予備選第3幕

 米大統領選の予備選は3つ目の州に突入した。民主党はネヴァダで党員集会、共和党はサウスカロライナで予備選が実施され、民主ではクリントンが、共和ではトランプが勝利。民主"http://projects.fivethirtyeight.com/election-2016/primary-forecast/nevada-democratic/"も共和"http://projects.fivethirtyeight.com/election-2016/primary-forecast/south-carolina-republican/"も勝者はFiveThirtyEightの予想通りであった。
 個々の勝ち負けもさることながら、それぞれの候補者がこれまでに獲得した代議員の数も重要である。その一覧はこちら"http://www.bloomberg.com/politics/graphics/2016-delegate-tracker/"やこちら"http://interactives.ap.org/2016/delegate-tracker/"で閲覧することが可能。これを見ると、従来の報道とは異なる印象を受けるものもある。
 特にその印象が強いのは民主党。クリントンとサンダースが2勝1敗になったと伝えられることが多い(例えば"http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160221/k10010416711000.html")のだが、代議員の数では2対1どころか502対70で圧倒的にクリントンがリードしている。3つの州の予選結果だけならクリントン、サンダースとも51人で接戦なのだが、Superdelegatesと呼ばれる仕組みを通じて多くの代議員がクリントンを支持していることが影響している。
 Superdelegates"https://en.wikipedia.org/wiki/Superdelegate"とは、民主党の上下両院議員や州知事など特別に代議員としての権限を与えられた面々で、州の投票結果とは無関係に自由に投票先を選ぶことができるそうだ。元々民主党の主流派の間では圧倒的にクリントンが支持されている"http://projects.fivethirtyeight.com/2016-endorsement-primary/"。そもそもサンダースは直前まで民主党員ですらなかったのでこれは当然の話。つまりサンダースは単純に勝つだけでなく、この制度による数的不利をひっくり返すだけの大勝を収める必要があるのだ。
 日本ではネヴァダで世論調査より高い得票を得たとしてサンダースの勢いを強調する報道もある(例えば"http://www.asahi.com/articles/ASJ2P2FBJJ2PUHBI00D.html")が、米国ではむしろクリントンの決定的勝利"http://edition.cnn.com/2016/02/20/politics/nevada-caucus-democrats-2016/"、指名権獲得への重要な一歩"http://www.huffingtonpost.com/entry/hillary-clinton-nevada-caucus_us_56c791a6e4b0ec6725e2a55b"と位置付ける論調が目立つ。上記のような代議員の状況を踏まえるなら、確かによほどサンダースが頑張らなければクリントンには勝てない。
 ただ、私が米大統領選の報道をするなら、多くのマスコミ同様に、今こそサンダースの勢いを盛り上げて報じる最大の機会だと思うだろう。前にも指摘した"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55745490.html"通り、基本的に民主党はクリントン優位で、まだその状況が変わったとまでは言えない。終わってしまえばサンダースも泡沫に過ぎなかったというオチが待っている可能性もある。今のうちに盛り上げて報道しておかないと、後になったら盛り上げようがなかった、なんてことになりかねない。

 本命が足元を固めている民主に対し、共和ではかつて本命と見られていた候補者がついに予備選撤退を表明した"http://www.nytimes.com/2016/02/21/us/politics/jeb-bush.html"。アイオワで6位、ニューハンプシャーでは4位にとどまったジェブ・ブッシュは、サウスカロライナでも3位から大きく離された4位にとどまり、代議員もこれまで4人しか確保できていない。さすがにこれ以上やっても勝ち目はないという判断だろうか。
 FiveThirtyEightでは彼の敗北は1年前から始まっていたと指摘する"http://fivethirtyeight.com/features/jeb-bushs-path-to-defeat-began-a-year-ago/"。同サイトでは議員や知事の支持表明を大統領選予想の重要なツールとして利用しているのだが、クリントンに比べるとブッシュの支持は極めて低水準にとどまっていた。そして最近ではついにルビオに抜かれる状態となっている。党主流派の支持を固められないまま、ワシントンのエスタブリッシュメントを嫌う最近の風潮に飲み込まれてしまったのが、こうした事態を招いた理由なんだろう。
 ただこれは候補者乱立の傾向がある主流派にとってはプラス材料だろう。ブッシュ支持層の票が残された候補に回ることで、非主流派であるトランプやクルーズといった連中に対抗できる候補が誕生する可能性が高まる。そして現時点でその先頭を走っているのがルビオだ。アイオワでもニューハンプシャーでも2位以内に入れなかった彼だが、今回はどうにかクルーズを振り切って2位を確保した。主流派候補ではまだケーシックが残っているものの、彼はブッシュすら下回る支持率だったため、いずれ主流派がルビオに統一される可能性は高い。
 しかしそれも手遅れかもしれない。まずサウスカロライナの共和党代議員は、得票率に比例配分されるのではなく勝者が大半を取っていく仕組みだ。結果、2位に入ったルビオが手に入れた代議員はゼロで、全部をトランプが持っていってしまった。これまでトランプが手に入れた代議員は既に67人。2位のクルーズ(11人)、3位のルビオ(10人)を大きく上回っている。
 クルーズも楽ではない。宗教右派の彼にとって深南部のサウスカロライナは重要な票田となったはずだが、ルビオにすら負ける3位なのは決してよくないだろう。実のところ、クルーズが期待している宗教右派の多い州は「勝者が代議員をすべて取る」比率が低く、それ以外の州ではそういう比率が高い"http://fivethirtyeight.com/features/ted-cruz-has-a-huge-math-problem/"。より多くの代議員を効率よく獲得できる州で弱いクルーズは、ただでさえ不利な立場にある。その彼がサウスカロライナで3位に終わったのはとてもよくない兆候だろう。
 以前にも紹介したこちらの記事"http://fivethirtyeight.com/features/beware-a-gop-calendar-front-loaded-with-states-friendly-to-trump-and-cruz/"には、予備選のある時点でどの程度の代議員を確保していれば指名権が期待できるかをまとめている。サウスカロライナが終わった時点での目標数はルビオ23人、クルーズ63人、そしてトランプが59人。そう、現時点でこの目標に到達しているのは他ならぬトランプなのである。そして次のネヴァダもトランプがかなり有利だと予想されている"http://projects.fivethirtyeight.com/election-2016/primary-forecast/nevada-republican/"。

 予備選の流れに大きな影響を与えるスーパーチューズデーにはまだ日がある。しかし現時点で最もありそうな大統領選の組み合わせがトランプ対クリントンであることは否定できないだろう。クリントンは68歳、トランプは69歳。また無所属での出馬を検討していると言われるブルームバーグは74歳。このままだと世界一の大国指導者はかなりの高齢になりそうだ。
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