気温の標準偏差

 NFLが始まる前に、別のデータを使った調べものを一つ。今年の夏は暑い日もあれば逆に妙に涼しい日もあり、何ともつかみがたい印象であった。気象庁の各種データを見られるサイト"http://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html"で8月の東京都心部の平均気温を見ると26.7度。最近では2009年以来の低温となっており、平均値ではむしろ涼しい夏だったことになる。
 でも平均はあくまで平均。実際には序盤に7月から続いていた連続猛暑日があり、その時期だけなら例年にない暑さと言ってもおかしくはないだろう。逆に下旬になると最高気温が25度に届かない、つまり夏日にならなかった日がいくつもあり、そこを取り出せば冷夏だったと見てもいい。要するに極端だったのである。
 むしろ今年の夏の特徴はこの「極端だった」部分にあるのではないだろうか。そう思って31日間の平均、最高、最低気温の「標準偏差」を計算してみた。結果はそれぞれ3.33度、4.70度、2.65度。一方昨年、つまり2014年8月の標準偏差はそれぞれ2.97度、3.66度、2.77度となる。最低気温は昨年の方がブレが大きかったが、平均及び最高気温についてなら今年は確かに去年より「極端」だった。
 さらに遡って調べてみる。21世紀になってからの15年間で平均気温の標準偏差が3度以上になったのはたった2回。今年は03年(3.25度)以来の3度超えとなる。最高気温の標準偏差になると4度超えは15年が初めて。3度超えも6回と全体の半分以下にとどまる。どうやら今年の「極端な暑さから奇妙な涼しさ」へのシフトは珍しい部類に入るようだ。
 どの程度珍しいのか。調べてみると平均気温及び最高気温の標準偏差がここまで大きくなったのは1953年以来であることが分かる。つまり62年ぶりの珍しい記録なのだ。1953年8月のデータはこちら"http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=1953&month=8&day=&view="。最高気温35度超の猛暑日が4日あった一方、25度どころか20度割れの日が2日あるなど、これもまた極端な夏だったようだ。結果、平均気温の標準偏差は3.69度、最高気温は5.19度になった。
 そして、1875年の観測開始以来、これ以上に標準偏差が大きかった年はない。140年を超す観測期間の中で、今年の平均気温と最高気温は2番目に標準偏差がでかかったことになる。偏差値的に言うなら平均気温は偏差値76超と京大医あるいは東大文1クラス、最高気温に至っては偏差値82で東大理3に余裕で届くことになってしまう"http://daigakujyuken2.boy.jp/zenkokukokkourituranking1.html"。
 ちなみに最低気温の標準偏差はそれほど高くはない。2014年だけでなく11年、04年、03年などがもっと高い標準偏差を記録しており、今年の突出ぶりが目立っているわけではない。偏差値も70で一橋商や地方国立大医学部クラスだ。もちろん高いのは確かだが、平均気温や最高気温ほど極端ではない。


 気象庁のデータを見ても温暖化が進んでいるのは確かだ。観測を始めた19世紀には8月平均気温が25度前後だったのに、足元では低かった今年ですら26.7度。高かった2010年などは29.6度と厳しい数字になっている。だが上昇傾向にあるのは平均気温だけではない。実は標準偏差も上昇している。上の図は8月最高気温の標準偏差について1875年から2015年までを散布図にしたもの。見てのとおり、トレンドラインは右肩上がりだ。
 なぜ気温のブレが大きくなっているのかまでは私には分からないが、そうした傾向があるのは否定できないだろう。その意味で今年の夏は、珍しいとはいえ大きな気候の流れには沿っていたのかもしれない。これからは暑い日と寒い日が極端になりやすくなる。体調管理のうえで難しい天候が増えてくる。そう考えて臨むべきだろう。



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コメント

No title

あまね
おひさしぶりです。

温暖化が進行すると気温のブレが大きくなる(=気候の変動が激しくなる)というのは一般的な予測として成り立つ話だと思います。
要は『平均気温が1度上がる』というのは『大気が保有する熱エネルギーが1度×全地球大気の質量分だけ増加する』ということですので。で、この増加した分のエネルギーは当然そのままずっと気温+1度としてとどまる訳では無く大気の移動エネルギーに変換されますから、結果として全地球規模で大気の移動規模が大きくなる→気候の変動が大きくなる訳で……。

No title

desaixjp
なるほど、ということは今回のデータは「大気が保有する熱エネルギー」がそれだけ増加したことをうかがわせるデータの1つになり得るわけですね。いやもちろん他の解釈もあるかもしれませんが、全体としては温暖化から予想される出来事と整合性の取れたデータであると。
逆に寒冷化が進むとそれだけ標準偏差も縮まることが予想されることになります。そうしたデータがあれば調べてみたいところですが、現在の地球上では観測は無理でしょうね。
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