1968年

 米大統領選の予備選は共和党で3月分が終了。FiveThirtyEightによれば現時点でトップを走るトランプの見込み代議員数は754人。過半数への目標値(789人)の96%にとどまっている"http://projects.fivethirtyeight.com/election-2016/delegate-targets/"。クルーズは465人(53%)、ケーシックは144人(22%)だ。
 果たしてトランプは過半数に達することができるのか。こちら"http://fivethirtyeight.com/features/the-most-important-states-on-trumps-path-to-1237-delegates/"ではトランプが過半数を取るために最も大事な州はどこかという議論をしているのだが、そこではカリフォルニア、ウィスコンシン、ニューヨーク、インディアナ、ウェストバージニアなどやたらとたくさんの州の名前が挙がっており、要するにまだ先が読めない。おそらく最後の予備選が行われる6月7日までトランプが過半数に届くかどうか分からない、というのが結論だ。
 最終的にトランプが代議員数でトップになることはおそらく間違いないだろう。だが過半数を取れなければ全国大会で彼を候補者から引きずり下ろすことができる、との意見もある。果たしてそれは可能なのか。かつて全国大会で派手にもめた例としては、1968年のシカゴでの民主党大会がある"https://en.wikipedia.org/wiki/1968_Democratic_National_Convention"。
 当時、民主党で予備選を行っていたのは一部の州に限られていた。そしてそれらの州ではベトナム戦争に反対し、現職のジョンソン大統領に敵対的な候補者が大半の票を集めた"https://en.wikipedia.org/wiki/Democratic_Party_presidential_primaries,_1968"。だが、予備選を行わない州ではジョンソンの後継者であった副大統領ハンフリーが大半の代議員を集め、また予備選で多くの代議員を得ていたロバート・ケネディが暗殺されたこともあり、シカゴ全国大会ではあっさりハンフリーが勝利したという。党員の支持をほとんど得ていない人物が候補者になった格好だ。
 この大会の際には反ベトナム戦争を掲げる者が集まり、暴動騒ぎを引き起こしたという。今回の選挙でトランプが「指名なければ暴動起きる」"http://jp.wsj.com/articles/SB12798596211232484180504581604060715766854"と言っているのは、過去にそうした事例が実際にあったからだろう。だがそれより民主党にとって痛手だったのは、この騒動を通じて彼らの支持基盤が解体してしまったことだ。
 フランクリン・ルーズヴェルトが築き上げたいわゆる「ニューディール連合」"https://en.wikipedia.org/wiki/New_Deal_coalition"のうち、大都市の党有力者と労働組合はハンフリーを支援したが、学生たちと知識層は最初に反ベトナム戦争を掲げて立候補したマカーシーを、カトリックと黒人、その他人種的マイノリティーはケネディを支持した。そして既に民主党支持から離れつつあった南部の保守的白人層は次第に共和党寄りになり、1980年のレーガン登場で完全に共和党支持にシフトした。
 支持基盤の解体は大統領選における民主党の勝敗にはっきりと現れている。ニューディール連合が成立した1932年の大統領選から1964年までの9回の大統領選のうち、共和党が勝ったのはアイゼンハワーの2回だけ。だがニューディール連合が崩壊した1968年から2004年までの10回の大統領選を見ると、民主党はカーターの1回、クリントンの2回の計3回しか勝っておらず、残る7回は全て共和党が勝ちを収めている。
 そして今回は共和党だ。レーガンが築き上げた支持基盤のうち、一部はトランプに、一部はクルーズに吸い取られ、主流派は前にも述べた通り今や少数派となってしまっている。ネオコンの理論的支柱と呼ばれるケーガンは、トランプを「共和党が生み出したフランケンシュタインの怪物」"https://www.washingtonpost.com/opinions/2016/02/25/3e443f28-dbc1-11e5-925f-1d10062cc82d_story.html"と述べ、共和党のこれまでの政治的姿勢がこのような候補者をトップランナーにしてしまったと分析している。
 もちろん、まだ共和党の支持基盤が四分五裂すると決まったわけではない。むしろ「今の共和党は(比率が減る白人や地方在住者に依存しているため)人口構成の変化に対応できていない」"http://kaseinoji.hatenablog.com/entry/trump-and-beyond"という指摘が正しいなら、ここで改めて支持基盤を組み立て直す方が将来的には正しい選択かもしれない。トランプとは、限界が迫っている今の支持基盤を壊すために共和党に送り込まれた運命の使者なのかもしれない。

 ちなみにまだ3月分の投票が残っている民主党は、引き続きクリントンがリードしている。superdelegateまで含めれば過半数(2383人)の7割を既に達成している状態なので、後はサンダースがどこまで票を取れるかという関心しかないだろう。
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