マウリッツのいとこがカウンターマーチについて手紙を書く7年前の1587年。英国のウィリアム・ギャラードがThe arte of vvarre"
http://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A01504.0001.001"という書物をロンドンで出版した。その中のIn what sort Hargabuziers and Archers are to be guided to skirmishという項目で、彼は飛び道具の使い方について「列ごとに斉射し、そして第1列は射撃の後に最後尾に来るまで列の間を後退し、そこで装填し再び軍務に就くよう前の者に続く。こうして競り合いを続けることができる」と記している。
確かに左下を見ると、鎖でつないだ砲列の背後に、2列に並んだ銃兵が見える。前列の4人は装填中であり、後列の3人は前列の隙間から銃を構えて撃とうとしている。どうやらこちらはマウリッツ式のカウンターマーチ方式ではなく、各列の兵が動かないまま再装填を行う方法で輪番射撃をしているようだ。こちらの本"
https://books.google.co.jp/books?id=hbyYCgAAQBAJ"ではこの図について「初期の輪番射撃を行っているように見える」と指摘。1605年にはオスマンの文献資料にも輪番射撃の記述が出てくるとしている(p241-242)。
そうだとするなら、やはり最大の「軍事革命」は産業革命だった、と考える方が適切なのかもしれない。西と東の「大分岐」をもたらしたのは間違いなく産業革命。インドを除いて植民地化が進んでいなかった旧世界が相次いで欧州の軍門に下ったのも産業革命後の19世紀だ。16世紀前後から始まる「軍事革命」は、その成果を見る限りあまり過大評価するべきものではないかもしれない。
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