも逆に動くのか。キックオフ地点を前進させた時ほどはっきりとした傾向が出てくるかどうかは読み切れない。
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