中間層

 NFL関連でちょくちょく紹介するFiveThirtyEight"http://fivethirtyeight.com/"だが、主なコンテンツはむしろ政治とかの方が中心だ。特に最近はトランプの暴言と世論調査での人気もあって記事も次々とアップされている。大統領選挙を控えているタイミングでもあり、取り上げ甲斐のあるタイミングってことだろう。
 政治だけでなく経済ネタもある。その中で少し目についたのがこちら"http://fivethirtyeight.com/features/most-americans-arent-middle-class-anymore/"。「多くのアメリカ人はもはや中流ではない」という表題で、元ネタはこちら"http://www.pewsocialtrends.org/2015/12/09/the-american-middle-class-is-losing-ground/"になる。
 1971年には全体の61%を占めていた「中間所得層」(所得中央値の3分の2から2倍までの層)が、2015年には50%を割るところまで減少したという指摘だ。ちなみに日本も似たような状態にあり、国民生活基礎調査で調べてみると2014年のデータで「中間所得層」は50%強と米国と似た水準にある。
 ただ、日本と米国で状況が違うのは所得中央値の水準だ。米国では2000年の7万6819ドルが2014年には(大不況の影響もあって)7万3392ドルへ4.5%減少しているのに対し、日本の場合は2000年の500万円が14年には415万円へと17%も落ち込んでいる(国民生活基礎調査)。中央値が下がれば中間所得層の幅が縮小するため、彼らの占める比率も下がる可能性がある。米国の傾向を調べる上では上記のような方法もいいかもしれないが、日本の場合はもう少し他の方法も考えるべきだろう。
 というわけで、中央値の周辺ではなく絶対額で調べてみた。ソースはこちら"http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001135798"の表番号2だ。1985年から2013年までの年収200万~1000万円の世帯について、全体に占める比率をグラフにしてみると以下のようになる。



 確かに真ん中に当たるこの所得層が占める比率は1986年の78%から最近は70~72%まで下がっている。だがこの数字が大きく下がったのは1985~94年までの時期。つまり中間層が最も大きく落ち込んだのはバブルの最盛期とそれが崩壊した時期であり、それ以降のデフレ期においては別に中間層の比率は減っていない。
 ではデフレ期には何が起きていたのか。実は上流から中流へ、そして中流から下流へのシフトが発生していた。1996年に14.7%を占めていた所得1000万円以上の世帯は2013年には8.3%まで低下。一方、93年に12.3%だった200万円以下の世帯は13年に20.4%へと上昇。上流が減り、下流が増えた傾向がはっきり見える。
 確かに1985年当時と比べて格差が拡大しているのは間違いないだろう。当時、1000万円以上の所得があったのは5.1%。それがピークより減ったとはいえ今でも8.3%あるわけで、高所得者層の割合は増えている。一方200万円以下は85年の17.7%から20.4%になっているのだから、低所得者層の割合も増加。でもそれをもたらしたのはデフレでなくバブルであるように見える。デフレがもたらしたのは全体の所得低下だ。
 だとすると、所得格差を減らすにはどうしたらいいんだろう。インフレ策は所得全体を引き上げる効果を持っていそうだが、格差縮小にはつながるまい。考えられるとしたらバブルの逆の経済現象が格差縮小に効果があることになりそうなんだが、バブルの逆ってどんな現象だ?
 この数字は物価による補正をかけていないため、これだけで結論を出すのはまずい。ただそれを踏まえたとしても、経済政策が何を求めるべきかについて考えさせるところはある。とにかく所得全体を引き上げる方が重要なのか、それとも格差を縮小し中間層を増やすことに力を入れるべきなのか。あるいはどちらか一方を先行させてから他方に取り掛かるべきなのか。そもそも国民はどちらを望んでいるのか。格差問題と一言で言われるが、その中身は一筋縄ではいかない。
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