軌道投入

 すごく久しぶりに宇宙関連の話を。もちろん、あかつき"http://www.jaxa.jp/press/2015/12/20151207_akatsuki_j.html"の件だ。このblogを見返してみると5年前に金星軌道への投入失敗に言及している"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/51480523.html"。あれからもう5年も経過したのだ。
 今回の再投入が成功したかどうかの結論が出るのは9日になるそうだが、エンジン噴射は予定通りに行われ、関係者も「大きな期待が持てる」"http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151207/k10010332471000.html"と言っているようなので、成功の確率はけっこう高そうだ。
 もし成功なら日本の探査機が初めて地球以外の惑星周回軌道に入ったことになる。またこちら"http://jpn.nec.com/ad/cosmos/akatsuki/special/01/index.html"によれば「惑星周回軌道の投入に失敗した探査機が再挑戦できた例は過去になく、もちろん成功した例もない」とのことなので、その意味で世界初になる可能性もある。決して自慢できることではないだろうが、それでも投入できないよりはましだろう。
 今回の再投入についてはこちら"http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/6285.html"が一番わかりやすくまとめている。公転と逆方向に時点している金星を周回するため、かなり面倒な投入コースを通らねばならなかったことがわかる。それだけではなく、金星の影に入る時間もできるだけ少なくしなければならなかった"http://jpn.nec.com/ad/cosmos/akatsuki/special/02/index.html"ようで、この軌道計算をした研究者が各マスコミで大きく取り上げられるのも当然だろう。
 ただしあかつきの目的は金星軌道への投入ではなく、金星の観測にある。投入からどれだけ金星を観測できるかが実は成功度を見るうえで最も重要だ。こちら"http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2015/image/0206_akatsuki/akatsuki.pdf"には今後の観測計画も紹介されているが、カメラによる観測などは当初より分解能や頻度が大幅に少なくなることが予想されている。想定寿命を超えた運用になっていることも含め、これからこそが本番だろう。うまく2年間の観測ができれば御の字か。

 他の宇宙関連の話。あかつきと一緒に打ち上げられたソーラーセイルikarosだが、こちらは驚いたことにまだ地球と連絡を取っているらしい"http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/ikaros/index.shtml"。現在は冬眠モードだが、順当にいけばこの冬に冬眠明けが予想されているほど。トラブルに見舞われたあかつきとは対照的に十分すぎるほどの成果を上げている。
 ikarosについてはこちら"http://www.jaxa.jp/press/2012/03/20120321_sac_ikaros.pdf"で当初目的達成後に行われた後期運用の成果が紹介されている。この後期運用もミッションを完全に達成しており、見事というほかない。面白いのはその運用過程で、当初の想定に比べ膜面剛性がかなり大きいことが分かった点か。こちら"https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/bitstream/a-is/10277/1/SA6000013001.pdf"によると膜のうねりがそうした剛性をもたらしているようで、こうしたことが分かるのも興味深いところだろう。

 そしてはやぶさ2"http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/overview.html"。こちらも最近になって地球スイングバイを達成しており、現状では順調に小惑星「リュウグウ」を目指している。到着は2018年、地球への帰還は2020年末だそうで、はやぶさの7年間"http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/index.shtml"には及ばないものの、結構長い旅路になる。
 はやぶさ2を見ていると、これまでの経験が糧になっている様子がよく分かる。何より特徴的なのがソーラーセイルモード"http://jpn.nec.com/ad/cosmos/hayabusa2/special/02/page02.html"だろう。はやぶさでは必要に迫られて姿勢制御に太陽光圧を利用したが、はやぶさ2では最初からそれを積極的に取り込み、燃料節約だけでなくリアクション・ホイールの使用を減らしてその故障リスクを引き下げているそうだ。ここではikarosの運用経験も生かされているようだ。
 イオンエンジンもはやぶさの時より順調だそうで、4台のうち最も条件のいい1台を予備として温存できるほど"http://mainichi.jp/articles/20150619/mog/00m/040/011000c"。できるだけ高い機能を維持しながら小惑星にたどりつければ、そこからの観測が楽になることが期待できる。

 9日はのぞみが火星軌道への投入を断念してからちょうど12年目となる"http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/nozomi/index.shtml"。あかつきの軌道投入が成功すれば12年越しの悲願達成だ。こうした経緯を見ても、積み重ねの重要さが改めて感じられる。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック