ニューハンプシャー

 米大統領選の予備選は2つ目の州となるニューハンプシャーが終了。予想通りに共和党ではトランプが、民主党ではサンダースが勝った。いずれも圧倒的に有利と見られていた候補者であり、そこだけ見れば意外感は全くなかったと言える。確かに排外主義者&社会主義者の勝利という部分だけ見ればエキセントリックな結果なんだが、結論に飛びつく前にもう少し中身を見てみる必要がある。
 たとえば民主党。FiveThirtyEightの記事"http://fivethirtyeight.com/features/it-gets-harder-from-here-for-bernie-sanders/"に載っている表を見てもらえば分かるが、この後サンダース候補にとっては一方的に不利な州ばかりがしばらく続く。クリントンとそれなりに競り合っているのはウィスコンシンくらいで、あとはオハイオとカリフォルニアが多少はましな程度。早く結果が出たものの、人口規模の小さなアイオワとニューハンプシャーの勝利だけでは安心できないのが実情だ。
 何しろ民主党の選挙人はアイオワ44人、ニューハンプシャー24人なのに対し、たとえば世論調査でクリントンが6割前後を取っているサウスカロライナは53人、ミシガンは148人、フロリダに至っては246人といった具合"https://ballotpedia.org/2016_presidential_nominations:_calendar_and_delegate_rules"。これらの州でクリントンが勝てば、それだけでサンダースはあっという間に引き離されてしまいかねない。ニューハンプシャーの勝利で十分なのではなく、そこから勢いをつけてどこまでクリントンを追いかけられるかが問題なのだ。

 一方の共和党。FiveThirtyEightでの予備選ライブページ"http://fivethirtyeight.com/live-blog/new-hampshire-primary-presidential-election-2016/"の10:36PMに現時点での共和党候補の選出確率が載っているが、それを見た参加者の回答では「トランプ売り」が4人で最多だった。もちろんトランプの選出確率が43%と最も高いことが理由の一因だろうが、見た目ほど彼が強いわけではないと思っている人が多いのも事実。どちらかと言えば浮動層に依存しているトランプにとって、今回の勝利がきちんと追い風にならなければいつ失速してもおかしくないのだろう。
 それでも共和党は民主党より波乱の可能性、つまり非主流派候補が選ばれる可能性が高い。それは2位以下の動きに表れている。アイオワ州が終わった時点では主流派の中でルビオが勢いに乗ったかに見えたが、ニューハンプシャーのルビオはブッシュ、クルーズと3位争いをするにとどまっており、2位には代わりにケーシックが浮上した。つまり相変わらず共和党主流派の票は複数候補に割れている状態で、まだ彼らの動きがまとまる様子は見られない。
 こちら"http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0205.html"によると「アイオワ州、そして、次のニューハンプシャー州の予備選挙のどちらでも上位2位に入れなかった候補者が大統領候補に選ばれたことはありません」とか。つまり現時点で2人しか残っていない民主党はともかく、共和党はトランプ、クルーズ、ケーシックの3人以外はもうダメという可能性もある。ルビオが勢いに乗れなかったことが、色々と波紋を広げている格好だ。
 だからと言ってケーシックが流れに乗るとも思いにくい。次のサウスカロライナ州の世論調査"http://elections.huffingtonpost.com/pollster/2016-south-carolina-presidential-republican-primary"でケーシック支持は6位の1.8%に過ぎず、主流派の中ではルビオやブッシュの後塵を拝している。むしろルビオがもう一度盛り返し、さらにごたごたが強まる可能性すらある。トランプやクルーズにとっての追い風になりかねないのだ。
 実際、これまでトランプ選出の可能性について疑問視することの多かったNate Silverですら、ニューハンプシャー後はトランプが「フロントランナー」であることを認めるに至った"http://fivethirtyeight.com/features/republicans-need-to-treat-donald-trump-as-the-front-runner/"。2つの州で20%以上の支持を集めた過去の共和党候補者を見ると、9人中4人が大統領選候補に選ばれている。トランプが有力候補であることはもう否定できないのだろう。
 それでも最終的にクリントンvsケーシックorルビオ(あるいはその他の主流派候補)で決まれば、静かな大統領選になるだろう。しかし現時点で社会主義者はともかく、排外主義者もしくは宗教右派が本選に出てくる確率は十分ある。それを見てブルームバーグが無所属から立候補したりすればさらに先行きは不透明。アイオワが終わった時点よりも混迷度が少し増した、というのが今回の予備選についての感想だ。
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