序盤戦終了

 米大統領選予備選はスーパーチューズデー前の4州での争いが終わった。民主・共和両党とも現時点で本命が3勝。特に直近の勝利は本命に勢いをつけるような恰好となっており、この流れがスーパーチューズデーでも続けば本選での組み合わせもかなりはっきり見えてくるかもしれない。

 共和党でトランプの勢いが次第に増しているのは否定できないだろう。FiveThirtyEightがまとめている各州の世論調査"http://projects.fivethirtyeight.com/election-2016/primary-forecast"を見ると、トランプはこれまでアイオワで28.6%、ニューハンプシャーで29.8%、サウスカロライナで32.5%、そしてネヴァダで39.5%の支持を得ていた。だが実際の得票率になるとそれぞれ24.3%、35.3%、32.5%、そして今回が45.9%。アイオワでは世論調査を下回っていたのにその後で持ち直し、ネヴァダでは上乗せ幅が6ポイントを超えた。
 全国的な世論調査でもその傾向がうかがえる。Huffington Postがまとめている世論調査結果"http://elections.huffingtonpost.com/pollster/2016-national-gop-primary"によると直近のトランプ指示は38%と過去最高に到達。2位のクルーズは18.5%と伸び悩み、3位のルビオ(17.1%)に追い上げられている。全国調査はあまり予想の役に立たないとはいえ、この勢いは否定できない。
 もう1つ、反トランプ派が失ったものがある。時間だ。結局彼らは2月の1ヶ月間を、互いの足の引っ張り合いで潰してしまった。乱立していた候補者はかなり減ったとはいえ、いまだに5人残っている。スーパーチューズデーまでに力を合わせて巻き返しに出るだけの時間はもう残っていない。そしてカーソンやケーシックはともかく、ルビオとクルーズはスーパーチューズデーを過ぎてもなお戦い続ける可能性は十分にある。バラバラ状態がさらに長引くわけだ。
 ブッシュ撤退によって主流派希望の星となったルビオが善戦していないわけではない。ネヴァダについて言えば、直近1週間以内に投票を決めた人の中で支持者が最も多かったのはルビオだし"http://www.nbcnews.com/politics/2016-election/primaries/NV"、世論調査ではクルーズに負けていたのに本番ではクルーズを抜いて2位になったことも事実"http://elections.huffingtonpost.com/pollster/2016-nevada-republican-presidential-caucus"。だがそれでもトランプにダブルスコア近い差をつけられているのはかなり厳しい。
 スーパーチューズデーで投票が行われる州のうち、9州ではトランプが複数世論調査の平均で支持率トップ。クルーズがテキサスとアーカンソーで優位に立っているが、ルビオはトップと言える州がない(単独の世論調査ならミネソタで首位になったことはある)。現時点ではむしろトランプの勢いが増す可能性が高いと考えてもいいだろう。
 現時点での代議員数はトランプ82人に対してクルーズ17人、ルビオ16人"https://interactives.ap.org/2016/delegate-tracker/"。何度も紹介しているこちらの記事"http://fivethirtyeight.com/features/beware-a-gop-calendar-front-loaded-with-states-friendly-to-trump-and-cruz/"で目標達成度を測るなら、クルーズ23.0%、ルビオ48.5%に対し、トランプは113.9%となる。スタートダッシュに成功したトランプと、それに失敗した残り2人という構図が明らかだ。
 こうした状況を踏まえたのか、共和の中でもトランプ勝利を見越したような動きが始まった。代表例がニュージャージー州知事のクリス・クリスティーによるトランプ支持表明"http://fivethirtyeight.com/features/christies-endorsement-of-trump-totally-makes-sense/"。他にも既存政治家のトランプ支持が次第に増えつつあり、FiveThirtyEightのEndorsement Primary"http://projects.fivethirtyeight.com/2016-endorsement-primary/"ではトランプ支持がサンダース支持よりも高くなっているほどだ。追い落とせないならむしろ手綱をつけよう、ということかもしれない。
 もちろんまだもつれる可能性はある。こちら"http://fivethirtyeight.com/features/republicans-last-ditch-hope-to-stop-donald-trump/"で指摘しているように候補者乱立が続きトランプが代議員の過半数を取れなくなった場合、7月に開かれる共和党全国大会で候補者が決まることになる。代議員たちは少なくとも1回は選ばれた対象候補に投票しなければならないが、実は2回目以降は自由に投票できる。2位以下が手を組んでトップ候補を追い落とすことが可能なのだ。もしかしたら変に反トランプ候補の一本化を図るより、乱立を続けて大会に持ち込んだ方が主流派にとってはいいかもしれない。

 混迷の可能性が残る共和に対し、民主は本命の足場固めが明確になってきた。サウスカロライナの予備選ではクリントンが実に4分の3近い票を獲得し、サンダースに大差をつけて圧勝"http://www.nytimes.com/elections/results/south-carolina"。superdelegateを除いた53人の代議士のうち39人を確保した。これで4州合わせた代議士数(除くsuperdelegate)はクリントン91人に対しサンダース65人。superdelegateを含めればクリントン544人に対してサンダースは85人と圧倒的だ。
 中でもサウスカロライナの黒人によるクリントン支持は86%と圧倒的だった"http://www.cbsnews.com/elections/2016/primaries/democrat/south-carolina/exit/"。白人票でもクリントンが54%と過半数を占め、年齢別では24歳以下を除いて全てクリントン勝利。サンダースが支持を広げきれていない様子が窺える。
 FiveThirtyEightではサンダースが勝利するため、各州でどの程度の票を取る必要があるかをまとめている"http://fivethirtyeight.com/features/bernie-sanders-doesnt-need-momentum-he-needs-to-win-these-states/"。例えばアイオワではクリントンを19%ポイント上回る必要があったのだが、実際は同率、つまりクリントンが19%ポイントだけ勝利した。ニューハンプシャーではクリントンの10%ポイント勝利、ネヴァダでは5%ポイント勝利だった。
 ここまではまだ五分ではないもののじわじわとクリントンを追い上げていたサンダースだったが、サウスカロライナでは実に47.5%ポイント差の敗北。五分にするために必要な20%ポイント差に比べ27.5%ポイントも負けてしまった。そしてスーパーチューズデーに投票が行われる各州を見ても状況は同じ。世論調査のある州を見ると、そのすべてにおいてサンダースは必要な票に及ばない支持しか得られていない。要するに現状で彼が勝てる要素は見当たらないのだ。
 FiveThirtyEightはこちら"http://fivethirtyeight.com/features/south-carolina-primary-results-2016-democrat-clinton-sanders/"の記事で、サウスカロライナがサンダースの敗北へと至る「終わりの始まり」を告げたのではないかと見ている。排外主義のポピュリストはまだまだ元気いっぱいだが、社会主義者の方はそろそろ退場の時が迫っているようだ。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック