食糧と人類

 悪い本ではないがあまり面白くなかったのが、今回読んだ「食糧と人類」"http://www.nikkeibookvideo.com/item-detail/16981/"。人がその数を大幅に増やすため、どうやって食料を手に入れてきたのかを説明した本だ。悪い本ではないというのは、それほど変な話は書かれていないから。食料を増やすためにどのような工夫をしてきたかについて、時系列を追いながらきちんと説明している。でも面白くないというのは、そこに新たな発見がないから。読んでいて既に知っていたか、ある程度把握していた話の出てくる場面があまりに多すぎた。
 食料のために人は野生種に手を加え、栽培植物化を進めて農耕を始めた。しかし農耕を行うと地中にある養分、特に生物にとって必須の窒素とリンが失われていく。これをいかに穴埋めしていくかが大きな課題であり、人はそのために様々な工夫を編み出してきた。
 生産された食料の多くを他の生物(害虫など)に奪われてきたのも困難の1つ。これへの対処法も様々に採用されてきた。他の生物ではなく、例えば天候によって植物が倒れてしまい、収穫ができなくなるといったトラブルも多々あった。そもそも収穫量を増やすための手法も色々と試され、雑種強勢を利用するといった方法がどんどん使われた。
 個々の話はきちんと整理されているし、いろいろなエピソードを織り交ぜて紹介されているので読みにくいこともない。細かいところでは知らなかった話も出てくる。例えば小麦の増産に使われた重要な品種が日本国内で栽培されていたものであること、エネルギー革命以前の農業では投入エネルギーより産出エネルギーの方が多かったが、今では化石燃料使用によって投入エネルギーの方が算出するものの7倍から15倍もかかっていることなどだ。
 でもトータルではそれほど目新しい話はない。新しい発見のためではなく、足元を確認し直すための本という位置づけだろうか。
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